抄録
有向グラフを用いた異常診断法は, プラントの異常の伝播のパターンから原因を追求するが, 伝播の途中でオペレータの介入や制御系により一部の状態量が正常値に復帰すると, 有向グラフが分断され真の原因を特定できない状態になる.多層グラフを用いるとこの問題は解決できるが, 状態の変化の度に層が増え, グラフ表現が複雑になるし, 診断に必要な記憶容量も膨大なものになる.本報では, 過去の層として'+'と'-'の2層用意し, 各層の状態変数が変化した時刻を記憶する新たなグラフ表現を提案し, そのグラフ表現に基づいた異常診断法の有効性を示す.