日本人がほぼ毎日消費している「卵」。どこで、どのように、鶏は飼育されているのだろうか。NPO法人アニマルライツセンター代表理事・岡田千尋氏が、日本の鶏と卵の実態を明かしつつ、アニマルウェルフェア(動物福祉)の重要性を説く。
日本は世界で3番目に卵をたくさん食べる国である。
なんとその数、一人当たり年間329個にもなる。
しかし、私たちはどんな卵を食べているのか、ご存知だろうか。
EUだったら9割が違法業者?
日本の92%の卵農家は、EUであれば違法業者になる。
EUは2012年に鶏の「バタリーケージ飼育」(狭いケージに鶏を閉じ込めて卵を産ませる飼育法)を禁止したためだ。
さらには卵の”ケージフリー宣言”、つまり、鶏をケージで飼育するのをやめるという宣言が世界中の企業で広まっている。欧米だけでなく、南アフリカやメキシコやブラジルまでも、だ。
一方、日本はどうか。
残念ながら、日本は完全に取り残されてしまった。
では、この国の鶏たちはどんな環境で飼育され、卵を産んでいるのだろうか。
鶏の「すべてを奪う」場所
一緒の部屋で寝ていた鶏の小春ちゃんは夜明けとともに活動を始める。7時頃、私を起こしにやってきて、遠慮がちな声で鳴き、私をつつく。
なかなか気が利いている。
いまは里親の家で、太陽の光を浴び、地面を歩き、走り、羽根をめいっぱい伸ばし、飛び、砂浴びをし、用意された餌だけでなく自分でも餌を採取してうれしそうに食べ、毛づくろいをし、一番安心できる場所(同居犬のベッド)で卵を産み、里親にちょっかいをだし、犬と猫に見守られながら、その生活を謳歌している。
しかし彼女はかつては太陽の光を見たこともなく、地面を踏みしめたことも、羽根を伸ばしたこともなかった。
小春は卵用に日本の養鶏場で飼育されていた。
そこは、窓のない鶏舎のバタリーケージと呼ばれる狭いケージの中。
鶏の本能、欲求、習性、尊厳、すべてを奪う場所だった。