言葉に勢いがなかった1年?
「新語・流行語大賞」の発表が、今日12月1日の夕方に迫った。
今年も11月上旬に、いつものようにノミネート語が発表された。ところが1つだけ、いつもと違うことが起きた。
30のノミネート語を発表する際に、主催者側がこんなコメントを添えたのだ。
「言葉そのものに勢いがなく、低調な年と言えるのではないか。息の長い流行語も少なく、事象をそのまま直接的にとらえる言葉も多かった」
驚いた。主催者みずからが賞の盛り上がりに水を差すようなことを言って、どうするのだろう。
だが、このコメントは多くの人が薄々感じていたことを、主催者が認めたものと考えていいだろう。
それは「新語・流行語大賞」には、もう時代をとらえる力がないということだ。
ひねりのない言葉が並ぶ風景
まず、主催者は「言葉そのものに勢いがない」と言う。言葉の勢いとは、いったい何なのか。
おそらく主催者が言いたいのは、昨年の大賞に選ばれた「神ってる」や、ノミネートされた「ゲス不倫」のように派手さのある言葉が少ないということだろう。
だがこの賞の目的は、大賞のウェブサイトによれば「軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶ」ことだ。言葉の「勢い」というポイントは、賞の趣旨とは少しずれていないか。
主催者は「事象をそのまま直接的にとらえる言葉も多かった」とも言う。これは現象や流行を指す言葉やヒット商品の名称などが、なんのひねりも加えられずに、そのまま候補になった例が多いという意味だろう。たとえば「うんこ漢字ドリル」「AIスピーカー」「GINZA SIX」などだ。
しかし、ひねりのない言葉がノミネートされるのは今年に始まったことではない。昨年の候補にも「EU離脱」「ジカ熱」「トランプ現象」など、現象を単純に表した言葉がたくさんあったし、「君の名は。」「シン・ゴジラ」「ポケモンGO」のように、ヒット作のタイトルでしかないものも目立った。
主催者のこのコメントは、今年だけでなく、いつの年にもひねりのない言葉をたくさん候補に入れていることを認めたものと受け止めてよさそうだ。