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ニュース

2022年10月03日

【新型コロナ】コロナ感染で1型糖尿病の発症が増加 数年で大幅増加する可能性を指摘

 新型コロナに感染した子供は、1型糖尿病を発症するリスクが大幅に高いことが、13ヵ国の18歳以下の100万人超の患者の電子医療記録を解析した研究で示された。

 18歳以下の新型コロナ患者は、1型糖尿病の新規診断が72%増加した。「今後数ヵ月から数年で、1型糖尿病が大幅に増加する可能性があります」と、研究者は指摘している。

 新型コロナウイルスは体の自己免疫応答を増加させることが示唆されており、これが1型糖尿病の増加に影響している可能性があるとしている。

新型コロナに感染した子供で1型糖尿病の診断が72%増加

 新型コロナに感染した子供は、1型糖尿病を発症するリスクが大幅に高いことが、米国など13ヵ国の18歳以下の109万1,494人の患者の電子医療記録(EHR)を解析した研究で示された。

 新型コロナに感染した小児と若年者は、新型コロナの診断から6ヵ月以内に、1型糖尿病を発症する傾向が高く、調査では、18歳以下の新型コロナ患者での1型糖尿病の新規診断が72%増加したことが示された。

 研究は米ケース ウエスタン リザーブ医科大学によるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載された。

 米国疾病管理予防センター(CDC)はこれまで、新型コロナに感染した小児患者は、感染後に糖尿病と診断される可能性が高いことを報告していた。しかし、1型糖尿病と2型糖尿病の区別はしていなかった。

関連情報

1型糖尿病の原因は「自己免疫」 2型糖尿病とは異なる

 1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が破壊され、体内でインスリンを作れなくなり発症する。β細胞が壊される原因ははっきりと分かっていないが、免疫作用が正しく働かないことで、自分の細胞を攻撃してしまうこと、つまり「自己免疫」が関わっていると考えられている。

 1型糖尿病は、小児期や思春期に発症することが多いが、中高年になって発症する人もいる。食事や運動などの生活スタイルや肥満などと関係なく発症する。その治療法は、絶対的に欠乏しているインスリンを、注射などで補充すること。

 一方、2型糖尿病は、40歳以上で発症することが多く、食事療法や運動療法が必ず必要となり、1型糖尿病とは疾患や治療の考え方はまったく異なる。

 CDCによると、米国の20歳未満の小児と若年者の1型糖尿病のある人の数は約18万7,000人に上る。

新型コロナウイルスが自己免疫応答を増加させる可能性を指摘

 「1型糖尿病は自己免疫疾患とみられています」と、ケース ウエスタン リザーブ医科大学地域保健統合センターのパメラ デイビス教授らは言う。

 「1型糖尿病は主に、体の免疫防御がインスリンを産生するβ細胞を攻撃し、それによりインスリン産生が消失することで発症します。新型コロナウイルスは自己免疫応答を増加させると考えられており、それが1型糖尿病の発症リスクを高めている可能性があります」としている。

 研究グループは、2020年3月~2021年12月に新型コロナに感染したと診断された、米国など13ヵ国の18歳以下の109万1,494人の患者の匿名化された電子医療記録(EHR)を解析した。記録には新型コロナ以外の呼吸器感染症も含まれていた。

 研究グループは対象者を、9歳以下の患者と10歳~18歳の患者の2つのグループに分け、年齢、人口統計、糖尿病の家族歴などの統計的な情報を照合した。28万5,628人の患者が新型コロナの患者で、28人5,628人が新型コロナ以外の呼吸器感染症の患者だった。

 解析した結果、次のことが明らかになった――。

  • 新型コロナ感染から6ヵ月以内に、123人(0.043%)が1型糖尿病と新規に診断されたのに対し、新型コロナ以外の呼吸器感染症の患者の1型糖尿病の診断は72人(0.025%)であり、1型糖尿病の発症率は新型コロナ患者で72%上昇していた。
  • 新型コロナの感染後1・3・6ヵ月で、1型糖尿病と診断されるリスクは、新型コロナ以外の呼吸器感染症に感染した患者に比べ、大幅に高かった。同様の結果は、9歳以下と10歳~18歳の年齢層別にみても同様だった。

1型糖尿病の新しい症例に対し適切に対応をする必要が

 1型糖尿病の大部分は家族歴のない人が発症しているが、遺伝的要因や環境因子の影響もあると考えられている。

 「1型糖尿病の発症リスクがあると分かっている場合には、新型コロナに感染したときの糖尿病の症状にとくに注意する必要があります。また、地域の小児科医は、子供たちの1型糖尿病の新しい症例に対し適切に対応できるよう、準備をする必要があると考えられます」と、デイビス教授は指摘している。

 「新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株の感染が世界的に急速に広がり、子供や若者の感染も増えているので、とくに注意する必要があります」。

 「今後数ヵ月から数年で、1型糖尿病が大幅に増加する可能性があります。1型糖尿病とともに生きる人にとって、1型糖尿病は生涯にわたる課題であり、その発症数の増加は、より多くの子供たちやその保護者にとって懸念されることです」としている。

 「新型コロナに感染した小児患者の1型糖尿病の新規発症について、それが持続するものなのか、どのような子供が発症しやすいのか、小児の新型コロナ感染に関連した1型糖尿病に対してどのような治療方法があるのかについて、今後さらなる研究で解明する必要があります」と、同大学生物医療情報学部の教授であり創薬・人工知能センターのディレクターでもあるロン スー氏は言う。

 「私たちは、新型コロナに感染した子供の、2型糖尿病の発症への影響についても調査しています」としている。

COVID-19 associated with increase in new diagnoses of type 1 diabetes in youth, by as much as 72% (ケース ウエスタン リザーブ大学 2022年9月29日)
Association of SARS-CoV-2 Infection With New-Onset Type 1 Diabetes Among Pediatric Patients From 2020 to 2021 (JAMA Network Open 2022年9月23日)
【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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