税金(英:tax)とは、正しくは租税といい、国や地方公共団体が強制的に徴収する金銭のことをいう。
国(地方公共団体)が、その統治領域内で経済活動をする個人・法人から、強制的に徴収する金銭を租税という[1]。
「統治領域内で経済活動をする者」が、国(地方公共団体)に対して自発的に無償で納付する金銭は、租税とは言わず、寄附金という。
国(地方公共団体)が「統治領域内で経済活動をする者」から強制的に無償で徴収する金銭のことを租税ということは確実である。
国(地方公共団体)が「統治領域内で経済活動をする者」から強制的に有償で徴収する金銭がある。「有償で」というのは「物資やサービスを提供する代償として」という意味である。負担金、手数料、専売物資の価格、国の独占事業の料金が挙げられる。こうした金銭を租税に含むかどうかで学説が分かれている。詳しくは本記事の『租税狭義説と租税広義説』の項目を参考のこと。
「税金とは、中央政府や地方公共団体が、その統治領域内で経済活動する者に対して、国籍を問わずに強制徴収する金銭である」と基本的に考えることができる。
国籍を問わないというのが特徴である。日本に住んでいるイタリア人サッカー選手は日本の税務署へ全世界で稼いだ所得について所得税を払うし、イタリアに住んでいる日本人サッカー選手はイタリアの税務署へ全世界で稼いだ所得について所得税を払う(詳しくは本記事末尾の『複数の国で所得を得る個人・法人への課税』の項目を参照のこと)。
日本人であっても、日本を脱出して税率の安い国に居住し、その地で経済活動をすれば、その地で稼いだ所得について日本の税務署へ税金を払わずに済む。税金を安くして金持ちを熱心に誘致する国のことをタックスヘイブン(租税回避地)という。
日本の中世~江戸時代では、年貢の取り立てが厳しい武士・貴族・社寺・地方豪族の所領から一家そろって脱出して、年貢の取り立てが優しい武士・貴族・社寺・地方豪族の所領へ移住する現象があった。これを欠落(かけおち)という[2]。欠落されて統治領域内から脱出されると、その武士・貴族・社寺・地方豪族は脱出者に対してなかなか手出しができなかった。
また、税金は、中央政府や地方公共団体の統治領域内に住所を持たない個人・法人にも課せられることがある。統治領域内で経済活動をするだけで課税対象になることがある。住所を持たずにホテル暮らしを長々と続ける個人に対して所得税を課すことがある。
日本の奈良時代では租庸調の制度が実施され、米や絹や布が徴税された。このように物品を徴収する租税制度を物納という。
また、奈良時代には銅でできた金属貨幣が流通し、金属貨幣を徴税することが行われた。このように貨幣を徴収する租税を銭納とか金納という。
物品と金属貨幣の両方を徴税する制度は江戸時代まで長々と続いた。明治時代になって、徴税対象が通貨に一本化した。日本だけでなく、近代・現代の世界各国においては、通貨のみを徴税対象品とする例が極めて多い。
労働を強制することも租税の一種と捉えることができる。強制労働のことを労役とか夫役(ぶやく)という。
日本の奈良時代では徭役(ようえき)が課せられた。江戸時代で街道の近くに住む住民には助郷(すけごう) という大名の参勤交代をお手伝いする労働が課せられた。明治時代になって労働を強制する制度が廃止された。
兵役を強制することも租税の一種ととらえることができる。兵役を務めるということは、軍隊に入って労働するというのと同じだからである。日本の奈良時代では防人(さきもり)の制度があった。明治時代になって明治憲法が施行されると第20条により国民に兵役の義務が課せられ、徴兵制が導入された。昭和22年(1947年)になって日本国憲法が施行され、徴兵制が終わった。
2021年現在の日本において、労働を国民に強制する制度が1つあり、裁判員制度が該当する。ただし裁判員制度はかつての徴兵制とは違い、会社員が裁判員候補者に指名されたとしても代わりに業務を行う人がおらず業務上重大な不利益が生じる場合には辞退することが可能である[3]。
日本において、税金を徴収する機関は、国税庁である。国税庁は財務省の外局として設置されている。国税庁の下部組織が国税局で、国税局の下部組織が税務署である。
