私たちの暮らす社会では、多くの人が支援を必要としています。地震や豪雨など、頻発する自然災害で家族や住まいを失った人々、困窮のため、毎日のごはんを十分に食べられない子どもたち。世界では、今この瞬間も戦争で犠牲になる人たちがいます。また、気候変動による自然環境の変化は、誰もが直面する課題です。山積する社会の問題に対して、行動を起こしてみませんか。遺贈や寄付など、一人ひとりができることを考えてみましょう
ベトナムに里子が236人
私財を投じて65年、
福祉活動を続ける理由
杉良太郎
刑務所の慰問に始まり、チャリティー公演、学校建設、震災ボランティア……。数十億円もの私財を投じ、世界各国で支援を行ってきた杉良太郎さん。福祉活動における杉さんのモットーとは
恩師に誘われ慰問先で歌う
65年前に刑務所を慰問したのが、私の福祉活動の始まりでした。デビュー前のことです。歌謡学院の盲目の先生に誘われて、加古川刑務所、神戸刑務所、姫路少年刑務所など7ヵ所へ。先生がアコーディオンを弾き、私は学生服で歌いました。
当時の刑務所がどんな様子だったかなんて、想像がつかないでしょう? 時代背景が今とはまったく違います。戦後、人々は本当に貧しくて、食べるのに困って罪を犯した人がたくさんいました。「刑務所の臭い飯」とよく言うけれど、あの頃の飯は麦が7割で、米は3割。食料を保存する倉庫もないからカビが生えていて、炊くとものすごく臭かったんです。
受刑者たちの前で歌うのは怖かったですよ。でも、一生懸命に聞いて、涙を流して拍手してくれた。「こんなに喜んでくれるんだ」と、私の心に響いたんでしょうね。以来、機会を見つけてはあちこちの刑務所を慰問するようになりました。電車賃がかかって、大変でしたけど。
もともと、私の親父が人の借金を背負ってしまうようなお人好しで。母親も、今日食べるものがないのに、お米を借りてきてまで困っている人を助けようとする人。そういう親の姿を見て育っていたから、人のために何かをするのは当たり前になっているのかもしれません。
大切なのは「心を乗せる」こと
21歳で歌手デビューし、27歳の時、韓国に国賓待遇で呼ばれました。それを機に、戦争で日本が迷惑をかけた国々にお詫びをしてまわろうと思った。それぞれの国の日本人墓地にも菊の花と線香を手向けに行きました。そして一通りまわり終えた後、今度は、日本の移民を受け入れてくれた国々へお礼をしに行くことに。ハワイやブラジルなど、日本人会があるところにも行き、慰問したり病院を建てたり、チャリティーコンサートもいろんな国でやりました。
刑務所の慰問を続けるなかで教育の大切さを痛感していたので、中国やベトナムで学校を建てたりもしました。支援において何より大切にしていたのは、「心を乗せる」こと。例えば、ただお金を送るのではなく、子どもたちが自活できるようにニワトリ小屋を作り、私が市場にニワトリを買いに行く。それを自分たちで育て、売りに行かせたりしました。彼らはそのお金でミシンを買い、服を作ることができるのです。
ベトナムには今、里子が236人いますが(2024年8月時点)、彼らが結婚式の招待状や子どもの写真を送ってくれます。孤児だった子たちが家族を持ってくれるのは嬉しいです。信頼できる日本人がいれば、日本のイメージもよくなるはず。そうして国同士の友好関係が築かれていくと思っています。
理解することも福祉活動
福祉活動を続けるなかで、「もっとこうすればいいのに」と、さまざまなアイディアが浮かぶことがあります。
たとえば、「刑務所の一所一品運動」。受刑者を労働力として、その刑務所の特産品を作る。販路も考えて利益を上げれば、使う税金を減らせるし、何より被害者への償いにも充てられるでしょう。
殺処分されてしまう保護犬を受刑者が家庭犬に育てるという取り組みも始めたところです。犬に愛情を持って接することが更生につながる部分もあるでしょう。犬のケアに関する資格を取れれば、出所後に仕事も見つけやすくなるはずです。
また、日本は災害支援に大きな課題があります。地震が頻繁に起こるし、豪雨による洪水も大変なことになっている。救助や被災地支援のために、航空消防隊が必要だと思いますね。
私は被災地へ行くたびに打ちひしがれて帰ってきます。トラックで現地に向かって物資を配っても、無力感がある。ヘリコプターや船で救出に向かいたいけれど、個人でできることには限界があります。今できることをやるしかない、と自分に言い聞かせています。
こうして長年福祉活動に携わるのはなぜなのか。ほかの人には理解しがたいかもしれません。私自身も時々「お前は何者なのか」と鏡に向かって問いかけるけれど、答えは返ってこない。ただ、モットーにしていることはあります。
「お金がある人は、お金を寄付してください。お金がない人は、時間を寄付してください。お金も時間もない人は、福祉活動をする人を理解してあげてください」
理解することも、立派な福祉活動なのです。人のために何かしたいけれど、自分に何ができるかわからないという人もいることでしょう。まずは、世界や日本で何が起きているのか、関心を持つことがスタート地点だと思います。
杉良太郎(すぎ・りょうたろう)/歌手・俳優
1944年兵庫県生まれ。ユネスコ親善大使兼識字特使、日・ASEAN特別大使などを歴任。法務省特別矯正監、厚労省特別健康対策監、警察庁特別防犯対策監(いずれも永久委嘱)を務める。2025年公開のアニメ映画『親鸞 人生の目的』で声優として主演。緑綬褒章、紫綬褒章など受章。文化功労者
『婦人公論』1月号「あなたの思いが未来の希望になる」 企画では、下記の団体を紹介しています
- 国際大学https://www.iuj.ac.jp/jp/donation/
- 全国こども食堂支援センター・むすびえhttps://musubie.org/
- 交通遺児育英会https://www.kotsuiji.com/
- 国連UNHCR協会https://www.japanforunhcr.org/
- 日本対がん協会https://www.jcancer.jp/
- 日本自然保護協会https://www.nacsj.or.jp//
- 日本介助犬協会https://s-dog.jp/
- 日本ユニセフ協会https://www.unicef.or.jp/
- 国境なき医師団https://www.msf.or.jp/
- 日本ユネスコ協会連盟https://www.unesco.or.jp/
応募方法
〈応募フォーム〉から資料の希望と、下記A~Cの中からご希望の商品を1つ選んで、アンケ―トにご回答の上、必要事項を入力してご応募ください。当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。
締切
2024年2月28日(金)
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A賞(10名様)
JTBナイスギフト
1万円分
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B賞(10名様)
「日本の贈り物」カタログギフト
4500円相当
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C賞(20名様)
婦人公論オリジナル図書カード
1000円分