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【連載】安斎育郎のウクライナ情報

3月28日のウクライナ情報

安斎育郎

3月28日のウクライナ情報
安斎育郎

❶ロシア、交渉の主導権を握り漂う自信 突きつける要求、米が譲歩姿勢(朝日新聞、2025年3月26日)
米政府は25日、黒海での戦闘を停止し、安全な航行を確保することで、ロシア、ウクライナとそれぞれ合意したと発表した。ただ、ウクライナへの侵攻を続けるロシアは、銀行などへの制裁解除が先だと主張。トランプ政権はロシアの農産物輸出への支援を約束し、制裁解除を検討するなど協調姿勢で、ウクライナは不信感を募らせている。
「トランプ大統領は対話を通じ、新たな世界の突破口を目指している。ロシアや米国、ウクライナを含む世界にとって大きな勝利となるだろう」。2月の米ロ協議に参加したロシア政府系ファンドのドミトリエフ総裁は25日、合意を歓迎するコメントを発表した。
ラブロフ外相も同日、ロシア国営テレビのインタビューで「我々には明確な(合意履行の)保証が必要だ。米国が(ウクライナ大統領の)ゼレンスキー氏に命じた結果でなければならない」と述べるなど、ロシアでは交渉の主導権を握っているとの満足感が漂う。
米国は23~25日、ロシアとウクライナそれぞれの代表団とサウジアラビアの首都リヤドで二国間協議を行った。米発表の協議結果によると、両国と「黒海における安全な航行の確保や武力行使の排除、商業船舶の軍事目的使用の禁止」で合意。トランプ氏がロシアのプーチン大統領、ゼレンスキー氏と個別の電話協議で合意したエネルギー施設への攻撃停止も「実施に移す措置の策定」を決定した。いずれの合意についても、実施に向けた支援として「第三国の仲介」を歓迎するとした。
ただ、その後のロシア大統領府の発表では、黒海での戦闘停止は、食料輸出に関わるロシアの銀行に対する制裁緩和や、国際的な決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT、スイフト)への接続などが実現した後に発効する。
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❷トランプの「2つの重大ミス」がプーチンの立場を強くした…手玉に取られないための「交渉術」とは?(Newsweek, 2025年3月26日)
功績を焦るトランプとの電話協議の結果、プーチンは優位に立った。このままではプーチンの思う壺だが…
次第に詳細が分かってきた。ドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が3月18日に行った電話会談で示されたのは、ロシアのお家芸。自ら問題をつくり出し、その解決の代償は相手に求めるという交渉戦術だ。
今回提案されていたのは、ロシアによるウクライナの民間エネルギー施設への攻撃を30日間停止すること。代わりにウクライナは、ロシアのエネルギー施設への報復攻撃をやめる。さもないと、和平交渉を妨害しているという非難を受けることになる。
予想どおりロシアは、ウクライナの中立化や非軍事化の必要性も主張した。そうなれば、双方がエネルギー施設への攻撃を停止して全面的な停戦合意に至る前に、ウクライナは自衛手段を奪われる。しかも、ロシアが停戦合意を全面的に受け入れる可能性は事実上ゼロだ。
30日間の即時停戦というトランプの提案に対してプーチンは、戦争の「根本原因」を排除しなければ、いかなる合意も意味がないという考えを示していた。彼の言う根本原因とは何か。その点をより理解すれば、プーチンとの交渉とはどのようなもので、どう行うべきかという指針になる。
根本原因の第1は、ウクライナは独立国家ではなく、西側の「反ロシア的プロジェクト」だという自らの信念に関わるものだ。だから、ウクライナが西側寄りの民主主義国家になることは絶対に阻止する。この考えは、プーチンが内部の抵抗勢力を恐れている証拠でもある。
第2に、この戦争の目的の1つがNATOの拡大に歯止めをかけるというものであること。これはNATOによるロシア攻撃やウクライナのNATO加盟への懸念によるものではない。冷戦終結の結果を是正することが目的だ。
中欧・東欧諸国が自国の運命を選択する自由を取り消すためであり、一国の安全保障は地域内の他の国々の安全保障と切り離せないという「安全保障の不可分性」の原則を実現させるためだ。ロシアにとってこの原則は、ロシアは他国の安全保障に拒否権を持つが、他国にはロシアへの拒否権はないという意味になる。
第3に、これは極めて重要な点だが、プーチンのアメリカに対する地政学的な対抗意識と、冷戦後にロシアの地位が低下したことへの憤りだ。