日本の国税局や税務署は、色々と優秀で、何事も手抜かりがなく、恐るべき組織として知られている。彼らの行う税務調査は、しばしば家宅捜索を伴うことがある。国税局や税務署の家宅捜索は徹底的で、家中のものをひっくり返しつつ、何もかも調べ尽くしていく。
納税の義務を怠っていると見られる者に対しては通常まずは税務署が相手をする。大規模・悪質で税務署の手には負えないと判断される場合は、国税局の査察部の国税査察官(通称:マルサ)が入り、裁判所の令状を得て家宅捜索を伴う強制調査を実施する。
確定した税額について滞納がある場合は、国税徴収官が裁判所の令状なしで家宅捜索することもできる。国税徴収官のなかでも特別国税徴収官(通称:トッカン)部門は、特に多額・長期の滞納者を担当する。さらに重大な事案については国税局の特別整理部門が担当となる。
脱税をすると、警察に逮捕され、検察に起訴され、裁判所で裁判が行われる。税金に関する法律は多く存在するが、「脱税したら10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金刑あるいはその併科(両方の刑が科されること)、ただし罰金額は脱税額を限度として増額される可能性がある」という罰則が規定されていることが多い(記事1、記事2)。
有罪判決を受けて懲役刑を受けるときは、法務省が管理する刑務所に叩き込まれ、自由が奪われた生活を強制されることになる。ご飯は栄養満点のものが出てくるが、とにかく自由が少なくて、あまり楽しくない。
納税 | 政府や地方自治体に対して税金を納付すること |
徴税 | 政府や地方自治体が税金を徴収すること。課税ともいう |
税率 | 課税対象に対して徴税する割合・比率 |
増税 | 税金の税率を増やすこと |
減税 | 税金の税率を減らすこと |
免税 | 課税を免除すること。英語で言うとデューティー・フリー(duty free) |
節税 | 制度を利用したり制度の抜け穴をつついたりして、納税額を減らすこと。これを行っても犯罪にならない |
脱税 | 納税すべきなのに経理書類を不正操作するなどして納税の義務を果たさないこと。これを行うと犯罪になる |
税務 | 税金に関わる事務 |
負担金、手数料、専売物資の価格、国の独占事業の料金などがある。つまり、国(地方公共団体)が物資やサービスを提供する代償として、有償で徴収する金銭のことである。
それぞれの例を挙げて表にすると、次のようになる。
負担金 | 都市計画負担金、道路負担金、河川負担金、下水道事業受益者負担金 |
手数料 | ごみ処理手数料 |
専売物資の価格 | 1984年以前で専売公社が専売していたタバコの値段 |
国の独占事業の料金 | 2006年以前で郵便局が提供していた郵便料金 |
これらも国(地方公共団体)が徴収する金銭なので、租税によく似た存在である。
「国(地方公共団体)が国民(住民)から強制的に無償で徴収する金銭を租税という」という定義を租税狭義説という。つまり負担金などを含めない考え方である。
これに対し、「国(地方公共団体)が国民(住民)から強制的に無償で徴収する金銭だけでなく、国(地方公共団体)が国民(住民)から強制的に有償で徴収する金銭も含めて、租税という」という考え方を租税広義説という。こちらは負担金などを含むという考え方である。
明治憲法が施行されていた時代は、第62条第2項ではっきりと租税狭義説が採用されていた。
1947年5月3日になって日本国憲法が施行されるようになると、第30条で納税の義務が明記されたが、租税狭義説をとるのか租税広義説をとるのか憲法の条文で明言されていなかった。
1947年3月31日に施行された財政法では第3条で租税広義説を採用した。ところがその後すぐに成立した「財政法第三条の特例に関する法律」で、「タバコの価格と、電信・電話の料金と、郵便局の郵便・郵便貯金・郵便為替・郵便振替に関する料金と、国鉄の運賃は、租税と同じ扱いにする。しかし私鉄運賃と電気・ガス料金などは財政法第3条の例外として、租税と同じ扱いにしない。料金改正に当たって法律も国会の議決も必要ない」ということにした[4]。
日本の最高裁は旭川市国保料訴訟の2006年3月1日判決で「特別の給付に対する反対給付として徴収する金銭は憲法第84条が直接適用されない」という意味の言葉を述べている。これを言い換えると「物資やサービスを提供する代償として徴収する金銭は租税に含まれない」となる。つまり租税狭義説を採用したことになる。
