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日本で「ベーシックインカム」導入は果たして可能なのか

賛否が真っ二つに分かれるが…

前回(女性たちが『ベーシックインカム』を求め続けた歴史をご存知か)、フィンランドでの半世紀近いベーシックインカムをめぐる議論では、失業者を狭義の雇用に押し戻すことよりも、むしろ人びとをそうした狭義の雇用から解放し、育児やコミュニティワークなどのアンペイドワーク、発明や芸術、起業などの創造的な活動へ誘うことなどが期待されていたことを紹介した。

また20世紀イギリスの経済学者ケインズも(アンペイドワークへの視点はないものの)、人びとが社会的な必要を満たすための労働から解放され、自由な活動へと時間を使えるようになる未来を予想していた。

 

創造性を解き放つ

第1回で、フェイスブック創業者のザッカーバーグがベーシックインカムに好意的であることを紹介した。

AI技術などの革新が雇用を減少させるのでベーシックインカムが必要になるといった論調のなかで、IT産業の起業家たちのベーシックインカム支持が紹介されることが多いが、実はザッカーバーグがベーシックインカムに賛成の理由は、そうしたいわゆる「雇用の危機」ではない。

彼の理由は、ベーシックインカムによって「新しいアイデアを試すときのクッション」を誰もが得ることができるようになるという点だ。

起業であれ、研究であれ、芸術であれ、新しいアイデアを試すときには、その間の所得をどうするかという問題が立ちはだかる。ベーシックインカムのような制度を導入することで、人びとの創造性を解き放つことができるというわけだ。

前回触れたように、フィンランドでのベーシックインカムをめぐる議論はそうした視点を持っていたにもかかわらず、政府の実験には反映されなかった。

フィンランドがベーシックインカムの給付実験を行うというニュースが世界を駆け巡ったころと同時期に、ベーシックインカムについてもう一つ世界が比較的大きく報じた出来事があった。

スイスで実施されたベーシックインカムの賛否を問う国民投票である。

スイスではある事柄について国民投票を求める署名を、18ヵ月以内に人口約800万人のうち10万筆以上集めて連邦議会に提出すると、連邦議会は国民投票を行うことが義務付けられている。

スイスではベーシックインカムへの認知を高めようとする人たちが、ベーシックインカムを権利として憲法に書き込むことへの賛否を問う国民投票の実施を求めて、12万筆あまりの署名を集め2013年に連邦議会に提出した。

連邦議会は、議会としてはベーシックインカムに反対だとの意見をつけたうえで、2016年6月に国民投票を行った。結果、賛成は20数%にとどまるものだった。

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