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甲状腺とは、気管の前面にある一種の内分泌器官である。
ろ胞(濾胞)上皮細胞という細胞、それに包まれた「ろ胞」という袋、その周りにある傍ろ胞細胞が集まって構成されている。ろ胞は甲状腺ホルモンを合成し、ろ胞上皮細胞がそれを分泌、傍ろ胞細胞は骨の分解を抑えるカルシトニンというホルモンを分泌して体の働きを調整している。
甲状腺に隣接して、ヒトでは左右2対ずつ存在する「副甲状腺」という内分秘腺もあるが、直接は関係がない。
チロキシン(T4)とトリヨードチロニン(T3)という2種類があり、チロキシンは肝臓で徐々にトリヨードチロニンに代謝される。ちなみにトリヨードチロニンの方がより強力な作用を持つ。全身のほぼ全ての細胞(の核内)にある受容体に作用し、身体の代謝を亢進させる。どちらも分子内にヨウ素を含むため、その生合成過程において血中からヨウ素が取り込まれて甲状腺に蓄積することが知られている。
甲状腺ホルモンは分子内にヨウ素を含むため、甲状腺ホルモンの合成に関与する甲状腺にはヨウ素 が蓄積しやすい。チェルノブイリ原発事故で放出されたヨウ素の放射性同位体であるヨウ素131の摂取、蓄積による甲状腺がんが子供を中心に発生したことが知られている。日本でも福島原発事故をきっかけに、事故当時18歳以下だった人を対象にした甲状腺検査を福島県が行っている。
※福島原発事故と甲状腺がんの関係について考える際は、チェルノブイリ原発事故との放射性物質の放出量や食品や避難の基準となる値などの違い、事故直後の被曝状況の調査が充分でないこと、低線量被曝に依る健康被害は仮説しか無く「わからない」というのが実情であることなどを考慮するのを忘れてはならない。
自己免疫疾患の一つで、20~40代の女性に多くみられる。患者数は約1000人に一人ほど。身体が産生する自己抗体が甲状腺ホルモンの放出を促すために、甲状腺ホルモンが多量に放出される病気である。
代謝が過剰に促進されるわけなので、手足の震えや発熱、体重の減少といった症状が出る。また、Merseburg三徴と呼ばれる、眼球突出、頻脈、甲状腺肥大という特徴的な症状も見られる(必ずこの全てが出るわけではない)。
甲状腺ホルモンの産生を抑える、チアマゾールやプロピルチオウラシルといった「甲状腺ペルオキシダーゼ阻害剤」が治療に用いられるが、甲状腺ホルモンのストックが切れるまで(4~6週間)飲み続けないと効果が発現されないため、なかなか根気が要る。副作用に無顆粒球症という白血球の数が減少する怖い病気があるため、風邪のような症状が出たら病院で検査を受けるように。
また、前述のヨウ素131(ヨウ化ナトリウム)を投与して、甲状腺を直接破壊させるという治療法もある。実はアメリカでは↑のような重い副作用を避けるために、こちらがメインに使われている。日本では放射線をアレルギーの如く避ける人が多かったり規制がキツかったりであまり普及していないが、近年その規制は緩められつつある。次世代への影響を考慮して妊婦や授乳婦に対しては禁忌とされている。
バセドウ病とは逆に甲状腺のはたらきが低下する疾患。代謝低下により、知能発達の遅延や低身長といった症状が出る。クレチン病は先天性の甲状腺形成不全であり、現在は全ての新生児に対し集団検診(マススクリーニング検査)が無料で行われている。診断された新生児には甲状腺ホルモン(チロキシン)を投与することで症状の発現を抑制する。
自己免疫疾患の一種で、正確には慢性甲状腺炎という。橋本病という名称はこれを最初に発表した九州大学の病理学者、橋本策(はしもと はかる)に由来する。甲状腺ホルモンの分泌が低下することで顔面や四肢の浮腫(粘液水腫)、徐脈、皮膚の乾燥、冷え性などの症状が出る。
女性に多い病気で、予備軍も含めればその患者数は非常に多い。が、その症状が加齢によるものとよく似ているため罹患している自覚のない患者が多い。クレチン病と同じく治療にはチロキシン剤の投与を行う。
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最終更新:2024/12/26(木) 15:00
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