ただし、同じ判決で「租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶ」と述べている。これを言い換えると「物資やサービスを提供する代償として金銭を徴収する時の強制性が租税のように強ければ、それは租税と扱う」となり、租税広義説を一部だけ認めたといえる。
租税を納める義務は、日本国憲法第30条において定められている。「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」という短い条規となっている。
憲法というものは、権力者の行動を規定して、権力を制限し、被統治者である国民の安心と自由を確保するために制定されている[5]。つまり、憲法とは政府・公務員に対する命令の集積なのである。
ところが何事も例外があり、日本国憲法の中には国民に義務を課す条文が3つある。そのうちの1つが日本国憲法第30条である。
また、先述のように日本政府は外国人にも納税の義務を課している。
日本人に対しては日本国憲法第30条と法律で納税義務を課し、外国人には法律だけで納税義務を課しているのである。
租税を徴収することで国民生活に多大な影響が発生する。国民にとってコロコロと税率を変えられては迷惑である。
権力者の都合でコロコロと税率が変わっていく現象を防ぐため、日本国憲法は「租税の制度を決めるとき、法律で定めねばならない」という原則を定めている。これを租税法律主義とか租税法定主義という。
日本国憲法第30条の「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」という条規と、日本国憲法第84条の「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」という条規に、租税法律主義が盛り込まれている。
法律というのは、作ったり変更したりするのに多大な労力が必要である。日本国憲法第41条で「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」と定められており、法律を通すためには必ず国会の議決を得なければならない。
国会は年がら年中開かれているわけではなく、毎年1月から6月まで150日間の日程で開催される通常国会[6]と、毎年10月から12月まで50日間程度の日程で開催されることが恒例となっている臨時国会がある程度である。つまり1年365日のうち200日ほどしか国会が開催されていない。
1年365日のうちのほとんどで国会を開く通年国会にするのは、無理がある。国会議員が地元民と交流する時間を確保すべきという意見もあるし、官公庁にとって国会対策というのは大変な緊張を強いられるので官公庁の体力を維持するため通年国会を避けるべきという意見もある[7]。
国会日程が限られていて、提出された法案をちゃんと審議しなければならないから、それにより政府から提出される法案の数も限られたものとなる。2021年1月から6月まで開催された通常国会で政府から提出された法案は63で、成立した法案は61である(記事)。「通常国会150日間で1000の法案を出してほとんど審議せずにすべて可決する」とか、そんなことができるわけがない。
このように、租税法律主義によって租税の制度を定める難易度がとても高くなっている。
先述のように租税を導入するときには法律で定めなければならないが、その法律の効果が続く期間をどのようにするかで違いがある。
永久税主義というのは、租税を定める法律をいったん制定してしまえば、あとは法律の改正があるまで毎年徴税することができるというものである。つまり租税を定める法律の効果が続く期間を永久とみなすものである。比較的に立法の手間が少なくて済み、為政者にとって好都合なものである。
一年税主義というのは、租税を定める法律の効果が続く期間を1年かぎりとするものである。租税を定める法律を1年おきに制定しなければならない。毎年法律を制定しなければならず、非常に立法の手間がかかり、為政者にとって厳しいものである。
日本では明治憲法第63条により永久税主義が導入された。日本国憲法の租税関連の条規には永久税を明示する表現が存在しないが、明治憲法時代の慣習をそのまま引き継いで永久税主義を採用している。