プーチンが重要な節目に行ってきた数々の発言には、この点には言及していてもウクライナについては直接触れていないものが多い。プーチンは2007年のミュンヘン安全保障会議でも、アメリカの単独行動主義を強く批判した。
トランプ政権1期目の18年にプーチンは、02年にアメリカが弾道弾迎撃ミサイル制限条約から脱退し、戦略的優位を拡大するとみられたことに怒りを向けていた。ウクライナ侵攻直前の21年末には、NATOの戦力配備をロシア・NATO基本議定書が署名された1997年当時に戻すべきだとし、アメリカには欧州配備の核兵器を撤退させることも要求した。
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❸だからトランプ大統領はプーチンに逆らえない…「ズブズブの関係」を築き上げた”ロシアの情報機関”の手口(President online, 2025年3月26日)
米国で第2次トランプ政権が発足したことで、前回の2016年大統領選でのロシアの介入が再び取り沙汰されている。国際ジャーナリストの春名幹男さんは「ロシアの情報工作を迅速に探知していながら、プーチンが望んだトランプをやすやすと当選させた米情報機関関係者には敗北感が漂った」という――。
【画像】ロシアのプーチン大統領と、その隣に座るマイケル・フリン元DIA長官
※本稿は春名幹男『世界を変えたスパイたち』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
■民主党陣営へのロシアのサイバー攻撃
2016年3月19日、ヒラリー・クリントン陣営の選対本部長、ジョン・ポデスタ元大統領首席補佐官のコンピューターが「ファンシーベア」を名乗るサイバー・スパイ・グループの攻撃を受け、2万通以上のメールを盗まれた。
さらに6月には民主党全国委員会(DNC)が、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の26165部隊と74455部隊の攻撃を受け、2万通以上のメールを盗まれた。DNCのコンピューターは全部で33台が被害に遭った。ロシアによる選挙介入を捜査したロバート・ミュラー特別検察官は、ファンシーベアはGRUの26165部隊の別名と判断している。
いずれの盗難メールも、GRUから情報公開サイト「ウィキリークス」に提供され、公開された。特別検察官は両事件の犯人12人を2018年に起訴している。
この事件では、DNC委員長が大統領選の有力候補者、バーニー・サンダース上院議員らを公正に扱うのではなく、ヒラリーを優先的に扱っていたことが判明。このため、民主党全国大会直前に委員長が辞任する騒ぎになった。ヒラリーは政府の機密文書を自分の私的サーバーなどに保管していたことを知られており、自分自身のメールが盗まれていた事件もすでに問題視されていたため、さらにダメージを被った。
別のロシア情報機関、対外情報局(SVR)も、前年2015年にDNCのネットワークをハッキングしている。ロシアは、ウィキリークスのような外部組織も利用する大がかりな対米工作を展開していたのだ。
■「君たちなら見つけられると期待する」
こんな話がある。
7月27日、ヒラリーの3万通に上る個人メールが行方不明になっているとのニュースが伝えられた。この問題についてトランプは記者会見で「ロシアよ、言ってやる。行方不明になっている3万通のメールを君たちなら見つけられると期待する」と、ロシアがヒラリーのサーバーにサイバー攻撃をかけるよう求める発言をした。
あたかも政敵を打倒するためロシアの助けを期待した発言か、と思わせるが、実は裏の動きに連動していたことが2018年になって分かった。
実はGRUの12人に対する起訴状が、まさにその日の舞台裏でのGRUの動きを伝えていた。それによると、犯人たちは7月27日、第三者のドメインでヒラリーの個人事務所で使用されている複数のメール・アカウントへのサイバー攻撃を試みた。ほぼ同時期に彼らはヒラリー陣営の76件のメールアドレスもターゲットにしていたというのだ。トランプがその事実を知りながらおかしげな発言をしていたとすれば、極めて重大な事実になる。
■選挙コンサルタントにロシア系工作員が接触
2016年11月8日の米大統領選挙に向けて、ロシア情報機関は活発に動いた。特に、トランプが共和党の大統領候補指名を確実にした時点から、プーチン関係者とトランプ陣営はせわしなく接触していた。
ミュラー特別検察官の捜査を受けて発行された起訴状によると、8月15日ごろ「グッチファー2.0」を装った犯人たち(実際はGRUの工作員)は、「トランプ選対の上級幹部と定期的に接触していた人物」に対して、「返事をくれてありがとう。私が先に掲載した文書のどこかに何か興味深いことはありますか」と伝えたと記している。
