日本は一人当たり年間338個の卵を食べる世界第2位の消費国。しかし鶏舎の95%は狭いスペースでのケージ型で、動物が心身共に良好な状態でいる「アニマルウェルフェア(AW)」が担保されているとは言えない状態だ(*1)。
農林水産省は「AWは重要」としつつ、AWの国際基準作りでレベルの引き下げを求めるなど一貫性のない動きを見せる。
世界では欧州で従来型のケージ飼育が禁止され、大手食品会社などがケージフリー(平飼いや放牧)の卵に切り替えるなどAWへとかじを切っており、日本との差は広がっている。
(*1)国際鶏卵委員会調べ
生き生きと動き回る鶏たち
眼光力強く、赤いとさかを立てて活発に動き回り、止まり木で休む鶏たち――。
この元気な鶏を飼っているのは埼玉県寄居町の一柳憲隆さんだ。一柳さんは2006年、止まり木や巣箱がある「エイビアリー」と呼ばれる立体型の平飼い鶏舎を購入した。
「止まり木」に止まる鶏=埼玉県寄居町の動物福祉に配慮したエイビアリー式の鶏舎(大脇幸一郎撮影)
2段型のドイツ製の鶏舎に1万羽が収容されている。訪ねたときは、鶏たちが次々とコッ、コッと鳴きながらもみ殻の「運動場」に出てきた。寄ってきて長靴をつつき、堂々と動き回る。気持ちよさげに日光浴している鶏もいる。羽はふわふわと状態がよく、腕を伸ばすと二本足で止まってくれた。
「ずっと見ていても飽きないんですよ」と、一柳さんは愛おしそうに鶏を見つめていた。