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漫画『僕たちがやりました』の青春×鬱な魅力をネタバレ紹介!

更新:2021.12.19

2017年夏ドラマの原作漫画『僕たちがやりました』。予想外の鬱展開にハラハラするこの青春漫画の魅力を、最終回まで徹底的に解明します。これを読めば作品の良さがもっと実感できるポイントとは?ネタバレを含んでお伝えしますのでご注意ください。

ブックカルテ リンク

漫画『僕たちがやりました』は青春と鬱を融合させた名作!【あらすじ】

著者
["荒木 光", "金城 宗幸"]
出版日

イタズラのつもりで普段逆らえない生徒たちのいる荒れた矢波高に爆弾をしかけたトビオ、伊佐美、マル、パイセン。しかし不運なことに爆弾はガスに引火してしまい、大爆発に。数人の死傷者を出すまでの事件になってしまうのです。

冴えない思春期男子の鬱屈した気持ちをイタズラとして解放した瞬間、道が違えてしまう恐ろしさ。そこから狂っていく人格、人間関係など様々な鬱要素が詰め込まれた作品です。

青春ならではの生々しい感情が登場人物それぞれにフォーカスして描かれており、人間の底を見てしまったかのような恐怖を感じます。

今回はそんな本作の鬱要素をポイントを掴んでご紹介!ドラマ化作品と見比べてこの恐ろしさがどう表現されているかを見てみるのもいいかもしれません。

鬱要素ネタバレ1:壊れていく友情

青春の要素「友情」。冴えないものの、彼らなりに楽しんでいた平和な日々が事件によって変化していく様子がリアルです。

プロパンガスに引火したのがパイセンが仕掛けた爆弾だということで、金持ちのパイセンはトビオ、伊佐美、マルに口止め料としてそれぞれ300万円を渡します。伊佐美はそれを受け取り、今後関わりを持たないようにしようと言いますが、トビオとマル、パイセンはどうにかこのまま交友関係を続けようとしました。

しかし、結局防犯カメラに映っていたパイセンは逮捕されてしまい、マルはトビオの300万円を持って逃亡、トビオは伊佐美の彼女の今宵と関係を持ってしまうなど、彼らの関係はバラバラになってしまいます。

この友情が壊れていく様子は不快感が少しずつ心を腐食していくよう。もともとすごく強い結びつきだった訳ではない彼らが憎しみあい、離れていく様子を読んでいると、自分にもこんなことがあるかもしれないと思わされます。

鬱要素ネタバレ2:どこにいても安心できない恐怖感

普通の人物が罪を犯すという、キャラクターと行動にギャップがある本作では、彼らの「普通さ」や精神的に追い詰められていく様子が巧みに表現されています。

登場するキャラたちはみんなどこかにいそうな人物たち。モテる訳でも、勉強ができる訳でも、喧嘩が強い訳でもありません。

鬱漫画では普通の人物がどんどん猟奇的になったり、頭がおかしくなったりする場合もありますが、本作の主人公は道を踏み外してもその程度が小さく、あくまでも普通。異常な状態でも日常的な感度が鈍くならない様子が読者をより引き込む理由となっています。

また、登場人物が追い詰められる様の描き方も素晴らしいのです。コマ割りでは縦長や斜めのコマをうまく配置し、逃げる時のスピード感や焦る気持ちがセリフなどと一緒に巧みに描かれています。

展開の緩急もうまくつけられており、安心したところでのどんでん返し、時にはピンチから更なるピンチに繋げるなど、いいリズム感で読むことができます。

そしてそれらが全て人物たちの心理描写を表現した際に良い効果を発揮しており、どこにいても安心できないという気持ちが立体的に浮かび上がってくるのです。

いつのまにか読んでいる自分も追い込まれているような錯覚に陥る巧みな効果が様々なところで使われています。

鬱要素ネタバレ3:変わってしまった人格


普通とはいえ、やはり事件後4人それぞれ性格に変化が出てきます。その中で最も変わってしまったのはマルでしょう。当初は弱々しくて3人のあとについていくようなタイプでしたが、この事件を機に大きく変わってしまいます。

トビオの300万円を持ち逃げし、その後に伊佐美の金も奪おうと企むマル。しかし計画は失敗に終わり、ふたりともその金をスリに奪われてしまいます。

伊佐美は彼を殴り、もともとはマルが矢波高の生徒に捕まったのが悪いと言い出します。しかしそれに対してマルはこう返すのです。

「一番のゴミは矢波高なのは明らかっしょ?
てゆーかそもそも助けてくれなんて頼んでないし俺…(中略)
その正義感が俺の人生をメチャクチャにした!!
つまり被害者は俺なんだよ!!」