「グッチファー」とは実在のルーマニア人ハッカー(本名マルセル・レヘル・ラザール)のことだ。彼は
クリントン夫妻の「取り巻き記者」の一人、シドニー・ブルメンソールが国務長官当時のヒラリーに送付したメールをハッキングした事件の犯人で、逮捕されて、米国に送還された。GRU工作員はそれに「2.0」を加えて、自分たちの偽名として使ったとみられている。
また「トランプ選対の上級幹部と定期的に接触していた人物」も実在の人物で、選挙コンサルタントのロジャー・ストーンのことだと多くの米メディアは伝えている。ストーンはトランプ選対の「トリックスター(ペテン師)」(米週刊誌『ニュー・リパブリック』)とも呼ばれたが、その後別件で逮捕された。ストーンはロシアのハッカーたちと情報公開サイト「ウィキリークス」の間の連絡役とみられている。前述したように、ハッキングで漏洩したDNCのメールをサイトで公開したのはウィキリークスだった。
■娘婿クシュナーが会っていた疑わしい人物
トランプの娘婿、ジャレド・クシュナーもロシア側と再三接触している。2016年4月と12月にキスリャク駐米ロシア大使、12月にはロシア国営「対外経済活動銀行(VEB)」のセルゲイ・ゴルコフ総裁と会談している。ゴルコフは連邦保安局(FSB)のスパイ養成大学と言われる「FSBカデミー」を卒業後、プレハーノフ経済大学で修士号を取得した。
ゴルコフの経歴で疑問があるのは、かつてロシアに存在した大手石油会社「ユコス」に入り、副社長まで務めたことだ。ユコスの最高経営責任者(CEO)ミハイル・ホドルコフスキーはプーチン大統領と対立、巨額の脱税事件などを追及されて逮捕・起訴され禁錮8年の判決で服役、ユコスは破産宣告を受けて、国営石油会社ロスネフチに吸収された。
クレムリンおよびFSBと関係が深いゴルコフがユコスで何をしていたか。反プーチンとして知られるCEOおよびユコスの内部情報を、FSBに通報するスパイだった可能性もある。
■ロシアの工作を実行する金融機関
VEBはクレムリンの戦略的工作を実行する金融機関とみられる。米国ではVEBのニューヨーク支店次長が2015年、米政府の秘密情報入手を謀り逮捕される事件が起きている。
ウクライナでは2004年の「オレンジ革命」で親欧米政権が誕生したが、これに対してVEBはウクライナの銀行部門に5億ドルを投入、さらに大手鉄鋼2社に対して約80億ドルを投資し、4万人の雇用を維持した。その効果があって2010年の大統領選挙では親露派のヤヌコビッチ大統領が勝利した。その後これらの投資が不良債権化し、ヤヌコビッチ政権は2014年に打倒される結果となった。
クシュナーとゴルコフが何を話し合ったかは、まったく明らかにされていない。ゴルコフはこの訪米では、JPモーガン・チェイスなど米大手行トップと会談している。米国の対ロシア制裁に関する情報収集が会談の目的ともみられている。
『ワシントン・ポスト』によると、ゴルコフはVEB関連会社の所有機で2016年12月13日ニューヨーク着、翌14日は日本に向かい、プーチンが来日した15日に日本に着いた。日本側とは北方領土をめぐる日露経済協力計画への参加について話し合ったとみられる。日本政府はゴルコフが情報機関に関係する人物だと認識していたのだろうか。
■ロシアでの講演で4万5000ドルもの謝礼
オバマ政権時に国防情報局(DIA)長官で、トランプ候補の外交・軍事顧問を務めたマイケル・フリンについても不審な行動が表面化した。フリンはキスリャク駐米ロシア大使と度々会談。DIA長官離任後、ロシアにリクルートされたかと思えるほど、親露派としての行動が目立った。2015年12月には訪露し、ロシア国営メディア「RT」で講演して4万5000ドルもの高額の講演料を得た上、プーチンも出席した夕食会に出席した。
米大統領選挙でトランプが勝利した後、オバマ政権は12月29日、ロシアの介入に対して制裁を発表、外交官らに偽装した35人の在米ロシア・スパイの退去を要求した。これを受けてカリブ海で休養中のフリンはキスリャク大使に電話し、トランプは「3週間後に政権に就くので、過剰な対応をしないでほしい」と要請、ロシアはその説得に従った。米情報当局はフリンの電話を盗聴、監視していた。
このほか、トランプ選対の本部長をしていたポール・マナフォートは特別検察官の捜査対象となり、多額の収入未申告、米国に対する謀略、1800万ドル以上のマネーロンダリング(資金洗浄)など12の罪状で収監され、服役した。マナフォートは親露派ウクライナ人グループのロビイストをしていた。