租税を徴収することで、国民生活に多大な影響が発生する。それゆえ、租税の制度を決めるときは、影響を受ける国民の意見をよく受け取ることが重要とされている。
国民の意見をかき集めることが得意なのは、国会議員である。国民の選挙を経なければ国会議員になることができない(日本国憲法第43条)。
日本の自民党には、自由民主党税制調査会(自民党税調)という審議機関がある。この自民党税調(略して党税調と呼ばれる)は、租税に関する発言権を強く持っている。初冬に党税調(特に発言権を持つ4~5名の議員を「インナー」といい、日本の租税政策は事実上彼らが決定している)で決まった税制案がほぼそのまま翌春法律化されると思っていいぐらいである。ただし、近年は公明党との連立政権であるため、党税調の議論に公明党の主張も加味された形で「与党税制改正大綱」が策定される。
内閣総理大臣の諮問機関として、政府税制調査会(政府税調)というものがあるのだが、長年にわたり、政府税調の意向よりも自民税調の意向の方が重んじられており、「党高政低」と言われてきた(天気予報でよく使われる東高西低という表現をもじっている)。マスコミ報道ではこの政府税調での発言なども大きく取り上げられるが、政府税調の議論は党税調のそれとは違い近い現実に政策化されることのない中長期的・抽象的な議論であるため、注意する必要がある。
税金の一覧の記事も参照のこと。
課税する機関がどこかによって租税を大別すると、国(中央政府)が課税する国税と、地方公共団体が課税する地方税に分けられる。
租税を国庫に納めたあとの使い方によって租税を大別すると、特に使途を定めず国政の全般に使用することができる普通税(一般税)と、特別に使途を定めてある目的税に分けられる。
普通税の方が数が多く、目的税は数が少ない。目的税は復興特別所得税、電源開発促進税、狩猟税、事業所税、都市計画税が挙げられる(松戸市作成資料)。
税負担の尺度となる課税ベースがどれかによって租税を大別すると、資産課税等、消費課税、所得課税の3つになる。
資産課税は資産の取得・保有・移転等に対して課税される。資産の取得で課税されるものは相続税と贈与税、資産の保有で課税されるのは固定資産税と都市計画税、資産の移転で課税されるものは登録免許税と印紙税と不動産取得税である[8]。
資産課税の多くは、他者からも明確に把握できる土地や資産を課税対象とすることから徴税が行いやすく、歴史的には最も中心的な課税であったと言える[9]。言い換えると、人類の歴史の一番最初から存在していた租税だと言える。江戸時代には田畑という資産に対して課税される年貢が租税の中心だった[10]。とはいえ、資産課税の中には他者から明確に把握しづらくて徴税しづらい租税があり、1950年から1953年まで日本に導入された富裕税が典型である。貸借対照表(バランスシート)を作ってその純資産を課税対象にするので、計算の手間が非常に多く、税務当局にとって困難が多い税金だった[11]。
事業税は、資本金や出資金が1億円以上の大企業に対して、一部を外形標準課税で行っている。この場合の外形標準とは資本金のことである。ゆえに「事業税の一部は資産課税」ということができる。
消費課税は財・サービスの消費に対して課税される。消費税、酒税、タバコ税、揮発油税(ガソリン税)、関税など。
消費課税も徴税が行いやすく、歴史的に古い税である。徴税に関して事務的な能力をさほど必要としないため、発展途上国の税務署でも徴税しやすい。このため発展途上国では消費課税が中心的になりやすい[12]。逆進性が高くて貧困層への負担が大きくなるのが短所である[13]。
所得課税は収入・利益といった「ある期間を通じて稼ぎ出したお金」に対して課税される。正確には「収入」「利益」ではなく、所得税の場合は「収入」から経費を引いて「総所得」を計算し、総所得からさまざまな控除を引いて「課税所得金額」を計算してそれに対して課税するし、法人税の場合は「税引き前当期純利益」から益金算入額や損金不算入額を足したり益金不算入額や損金算入額を引いたりして「所得」を計算してそれに対して課税する。
所得課税は収入・利益を計算できる事務的な能力を多く必要とするため、徴税が難しい。史上初めて所得税を導入したのは1798年の英国で、近代国家がもうすぐ成立する頃である。発展途上国では税務署も企業も事務能力が低いので、所得課税が難しく、所得課税による税収の割合が少ない傾向にある。
