高収入で社会的承認を得ている人々の仕事が、実は穴を掘っては埋めるような無意味な仕事だった……?
彼らは自分が意味のない仕事をやっていることに気づき、苦しんでいるが、社会ではムダで無意味な仕事が増殖している——。
人類学者のデヴィッド・グレーバーが『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』で論じた「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」は、日本でも大きな反響を呼びました。
「ブルシット・ジョブ」とは何か? 『ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか』著者の酒井隆史さんが紹介します。ブルシット・ジョブの主要5類型の1つ、“尻拭い”とは?
前回はこちら:無能な上司の尻ぬぐいする部下の苦悩…「クソどうでもいい仕事」が蔓延する根本的な理由
組織規模での尻ぬぐいは“構造的欠陥”
基本的に、尻ぬぐいの仕事の多数は、だれもあえて修正しようとしなかったシステム上の欠陥の後始末にあります。
手が回らなかったとか、予算が足りなかったとか、人員を減らしたくなかった(部下を減らしたくなかった)とか、組織が混乱しているとか、あるいはその複数とか、いろいろな理由はあります。
その結果、自動化されなかったり、ちぐはぐのままだったり、先ほどみたように不適任者が居座りつづけたりとか、そうした結果が温存されます。それをBSJでカバーするほうが選ばれるのです。
社内のネットワーク設備の欠陥がいつまでも修正されることなく、それゆえにウェブベースと紙ベースの二つの作業が並行して存在しながら、仕事が倍加するといった経験など、多くの人がざらに経験しているのではないでしょうか。
まさにそれは構造的欠陥の「尻ぬぐい」なのです。