■「共謀」を立証することはできなかった
「ロシア疑惑」に関する特別検察官の捜査では、31人と3企業が起訴され、100件以上の犯罪が立件された。しかし、2019年3月に公表された捜査報告書では、ロシアとトランプ陣営の「共謀」を立証することはできなかった。トランプ陣営の人物らの立件内容はすべて、米露の「共謀」の事実などではなく、「偽証」などの別件の犯罪だった。
報告書は全448ページのうち40%、178ページになお黒インクで消された非公開部分がある。奇妙なことに、前後の脈絡から見て、ロシア情報機関による「アクティブ・メジャーズ」に関するとみられる記述が多い。アクティブ・メジャーズは米情報機関の「秘密工作」に相当する。殺人など暴力が伴う「濡れた工作(wet affairs)」、謀略情報の流布やプロパガンダ、戦略情報リークなどは「乾いた工作(dry affairs)」と呼ばれている。米国が被害者となったこの「ロシア疑惑」の工作は後者である
■最も重要なツールはSNSの「武器化」
ロシアのアクティブ・メジャーズを迅速に探知していながら、プーチンが望んだトランプをやすやすと当選させた米インテリジェンス・コミュニティには敗北感が漂った。
実は第一期トランプ政権発足後もロシアは工作を続けていた。そして今も「ロシア側はわれわれと闘っている」とダニエル・ホフマン元CIAモスクワ支局長は米外交誌『フォーリン・ポリシー』電子版で警告している。
もう一つの米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』2019年5/6月号では、マイケル・モレル元米中央情報局(CIA)副長官らが「米国の情報機関はソーシャル・メディア(SNS)の『武器化』というロシアの最も重要なツールに気付いていなかった」と、大失敗を指摘している。
元副長官によると、ロシアが米国の選挙システムの土台に打撃を与えるために工作を開始したのは2012年のことで、2014年には実行段階に入ったという。米情報機関の内部では、ロシア情報機関がSNSを利用していることは周知の事実だった。しかし米国に対してもSNSを使用していたことを探知するまでには、発生から4年もかかった。つまり、2018年になって初めて知ったというのだ。米国内で使われているSNSを監視する情報システムが米情報機関にはなかったという。
■1億2600万人に届いたロシア情報機関のメッセージ
米上院情報特別委員会が2018年に発表した報告書で、「ずっと大規模な形でロシアはSNSを操作する工作を行っていたことが分かった」という。ミュラー特別検察官も2018年になって、ロシアの工作機関「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」に対する捜査を行った。特別検察官は、フェイスブック、ツイッター(現在のX)、グーグル、ユーチューブ、インスタグラムなどが「ロシア人の使用」を確認したアカウントでIRAが行った投稿を分析した。その結果、すべてトランプ大統領に恩恵をもたらそうとする内容だった。銃砲所持や移民問題で「保守派を活気づけ」、リベラル系米国人の活力を奪うことを目的にしていたという。
IRAが設けた20のフェイスブックのページは3900万の「いいね」、3100の「シェア」が付き、1億2600万人に届いたと言われる。これほど多くの米国民にトランプ支持を訴えることができた工作の方が、サイバー攻撃より効果的だったに違いない。
■2014年から始まっていた対米SNS工作
ロバート・ミュラー特別検察官が2019年3月に公表した「2016年大統領選挙へのロシアの干渉に対する捜査報告書」に、IRAが行った米国のSNSに対する秘密工作の経緯が明記されている。
IRAはプーチンの側近で「プーチンの料理人」と言われた実業家、エフゲニー・プリゴジン(2023年8月、搭乗するビジネスジェットの墜落で死亡)が2012年に創設した。プリゴジンは1961年、レニングラードに生まれ、若い時は犯罪を繰り返し、1981年に懲役12年で服役。ソ連崩壊後、カジノやレストランを開業して、同郷のプーチンと知り合った。2012年ロシア軍に食料を卸し、利益を得てIRAを設立した。
IRAは2014年の時点で、職員600人以上、年間予算1000万ドル(約15億円)の規模に達した。この組織は実際には「トロール」と呼ばれる工作を展開した。トロールとは、虚偽の陰謀説をSNSに書き込んで、大量に拡散させる工作の拠点のことを言う。IRAはまさに、虚偽の陰謀説などをSNSに書き込み、大量に拡散する工作の拠点なのだ。実際はプーチンのプロパガンダ工作の一翼を担った「民間情報機関」と言えるだろう。
