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マイコトキシン
Online ISSN : 1881-0128
Print ISSN : 0285-1466
ISSN-L : 0285-1466
原著論文
リンゴ果汁に含まれる揮発性化合物によるPenicillium expansumの生育およびパツリン産生への影響
田口 智康石原 亨中島 廣光
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2014 年 64 巻 1 号 p. 1-14

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抄録
  6種類の市販リンゴ果汁から調製したリンゴ果汁培地でPenicillium expansumを培養したところ,リンゴ果汁の違いはパツリン産生に大きく影響したが,カビ生育への影響は小さかった.対して,リンゴ果汁の違いによるパツリン産生への影響は大きく,パツリン産生量は果汁により7.3倍の差があった.さらに,各リンゴ果汁を減圧濃縮処理した後,ミリQ水を加えて還元処理した濃縮還元リンゴ果汁から6種類の培地を調製してP. expansumを培養し,カビの生育とパツリン産生に及ぼす影響を調べた.その結果,全てのリンゴ果汁において,濃縮還元処理によってパツリン産生量は減少し,カビの生育は促進される傾向が観察された.このことは,揮発性化合物がパツリン産生を促進し,カビの生育を抑制することを示唆していた.そこで,リンゴ果汁に含まれる揮発性化合物をGC-MSで分析し縮還元処理によって濃度が大きく減少した 13化合物を選択し,パツリン産生の促進効果を調べたところ,2-メチルプロピル酢酸,エチル酪酸,エチル2-メチル酪酸,3-メチル-1-ブタノール,ヘキシル酢酸,1-ヘキサノールおよび2-メチル酪酸の7化合物は,濃度依存的にP. expansumによるパツリン産生を促進し,特に2-メチル酪酸とそのエチルエステル化合物,エチル2-メチル酪酸はその効果が高かった.これらの結果は,P. expansumによるパツリン産生は,リンゴ果汁中の揮発性化合物の組成の影響を大きく受けることを示していた.
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© 2014 日本マイコトキシン学会
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