殺してしまった生徒たちに罪悪感すら持たず、自分の欲望のままに行動するようになってしまったマル。最初のか弱い印象があるだけに、変わり果てた姿は見ていて気分が悪くなります。

鬱要素ネタバレ4:重ねられる罪


本作は一度救いがあるかのような希望を持たせ、そこからまた落とされるという展開が心にキます。

事件の犯人として捕まってしまったパイセンですが、真犯人が自主し、彼は冤罪だったと釈放されました。それを聞いて喜ぶ4人はカラオケで歌い、ボーリングをし、事件前のように遊び続けるのです。

そこで話の流れが暴露大会になり、下ネタで盛り上がるトビオ、伊佐美、マル。その中で何か考え込んでいる様子のパイセンは自分の番になり、こう打ち明けます。

「矢波高爆発事件の犯人 あれやっぱ俺らやねん!
真犯人出てきたやろ?あれ実はな!
俺の親父が仕込んだでっちあげやねん!!」

実はパイセンは風俗業界を取り仕切る権力者の息子で、彼の父がホームレスの命を買い、息子に似せて整形した後、自主させたのでした。

浮かれていた分、一気に盛り下がる雰囲気。読者も一緒に悲しくなってきます。4人は爆発事件の10人と、死刑になる予定の身代わりのホームレス、計11人の命を奪うことになってしまったのです。

そしてパイセンはこのあと4人で決めたある計画で更なる罪を犯すのですが、その展開も希望が見えていただけに余計に気持ちが落とされるシーン。爆発事件からどんどん重ねられていく犯罪に読んでいる方の心もどんどん重くなっていきます。

鬱要素ネタバレ5:女子キャラが雰囲気をゆるめる


本作でストーリーの緩急をつけるのに一役買っているのが女子キャラ。主に伊佐美の彼女・今宵とトビオの幼馴染・蓮子が登場します。

今宵はほぼエロシーン担当。精神的に追い詰められてどうしようもなくなったトビオや伊佐美に体をゆるし、安らぎを与えます。

案外家庭的な面もあるものの、ヤリマンな今宵は「一時の」安らぎ。彼女が出てくるシーンは少しの安心感があるものの、未来のない救いに荒廃的な気持ちにさせられます。

それに対して希望の象徴のような存在として出てくるのが蓮子です。彼女は矢場高のリーダー格と付き合っていたものの、実はトビオに気があるよう。事実を知らない彼女との甘酸っぱい青春に、トビオもこのまま何事もなかったかのように彼女と生きていくことを夢想します。

しかし同級生の蓮子のことを大事に思えば思うほど彼女に嘘をついていることや、矢場高であった事件が思い返され、いたたまれなくなるのです。

果たしてトビオは女子キャラだけでなくもっと大きなところで、一時の逃げではなく希望のある未来を選べるのでしょうか?

『僕たちがやりました』鬱要素ネタバレ:最終巻で油断したところにくる衝撃!

最終巻は時間軸の行き来と予想外の展開に振り回される巻です。4人の出会いの回想から始まり、そのあとしばらくしてから10年後にまた彼らが再会するストーリーへと移ります。

 

著者
荒木 光
出版日
2017-04-06


本作は罪悪感が人の心の中でどう膨らみ、行動に変化を起こすのかという心理描写を楽しむ作品。最終巻では時間が経って表面上は軽くなっているものの、くすぶっている彼らの黒い気持ちがまた生々しく描かれています。

新しい彼女と結婚間近のトビオは、彼女に赤ん坊ができたことを聞いて心の中でこう考えます。

「10年間ずっとこうしてきた
たまに開きそうになるあの日の記憶に
俺は幸せで蓋をする」

子供ができても、いつも心はあの日の事件から離れられないのです。

このように抑えていた気持ちですが、この後にあるきっかけで噴き出してきてしまいます。そしてどろどろになったその気持ちを、パイセンを呼んで打ち明けるのですが……。

続きは作品でお確かめください。これで終わりにしてもいいという展開かと思いきや、そのあとにまた予想外の落とし穴があります。

最後まで読者を簡単には逃さない鬱漫画。共感できるシチュエーションではないのに、なぜか共感できてしまう彼らの気持ちを作品で味わってみてください。

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