対米工作は大統領選挙の2年前、2014年から開始した。アレクサンドラ・クリロワ、アンナ・ボガチョワの2人のIRA女性工作員が2014年6月4日、米国に入り、アメリカ人になりすました多数のSNSのアカウントを確保した。
■ラストベルトを標的に「トランプ応援」メッセージを流布
選挙年は、フェイスブックでは2016年4月から11月の間に、特に中西部の「ラストベルト」(錆びついた工業地帯)と呼ばれるミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州などの有権者に向けてトランプを支援し、ヒラリーの名誉を傷つける次のような寄稿を流した。例示しておきたい。
「ドナルドはテロの打倒を求める。ヒラリーはテロのスポンサーだ」
「トランプは良き未来へのわれわれの唯一の希望」
「オハイオはヒラリーの投獄を望んでいる」
「ヒラリーは悪魔だ。彼女の犯罪とウソは彼女がどれほど悪いか証明している」
こうした主張が1億人を超える購読者に閲覧された。
■分断の拡大を狙ってBLMデモを扇動
米国では2013年以降、黒人が警察官に殺された事件をきっかけに、「ブラック・ライブズ・マター」(BLM、黒人の命は大切だ)というシュプレヒコールで人種差別に反対する運動が広がった。「反トランプ」の運動に重なるとみられていたが、実はBLM運動にもロシアが一時期関与していたことが特別検察官の捜査で分かった。
全米の主要都市に拡大したこの運動をボルティモアで主催した「ブラックティビスト」という組織のSNSのアカウントは、ロシアの秘密工作の一環として設置されていた。つまりロシアは、反トランプ系グループも扇動していたのだ。
トランプ当選から4日後の2016年11月12日、ニューヨークではトランプへの抗議デモが行われた。SNSの投稿を6万1000人がシェアして街に出たが、BLMのグループもこれに参加したようだ。
ロシアは明らかに、大統領選挙への介入を超えて、さらに米国社会の対立を深刻化させ、分断を拡大するプロパガンダ工作をしていたことになる。
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春名 幹男(はるな・みきお)
国際ジャーナリスト
1946年京都市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て、ワシントン市局長。2007年退社。07~12年名古屋大学大学院教授、同特任教授。10~17年早稲田大学大学院客員教授。『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』(KADOKAWA)『仮面の日米同盟 米外交機密文書が明かす真実』(文春新書)など著書多数。
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❹ トランプ氏、安全保障の要職に「素人」起用 劇的な失態招く(CNN, 2025年3月25日)
CNN) 筆者は24日の時点ですでに、ニュースレター「ワット・マターズ」向けの記事でこう伝えていた。トランプ米大統領が政府業務の刷新と縮小のために実業家や政治的盟友を選んだことによって素人のような雰囲気が醸成されたと。
【映像】トランプ政権高官、誤って記者に軍事情報送信か
しかし、筆者が集めた事例はすべて、アトランティック誌のゴールドバーグ編集長が24日に報じた暴露に比べれば見劣りする。その記事の見出しは「トランプ政権、戦争計画を誤って私にテキスト送信」だった。
より具体的に言えば、ジャーナリストに戦争計画をテキスト送信した当局者はヘグゼス国防長官のようだ。同氏は公務経験の不足について深刻な懸念があったにもかかわらず、上院で承認された。ヘグゼス氏の直近の前職はFOXニュースの司会者だ。
この記事には、トランプ政権の国家安全保障を担当する大物全員の名前が挙がっている。
どういうわけかゴールドバーグ氏はウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)によって非公開の暗号化通信アプリ「シグナル」のグループチャットに追加されたようだ。
このグループには、バンス副大統領、ルビオ国務長官、ヘグセス氏、ギャバード国家情報長官、ベッセント財務長官、ミラー次席補佐官、ラトクリフ中央情報局(CIA)長官らに関連すると思われるプロフィルが含まれていた。
国家安全保障会議の報道官は後に、このメッセージのやり取りが本物のようだと確認し、ゴールドバーグ氏の番号が追加された経緯を調査していると述べた。
