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2020.11.28
# アメリカ # ポリティカル・コレクトネス

アメリカの大学でなぜ「ポリコレ」が重視されるようになったか、その「世代」的な理由

『アメリカン・マインドの甘やかし』(1)

アメリカの大学で起きていること

言語学者であるスティーブン・ピンカーが、発言が差別的であると批判され、アメリカ言語学会から「除名」されかけた騒動をはじめとして、アメリカでは学生による大学教授への攻撃や特定の言論に対する抑圧が問題化している 。

その背景には、気に入らない人物の過去の発言を取り上げて集団で糾弾することでその人の社会的地位や活躍の場を奪おうとする「キャンセル・カルチャー」の風潮がある (詳細は以下の二つの記事を参照:〈「世界的知性」スティーブン・ピンカーが、米国「リベラル」から嫌われる理由〉〈一つの「失言」で発言の場を奪われる…「キャンセルカルチャー」の危うい実態〉)。

スティーブン・ピンカー〔PHOTO〕Gettyimages
 

発言や行動が差別的な意味が含まないように配慮する、場合によってはそうした観点から影響力のある人物の差別的な発言を批判する――こうした「ポリティカル・コレクトネス」を重視する風潮は、アメリカでも日本でも加熱しているようだ。とはいえ、アメリカの風潮と日本の風潮とには、共通する部分もあれば異なる部分もある。

たとえば、キャンセル・カルチャーは、最近では日本のSNSでもよく見られるようになってきた。しかし、その対象は芸能人やエンターテイメントに関わる人であることが多く、ピンカーのような大学人に対する批判が行われることはあまりない。しかし、アメリカでは大学や学会に所属する若者たちが教授を糾弾する事件が頻発しているのだ。

また、「ポリティカル・コレクトネス」に対する批判も、日本とアメリカの両方で盛んとなっている。日本語で書かれた、いわゆる「ポリコレ批判」的な文章は、読者も目にしたことがあるかもしれない。だが、日本ではあくまでWeb記事やエッセイとして書かれたものが多く、印象論や個人の感想にとどまるものが大半であり、ポリティカル・コレクトネスの問題を学術的な知見から分析した論考はほとんどないようだ。

一方で、アメリカの学者たちは、心理学や社会学をはじめとした様々な専門的知識を駆使して、ポリティカル・コレクトネスの現象やその背景にある原因を解明しようとしている。

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