控除などで所得の額を調整することができ、政府にとって細やかな政策を導入しやすいのが長所である。経済的弱者には控除をたっぷり付けて所得税の税額が減るようにしよう、という政策を行いやすい。
負担者と納税者が一致することを立法者が予定している税を直接税という。
負担者と納税者が一致しないことを立法者が予定している税を間接税という。
累進税とか累進性が強い税というのは、高所得者の収入に対する税負担の割合が高くて、低所得者の収入に対する税負担の割合が低い税制である。所得税の累進課税が例に挙げられる。
累進税でも逆進税でもない税というのは、高所得者の収入に対する税負担の割合と、低所得者の収入に対する税負担の割合が、同じになる税制である。所得税の一律課税(フラットタックス)が例に挙げられる。
逆進税とか逆進性が強い税制というのは、高所得者の収入に対する税負担の割合が低くて、低所得者の収入に対する税負担の割合が高い税制である。消費税や人頭税[14]が例に挙げられる。
「なぜ国民・住民に対して租税が課されるのか」「なぜ国民・住民は租税を納めなければならないのか」と考えることは古今東西の政治学・財政学の大きなテーマである。
機能的財政論という財政思想がある。政府には自国中央銀行が発行する通貨を自由に獲得できる巨大な権力があるので、税収を上回る政府支出を行ってよいのであり、経済に与える効果がどのようになるかを考えて政府の財政を決めるべきである、という考え方である。
機能的財政論から、租税罰金説(税金は罰金)が導かれる。税金は政府が望ましくないと思う行動に対する罰金であり、財源の確保を第一に考えて課するものでは無い、という考え方である。
機能的財政論の対義語は均衡財政論とか健全財政論と呼ばれるものである。これから租税財源説(税金は財源)が導かれる。
2020年現在の日本の官公庁や国会議員は、健全財政論(均衡財政論)と租税財源説を中心に動いている。増税するときに「増税分は、被災地復興の財源にします」「増税分は、社会保障の財源にします」と国会議員や大臣が述べることが恒例となっている。
租税財源論は、さらに2つに分けられる。
「租税は公共サービスの対価であり、人々は享受する公共サービスに応じて納税義務を課せられる」とする考え方を租税利益説という。
租税は公共サービスを維持するための義務であり、人々は各人の能力に応じて納税義務を課せられる、という考え方を租税義務説という。
使途を定めずに徴収する租税を普通税、使途を定めて徴収する租税を目的税という。
機能的財政論や租税罰金説からは「租税というのはすべてが普通税であるべきだ。目的税というのは不自然だ」という考えが導かれる。
均衡財政論租税財源説からは「目的税というのは税金のあり方の1つであり、十分に正当性がある租税だ」という考えが導かれる。
国定信用貨幣論(租税貨幣論)という通貨に関する理論がある。これは、「政府が徴税対象物と定めたものは自然と通貨になる。租税によって通貨がこの世に生まれる」といった理論である。
そして、「税務署の人員を増やすなどして徴税権力を強めると、みんなが税務署を恐れるようになり、通貨をありがたがるようになり、通貨価値が上がっていく。税務署の人員を減らすなどして徴税権力を弱めると、みんなが税務署をみくびるようになり、通貨価値が下がって通貨が紙切れのようになる」と論じていく。発展途上国の通貨が暴落して紙切れになるのは、その政府の徴税権力が弱くて税務署がナメられているからである、と論じるのである。
国定信用貨幣論(租税貨幣論)の思想は、2020年現在の世界各国で流通している不換銀行券(不換紙幣)を非常に上手く説明できるという長所を持っている。不換銀行券(不換紙幣)は金塊との交換が保証されていないただの紙切れなのに、なぜか流通している。国定信用貨幣論(租税貨幣論)なら、「政府が徴税するから、不換銀行券のような紙切れが通貨になるのだ」とごく簡単に説明できる。
本項では21世紀の日本を例にして、複数の国で所得を得る個人・法人への課税について解説する。
日本の税制というのは、個人については「日本に住所を持つ」、法人については「日本に本店を持つ」ということを重視している。その個人の国籍は全く関係がなく、その法人の構成員の国籍も全く関係がない。