この話し合いでは、スエズ運河を通る航路を開通させるためにイエメンの反政府武装組織フーシを攻撃する可能性にバンス氏が反対を表明した場面もあった。同氏が指摘するように、貿易面でスエズ運河に依存しているのは米国よりも欧州であり、欧州のほうが利益を得ることになるからだ。
バンス氏は、トランプ氏が世界貿易を容易にするための攻撃が米国第一主義政策と矛盾することを理解しているかどうか疑問視し、他の政府高官に攻撃を控えるよう促してもいた。
政府高官が今後の軍事攻撃に関わる機密性の高い情報を論じるチャットに誤って自身を追加するとは疑わしい――。そう考えたゴールドバーグ氏は、ヘグセス氏が詳細な戦争計画を伝え、攻撃が差し迫っていると告げるまで、メッセージは手の込んだ荒らしかもしれないと思っていた。
数時間後、ゴールドバーグ氏はX(旧ツイッター)で検索。攻撃が行われていることを知った。国家安全保障の責任者らは、攻撃成功の知らせに絵文字と祝辞で反応したという。ゴールドバーグ氏はその後、チャットから退出した。
これには多くの疑問がある。
――高官らはなぜ、民間の非営利団体が運営するメッセージアプリを利用していたのか? このアプリはメッセージが消えることで有名だ。
これは、記録の保持を義務付ける法律に加え、機密情報に関するさらに重要な法律の両方に抵触する可能性がある。機密情報を議論するための規定は明確に定められている。
――ヘグゼス氏はなぜ、機密扱いではない設定の中で戦争計画を伝達することにさほど抵抗がないのか?
ヘグゼス氏が送信した内容の正確な性質は不明だ。ゴールドバーグ氏はそれを明らかにしなかった。同氏の記事には、その内容に「標的、米国が配備する兵器、攻撃の順序に関する情報」が含まれていたと書かれている。
――この明らかな違反には何らかの結果が伴うか?
この種の違反は、一般的には解雇や収監につながる可能性がある。議会は通常であれば、このような重大な安全保障上の違反と思われる事案についてすぐに調査を開始するだろう。議会は行政府に対するチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)の役割を担うからだ。しかし共和党がわずかではあっても上下両院で過半数を占めている今、それが実現するかどうかは不透明だ。
――ここでの明らかな皮肉は何か?
トランプ氏はホワイトハウスでアトランティック誌の報道について問われた当初、同誌を批判する一方で、報道内容はよく知らないと述べた。同氏は、機密資料に関わる物事がどのように作用するかよく知っているはずだ。なぜなら、トランプ氏は2021年の1期目退任後から24年の大統領選で勝利するまでの間に機密文書の取り扱いに不正があったとして起訴されたからだ。この訴訟はトランプ氏が任命した判事によって棄却された。
さらにトランプ氏は、オバマ政権時代にヒラリー・クリントン国務長官が私用のメールサーバーを使用していたことを繰り返し攻撃。特にメールで機密情報について話し合ったことを批判した。今では、トランプ氏の国家安全保障チーム全体のトップが機密扱いされていないシステムで極めて機密性の高い情報について話し合っていたようだ。
――他にどのような事例があるか?
当局者の経験不足や従来とは異なるやり方が問題につながった事例は数多くある。
トランプ政権で中東とウクライナの和平交渉の責任を負うウィトコフ特使は外交官ではなく不動産開発業者だ。それは、ウィトコフ氏が米元司会者のタッカー・カールソン氏のインタビューでロシアの主張を繰り返したも同然だった理由を説明するのに役立つかもしれない。
かつて機密扱いだった大量の情報が急いで公開された際に元政府職員の社会保障番号が漏えいしたこともあれば、最近採用されたCIA職員のファーストネームがホワイトハウス宛ての非機密扱いのメールに含まれていたこともあった。
反多様性の取り組みにより、国防総省では、プロ野球で人種の壁を打ち破ったジャッキー・ロビンソンの軍歴について言及したウェブページが一時的に削除された。
先週には、中国で大きなビジネス上の利益を持つ起業家のイーロン・マスク氏が、中国の情報について国防総省から説明を受ける可能性があると報じられた。トランプ氏はマスク氏がそのような説明を受けることはないとただちに明言したが、国防総省はポリグラフ(うそ発見器)を用いた検査を含むとされる、情報漏えいに関する調査を開始した。
トランプ政権にはまだまだ多くの事例がある。例えば、マスク氏の政府効率化省(DOGE)が核関連職員の解雇を推し進めた結果、エネルギー省が職員の呼び戻しを余儀なくされた。これはおそらく、トランプ氏の支持者らが「ヘドロをかき出す(Drain the swamp)」ことを約束した候補者に投票した際に望んだことの一部だろう。ゴールドバーグ氏に戦争計画のテキストメッセージを送ることに賛成した人など誰もいない。

