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2025年01月21日
糖尿病が認知症リスクを高める 野菜を食べている人は認知症リスクが低い 中年期の生活改善によりリスク低下
糖尿病のある人は、血糖値が高い状態が長く続くと、認知機能が低下しやすくなり、認知症を発症しやすいことが知られている。
40~50代の中年期に健康的なライフスタイルをもち、高血圧や糖尿病などを改善できていた人は、年齢を重ねても、記憶障害などの認知機能の低下が少ないことが明らかになった。
野菜をよく食べていて、野菜に含まれる色素成分であるカロテノイドなどのレベルが高い人は、認知症の発症リスクが低く、認知機能も高く維持できていることも、最新の研究で明らかになった。
逆に、中年期に内臓脂肪が多くたまっていた人は、20年後に認知症を発症するリスクが高いことも報告されている。
糖尿病のある人は認知症リスクが高い
糖尿病のある人は、血糖値が高い状態が長く続くと、認知機能が低下しやすくなり、認知症を発症しやすいことが知られている。
血糖値が高い糖尿病の人は、そうでない人と比べて、認知症のリスクが1.4倍高いという報告がある。糖尿病のある高齢者は、軽度認知障害(MCI)から認知症に移行しやすいことも知られている。
認知症を予防するために、低血糖を起こさないようにしながら、血糖値を良好に管理することが重要になる。
中年期に健康的な生活をしていた人は認知機能の低下が少ない
中年期に健康的なライフスタイルをもち、高血圧や糖尿病などを改善できていた人は、年齢を重ねても、記憶障害などの認知機能の低下が少ないことが、1万4,000人以上の女性を30年以上追跡した、米ニューヨーク大学による大規模な調査で明らかになった。
若い頃から食事を改善し、運動にも取り組むことで、年齢を重ねてから認知機能の低下を抑えられ、その後の人生に大きく影響することが示された。
とくに、中年期に高血圧などを予防・改善するのに効果的な食事をしていた女性は、数十年後に認知機能の低下があらわれる可能性が17%減少していた。
「中年期に食餌などのライフスタイルが健康的だと、年齢を重ねてから認知機能の低下を抑制でき、認知症を予防するのに効果的であることが示されました」と、同大学ポピュレーション保健学部のユー チェン教授は述べている。
中年期に内臓脂肪が多いと20年後に認知症リスクが上昇
逆に、40~50代の中年期に内臓脂肪が多くたまっていた人は、20年後にアルツハイマー病を発症するリスクが高いことも、最新の研究で明らかになった。
アルツハイマー病は、認知症でもっとも多い疾患で、日本でも有病者が2040年には600万人近くまで増えると予測されている。
内臓脂肪のレベルが高いことは、アルツハイマー病の発症の原因になる重要な分子であるアミロイドの増加と関連しているという。
研究は米ワシントン大学などによるもので、詳細は北米放射線学会(RSNA)の年次学術集会で発表された。研究グループは、認知機能が正常な平均年齢が49.4歳の中年期の成人80人を対象に、腹部のMRI検査や、脳のPET検査などを実施した。
40~50代から認知症の初期段階ははじまっている
その結果、中年期に内臓脂肪の蓄積や肥満があり、血糖を下げるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性があったり、善玉のHDLコレステロールが低値であることなどは、脳内のアミロイドの増加に与える影響の77%を占めることなどが明らかになった。
「40~50代という中年期から、食事や運動などのライフスタイルの改善に取り組み、必要に応じて薬物療法を行い、適切な体重管理や内臓脂肪の減少などに取り組めば、アルツハイマー病の発症を予防したり遅らせられる可能性があります」と、同大学放射線研究所(MIR)のサイラス ラジ氏は言う。
「40~50代という中年期にすでに、アルツハイマー病の初期段階の病理があらわれている人もいます。内臓肥満が脳にも悪影響を及ぼすメカニズムを解明すれば、脳の血流を改善し、アルツハイマー病のリスクを軽減できるようになると考えられます」と、ラジ氏は指摘している。
緑黄色野菜のカロテノイドの多い人の脳は健康
ルテイン・ゼアキサンチン・リコピンは、緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの一種で、ホウレンソウやブロッコリー、ケール、カブの葉などの野菜に含まれる。
研究は、米国で実施されている「ラッシュ大学記憶・老化プロジェクト」に参加した1,000人以上の男女を、10年以上追跡したもの。
その結果、野菜をよく食べていて、カロテノイドや、ルテイン・ゼアキサンチンの摂取量がもっとも多い人は、ほとんど食べない人に比べて、アルツハイマー病のリスクが10年間で50%低いことが明らかになった。
さらに、野菜や全粒穀物、魚、ナッツ類などの健康的な食品を食べ、肉類やジャンクフードなどをあまり食べない人は、アルツハイマー病のリスクが低下し、認知能力の低下も少ないことも分かった。
アルツハイマー病の神経病変のある人の脳では、ルテイン・ゼアキサンチン・リコピン・トコフェロールのレベルが著しく低く、アルツハイマー病の病変のない同年齢の人の脳に比べて、リコピン・ゼアキサンチン・レチノールの濃度は半分程度だった。
「カロテノイドには、体内で増えた活性酸素を除去する抗酸化作用があり、老化を防止する働きがあるとみられています」と、バージニア工科大学基礎科学教育学科のキャスリーン ドリー教授は言う。
「カロテノイドなどを豊富に含む、バランスの良い健康的な食事や、運動を習慣として行うことなどは、あらゆる年齢層で、脳の健康状態を良好に保つのに効果的と考えられます」としている。
Women with a Heart-Healthy Diet in Midlife Are Less Likely to Report Cognitive Decline Later (ニューヨーク大学医科大学院 2023年10月24日)
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