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べと病

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

べと病(べとびょう)は卵菌の一種であるツユカビ科[1](Peronosporaceae、べと病菌科[2])に属する植物病原菌(べと病菌)によって生じる植物病害の総称[3]。露菌病ともいう[2]

概要

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べと病(Downy mildew)はうどんこ病Powdery mildew)などとともに糸状菌病に分類される[4]。なお、Mildewは一般的にカビのことも指す[5]

葉の裏に霜状の白色や灰色の湿ったカビを生じることから「べと病」と呼ばれている[6]

比較的冷涼で湿度の高い時期に多い[2]。初期には小さい黄色などの斑点だが、進行すると拡大して葉脈に囲まれた角ばった病斑に変化する[2]。気孔から外表に分生子柄が現れ、その先端に分生子が付き、これは風雨などで飛散して二次伝染の原因となる[2]。植物残渣中の卵胞子も伝染源になる[2]

耕種的防除として、通風採光による多湿化の予防、密播・密植を避ける、被害残渣の除去、適正な施肥などが挙げられる[2]。また、作物の種類に応じて、抵抗性品種の利用や薬剤による防除が行われる[2]

種類

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直接発芽

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分生子が発芽管を伸長させる発芽法を直接発芽といい、被子植物を宿主とするPeronospora属やBremia属、イネ科植物を宿主とするPeronosclerospora属などがこれに属する[2][7]

ホウレンソウベと病
ホウレンソウPeronospora eff usaまたはPeronospora spinaciaePeronospora farinosaが感染して引き起こされる病害[2]
タマネギベと病
タマネギPeronospora destructorが感染して引き起こされる病害[2]。2016年には、タマネギの産地である兵庫県淡路島[8]佐賀県[9]で大きな被害が発生し、価格が高騰した。
ネギベと病
ネギPeronospora destructorが感染して引き起こされる病害[10]。主に葉身に発生し、初期は黄白色の不定形の病斑を生じ、灰白色の薄いかびが生える[10]。進行すると、かびは暗緑色あるいは暗紫色に変化し、さらに症状が進むと葉が黄白色あるいは灰白色となりしおれて枯れる[10]
ダイコンべと病
ダイコンPeronospora parasiticaが感染して引き起こされる病害[11]。根には表皮下に黒褐色斑点を生ずる[11]
キャベツべと病
キャベツPeronospora parasiticaが感染して引き起こされる病害[2]。外葉から下葉の葉脈間に不定形の淡褐色の病斑(黒色壊死斑の場合もある)が出て、葉裏には霜状のかびが生える[12]
ダイズべと病
ダイズPeronospora manshuricaが感染して引き起こされる病害[13]
メボウキ(バジル)べと病
バジルなどにPeronospora belbahriiが感染して引き起こされる病害[2]
レタスべと病
レタスBremia lactucaeが感染して引き起こされる病害[14]

間接発芽

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分生子(遊走子のう)から遊走子を放出する発芽法を間接発芽といい、被子植物を宿主とするPseudoperonospora属やPlasmopara属、イネ科植物を宿主とするSclerospora属やSclerophtora属などがこれに属する[2][7]

キュウリベと病
キュウリPseudoperonospora cubensisが感染して引き起こされる病害[2]。キュウリベと病は葉のみに発生し、一般的に下葉から発生して上位葉へ進展する[2]
メロンベと病
メロンPseudoperonospora cubensisが感染して引き起こされる病害[15]。葉のみに発生し、黄褐色の不整形の斑紋が拡大して多角形の病斑となり、さらに斑紋が融合するようになると葉は枯れる[15]
ブドウべと病
ブドウPlasmopara viticolaが感染して引き起こされる病害[16]
アワしらが病
アワSclerospora graminicolaが感染して引き起こされる病害でべと病の一種[7]
イネ黄化萎縮病
イネSclerophthora macrosporaが感染して引き起こされる病害でべと病の一種[7]

脚注

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  1. ^ 卵菌綱”. 甲南大学. 2024年2月19日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 佐藤 衛「野菜などに発生するべと病の発生生態と防除」『植物防疫』第73巻第3号、日本植物防疫協会、2019年、182-186頁。 
  3. ^ 病原菌感染に対する植物の防御応答を抑制する遺伝子を発見”. 理化学研究所. 2024年2月19日閲覧。
  4. ^ 白石 美樹夫「ブドウにおける病害抵抗性育種 ̶ 素材開発の現状 ̶」『植物防疫』第57巻第2号、日本植物防疫協会、2003年、80-83頁。 
  5. ^ 用語集”. 一般社団法人日本医真菌学会. 2024年2月19日閲覧。
  6. ^ 築尾 嘉章. “花き病害の特徴と診断・防除 2022 タキイ最前線 秋種特集号”. タキイ種苗. 2024年2月19日閲覧。
  7. ^ a b c d 2001.2.園芸新知識”. タキイ種苗. 2024年2月19日閲覧。
  8. ^ 切貫滋巨 (2016年6月17日). “淡路タマネギ危機一髪 「べと病」まん延していた”. 神戸新聞. 2018年4月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月20日閲覧。
  9. ^ タマネギ高騰、佐賀で「べと病」 北海道も台風続き、1個100円も”. 西日本新聞 (2016年9月5日). 2018年4月20日閲覧。
  10. ^ a b c ネギ べと病”. 茨城県農林水産部農業総合センター. 2024年2月19日閲覧。
  11. ^ a b ダイコン べと病(根部症状)”. 石川県農林水産部農林総合研究センター. 2024年2月19日閲覧。
  12. ^ キャベツべと病情報第1号”. 愛知県農業総合試験場. 2024年2月19日閲覧。
  13. ^ ダイズべと病”. 埼玉県病害虫防除所. 2024年2月19日閲覧。
  14. ^ レタスべと病の発生と防除対策”. 兵庫県立農林水産技術総合センター淡路農業技術センター. 2024年2月19日閲覧。
  15. ^ a b メロン べと病”. 高知県農業振興部(こうち農業ネット担当). 2024年2月19日閲覧。
  16. ^ ブドウべと病対策について”. 佐賀県果樹試験場. 2024年2月19日閲覧。