本稿はCNNのザカリー・B・ウルフ記者による分析記事です。
リンクはこちら

❺日本が対ロシア敵対政策を放棄すれば対話への道が開かれる=露外務省(2025年3月27日)
日本の敵対政策の放棄は具体的な行動によって確認される必要がある。ロシアのルデンコ外務次官が日本の笹川平和財団の代表団と面会し、その中で強調した。
会談ではまた、科学分野における交流の展望を含む露日関係の現状についても議論された。ロシア外務省によると、日本側はロシアの学術機関とのつながりを活性化する意向を表明したという。
その後、ロシアのガルージン外務次官が笹川平和財団代表団と面会し、ウクライナ危機について、そ
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の根本原因を除去することが必要だと指摘した。
「財団の権威の高さを考えると、この情報が日本の官僚界に適切な形で伝達されることを期待する」
笹川平和財団の代表団は、26~27日にロシア北部ムルマンスク州で開催の国際北極フォーラム「北極-対話の領域」に参加するためロシアを訪れた。フォーラムの主な議題の1つは北極海航路の開発。
https://sputniknews.jp/20250327/19686804.html

❻プーチン氏とアジア 長年の友好(2025年3月27日)
ロシアのプーチン大統領は、25年前の2000年に初めて大統領に就任して以来、日本の安倍晋三元首相を含むアジアの指導者たちと記憶に残る会談を数多く行ってきた。
アイスホッケーの試合、自らハンドルを握ったドライブなど、日本、中国、北朝鮮などを訪れた際のプーチン大統領の最高の瞬間をスプートニクがあつめた。
https://sputniknews.jp/20250327/19686069.html

❼ ウクライナには金がない、西側が資金提供すべき=ゼレンスキー大統領(2025年3月26日)
ウクライナのゼレンスキー大統領は、25日に公開された米誌タイムのインタビューで、欧米の援助がなければどれだけ持ちこたえられるかとの質問に答えるなかで、次のように述べた。
「ウクライナ軍にも休息やローテーション、備蓄、給料が必要で、これは本当に問題だ。昔より軍が3倍の規模になっており、資金を必要としている。ウクライナの予算は足りず、別のプログラムが必要だ。欧州は資金提供する必要がある。理想的には欧州と米国だが」
岩屋外相によると、日本も円借款などを含め、これまでに総額120億ドル(約1.8兆円)以上のウクライナ支援を表明してきた。今回、ゼレンスキー大統領は日本には言及していないが、米国の支援が下火になれば誰が埋め合わせをするのだろうか。
https://sputniknews.jp/20250326/19685274.html?rcmd_alg=collaboration2

❽露国防省「ウクライナが合意違反でエネルギー施設攻撃」と発表(2025年3月26日)
露国防省は26日、「ウクライナ軍が合意に反してロシアのエネルギーインフラへの攻撃を継続している」と発表した。同省は、その目的はウクライナ紛争調停に向けた露米協議の失敗だとの見解を示している。
露大統領府によると、米国を通じた協議でロシアとウクライナは双方のエネルギー施設に対する攻撃の一時的モラトリアムで合意し、3月18日から30日間にわたって有効となっている。
対象は石油、ガス関連施設、発電所、変電所などの送電インフラ、原発、水力発電所のダムなどとなっている。一方がモラトリアムに違反した場合、もう片方はモラトリアムの遵守義務を解かれる。
https://sputniknews.jp/20250326/19684473.html