X国という国があるとして、日本と同じような税制を採用していることにする。
日本に住所を持つ個人Aさんが日本国内で1000万円の所得を稼ぎ、日本以外のX国で500万円の所得を稼いだとする。その場合、Aさんに対して日本の税務署は全世界所得の1500万円に対して所得税を課税する。また、Aさんに対してX国の税務署はX国で得られた500万円所得に対してのみ課税する。
ただし、日本の税務署は、X国の税務署が徴税した税額を税額から控除する。X国がタックスヘイブンで異様に安い所得税だったら、500万円所得にかかる日本の税務署の徴税額がほとんど削られないし、X国が日本より所得税が高い国だったら500万円所得に対して日本の税務署は徴税するどころかお金を払わねばならないだろう。
法人にとっても話は同じである。
日本に本店を持つ法人Bが日本国内で1000万円の所得を稼ぎ、日本以外のX国で500万円の所得を稼いだとする。その場合、法人Bに対して日本の税務署は全世界所得の1500万円に対して法人税を課税する。また、法人Bに対してX国の税務署はX国で得られた500万円所得に対してのみ課税する。ただし、日本の税務署は、X国の税務署が徴税した税額を税額から控除する。
日本に住所を持たずX国に住所を持つ個人Cさんが日本国内で1000万円の所得を稼ぎ、日本以外のX国で500万円の所得を稼いだとする。その場合、Cさんに対して日本の税務署は日本で得られた1000万円に対して所得税を課税する。また、Cさんに対してX国の税務署は全世界で得られた1500万円所得に対して課税する。ただし、X国の税務署は、日本の税務署が徴税した税額を税額から控除する。
法人にとっても話は同じである。
日本に本店を持たずX国に本店を持つ法人Dが日本国内で1000万円の所得を稼ぎ、日本以外のX国で500万円の所得を稼いだとする。その場合、法人Dに対して日本の税務署は日本で得られた1000万円に対して法人税を課税する。また、法人Dに対してX国の税務署は全世界で得られた1500万円所得に対して課税する。ただし、X国の税務署は、日本の税務署が徴税した税額を税額から控除する。
日本の税務署は、日本に住所を持つ個人や日本に本店を持つ法人に対して、全く遠慮せずに、全世界所得を対象に課税している。
日本の税務署は、日本に住所を持たない個人や日本に本店を持たない法人に対して、ちょっと遠慮して、「日本国内で稼いだ分の所得」のみ、いわゆる源泉地所得を対象に課税している。
この方法は、日本を始めとして多くの国々が採用している[15]。
日本に本店を持たず、異様に法人税が安いタックスヘイブンに本店を持ち、インターネットを通じてソフトウェア・動画など電子的商品を日本の消費者へ売りさばくIT企業がいる。
そういうIT企業に対して日本の税務署は「この所得は日本国内で稼いだ分の所得である」と主張することができず、法人税を課税することができず、頭を悩ませている。これは日本の税務署に限ったことではなく、世界各国の税務当局にとって悩みの種である。2012年頃から国際的な議論が進められている。
日本の税金 第3版 岩波新書(岩波書店)三木義一 218~225ページ、税のタブー インターナショナル新書(集英社インターナショナル)三木義一 242~245ページ、日本経済新聞2021年6月6日記事
掲示板
449 ななしのよっしん
2024/12/26(木) 17:29:05 ID: 1suA2M0Tug
>なぜか長くなって見栄えが悪かった
元記事(business insider)だと短い(https://
からtwitterから遷移してGoogleアナリティクスのutmパラメータがついているパターンかな
そういう場合はクエリ(URLの?以降)を削ると良いっすよ
450 削除しました
削除しました ID: jUTg/VkEOi
削除しました
451 ななしのよっしん
2025/01/05(日) 13:02:28 ID: b4K4dPamFP
税制を人頭税か消費税だけにするのが望ましい
急上昇ワード改
最終更新:2025/01/12(日) 07:00
最終更新:2025/01/12(日) 07:00
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