2022 年 75 巻 1 号 p. e1-e8
本研究では,牛呼吸器病症候群(Bovine Respiratory disease complex:BRDC)が多発する栃木県内の子牛預託牧場にて,冬季のBRDC発症による発熱の検知を目的として,群導入時の子牛40頭の尾根部腹側に体表温センサを装着し,発熱検知及び発熱原因の探索を行った.測定された体表温実測値から補正式を用いて計算された補正体表温を用いて算出した一日発熱積算値及び発熱検知頭数の増加は,群導入後4〜5日目と13〜15日目の二峰性に認められた.病原体検査結果と合わせると,一峰目の発熱は,牛コロナウイルスのまん延する時期に一致し,二峰目の発熱は,炎症を伴う細菌の2次感染による発熱と考えられた.以上のことから,体表温センサにより子牛の群導入後のBRDCに関与する病原体に起因する発熱の検知が可能であり,ウイルス感染後に炎症を伴う細菌感染に移行するというBRDCの病態進行と関連して二峰性の発熱を呈することが示された.