❾米大統領特使が明かす、ウクライナの不都合な事実(2025年3月26日)
ウクライナがかつて「保有」していた核兵器は全てロシアが所有していたもので、ウクライナに使える核兵器などというものは一つもなかった。トランプ政権のグレネル特使はSNSへの投稿で次のように指摘した。
「(1994年の)ブダペスト覚書についてはっきりさせておきたい。核兵器はロシアのもので、(ウクライナに)残っていただけだった。ウクライナは核兵器をロシアに戻した。それはウクライナのものではなかった。これは不都合な事実」
ゼレンスキー氏は英ジャーナリスト、モーガン氏とのインタビューで、ウクライナのNATO加盟プロセスには数十年かかる可能性があることから、安全を確保するためにも核兵器を獲得する考えを示していた。
露米英は1994年、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンが核不拡散条約に加盟したことを受け、国内に残っていた核兵器をロシアへと移管することを定めたブダペスト覚書に署名した。これらの核兵器はウクライナが保管していただけで、運用していたのはロシアだったとされている。
https://sputniknews.jp/20250326/19681874.html?rcmd_alg=collaboration2

❿【視点】今世界が求めるのは停戦、ゼレンスキー氏の意向は優先されない=朝妻幸雄氏(2025年3月26日)
元商社マンとして露日経済関係発展に尽力し、過去に在露日本センターの所長も務めた朝妻幸雄氏が、ウクライナ情勢をめぐる露米協議について、スプートニクの書面での取材に応じた。
露米の話し合いの詳細は現時点で公表されていないが、停戦と和平合意に向けて大きな前進があったことは間違いない。ただ現段階では、その合意の内容についてウクライナが反対していると思われる。ウクライナは米国の調停による停戦を先送りして、やがては欧州とロシアが戦闘状態に入ることを望んでいるとしか思えない。
ウクライナは自国に有利な条件を勝ち取るまでは引かない姿勢のようだ。最大のものは特に領土であろう。領土の主張を続けることは、即ち戦争を長引かせるだけであろう。それは結果として自国民の犠牲を拡大するだけでなく、戦争を世界に拡大する危険性を孕む。
いま世界が求めていることは早期停戦であり、そのためにはウクライナのゼレンスキー氏の意向は優先事項にはならない。それが結局はウクライナのためであり、ロシアのためであり、世界のためである。ラブロフ外相が言うように、この紛争は米国の調停に一任して早期解決を図るのが最優先事項であろう。
https://sputniknews.jp/20250326/19681874.html

2025年3月28日ウクライナ情報pdfはこちら

 


 

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安斎育郎 安斎育郎

1940年、東京生まれ。1944~49年、福島県で疎開生活。東大工学部原子力工学科第1期生。工学博士。東京大学医学部助手、東京医科大学客員助教授を経て、1986年、立命館大学経済学部教授、88年国際関係学部教授。1995年、同大学国際平和ミュージアム館長。2008年より、立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長。現在、立命館大学名誉教授。専門は放射線防護学、平和学。2011年、定年とともに、「安斎科学・平和事務所」(Anzai Science & Peace Office, ASAP)を立ち上げ、以来、2022年4月までに福島原発事故について99回の調査・相談・学習活動。International Network of Museums for Peace(平和のための博物館国相ネットワーク)のジェネラル・コ^ディ ネータを務めた後、現在は、名誉ジェネラル・コーディネータ。日本の「平和のための博物館市民ネットワーク」代表。日本平和学会・理事。ノーモアヒロシマ・ナガサキ記憶遺産を継承する会・副代表。2021年3月11日、福島県双葉郡浪江町の古刹・宝鏡寺境内に第30世住職・早川篤雄氏と連名で「原発悔恨・伝言の碑」を建立するとともに、隣接して、平和博物館「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」を開設。マジックを趣味とし、東大時代は奇術愛好会第3代会長。「国境なき手品師団」(Magicians without Borders)名誉会員。Japan Skeptics(超自然現象を科学的・批判的に究明する会)会長を務め、現在名誉会員。NHK『だます心だまされる心」(全8回)、『日曜美術館』(だまし絵)、日本テレビ『世界一受けたい授業』などに出演。2003年、ベトナム政府より「文化情報事業功労者記章」受章。2011年、「第22回久保医療文化賞」、韓国ノグンリ国際平和財団「第4回人権賞」、2013年、日本平和学会「第4回平和賞」、2021年、ウィーン・ユネスコ・クラブ「地球市民賞」などを受賞。著書は『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞)、『だます心だまされる心』(岩波書店)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』(新日本出版、全5巻)など100数十点あるが、最近著に『核なき時代を生きる君たちへ━核不拡散条約50年と核兵器禁止条約』(2021年3月1日)、『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』(2021年3月11日)、『戦争と科学者─知的探求心と非人道性の葛藤』(2022年4月1日、いずれも、かもがわ出版)など。

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