春画をまとめたものを「艶本」という。早い話が昔のエロ本である。
また、一般画と春画の中間に位置するそれほど露骨な描写でない作品は「危絵(あぶなえ)」と呼ぶ。
なお、喜多川歌麿や葛飾北斎、歌川広重など江戸時代の著名な浮世絵師は全て春画を描いており、春画を全く描かなかったのは東洲斎写楽だけだとされている。
また、春画は日本だけのものではなく、中国やトルコなどにもあり、西洋においてもそれに近い芸術作品が、有名画家のものにも存在する(レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ・ブオナローティが手掛けた『レダと白鳥』や、イ・モーディの作品など)。
春画や危絵を描くうえで一番大変だったのがモデルであり、当時の時代では写真などが無かったため、描く際には作者がモデルを出迎えたり自らが出向くなどして、わざわざ長時間その態勢をとって貰わなければならなかった。
危絵師が主要人物として登場する、川田弥一郎氏の時代小説『江戸の検屍官』には、そうした危絵のモデルが苦労している様子が綴られている。
ちなみに『江戸の検屍官』は、高瀬理恵氏による漫画版もあり(小学館・ビッグコミックにて断続的に短期連載)、そちらでも同様の描写がある。
なお、これまで邦画で春画が無修正の状態で映されることはなかったものの、2023年10月公開の映画『春画先生』にて、ついにR-15指定を受けた状態で解禁されることとなった。
2024年にアサシンクリードシャドウズ炎上騒動に乗じて「日本では古くから多数の黒人奴隷売買が行われていた」という歴史改竄とも言える暴論を持ち出す人々が現れだした。していないという根拠となる歴史書物も無いため悪魔の証明に近い状況となっていた。
そこに待ったをかけたのが春画である。
当時の春画は裸婦だけでなく葛飾北斎が描いたタコ、ロシア兵、果てはエイの春画まで存在する多様な性趣向が記録されていたが、黒人の春画作品は1800年代以降からしか確認されていない。
弥助の活躍した時代から黒人奴隷売買が盛んであったのであれば、ありとあらゆる性癖が記録された春画の中にあって然るべきなのに黒人の春画が存在しないということは日本では黒人奴隷の売買が一般的では無かった証左となるのである。
かくしてエロが歴史の証拠として矛盾を暴いたのである。