核融合とは、軽い原子核が融合して重い原子核になる反応である。
この記事は第31回今週のオススメ記事に選ばれました! よりニコニコできるような記事に編集していきましょう。 |
原子核には、原子核同士が引き合う力(核力)と反発する力(クーロン力※)がある。
核力は距離が離れるほど弱くなるため、通常はクーロン力の方が勝り、原子核同士が接触する事はない。しかし何らかの手段によって核力>クーロン力となる距離まで原子核同士を接近させてやると、2つの原子核が融合し別の原子核に変化する。
この反応が核融合である。
※ クーロン力とだけ言うと広義には引力と斥力の両方を意味するが、この場合は原子核同士の話であり、同じ電荷(+)を持つもの同士なので、クーロン力と言えば斥力を意味する。
核融合反応が起こると、反応の前後で質量が変化する。
ここで、軽い原子同士の核融合ならば、質量の差分がアインシュタインの特殊相対性理論:質量とエネルギーの等価性(E=mc2)に従って、エネルギーとなって放出される。核融合の結果発生するエネルギーは、高エネルギーの粒子(陽子、中性子など)やガンマ線、ニュートリノなどの形で放出される。
これを発電に利用する方法が現在研究されている。
一般的に「核融合は核分裂と違って放射性廃棄物を排出しないのでクリーンかつ有用な夢のエネルギーである」というようなイメージを持たれることがあるが、現在存在するほとんどのコンセプトの核融合炉では放射線・放射性廃棄物が生成され、また燃料として放射性物質(トリチウム)を使うものも多い。そのため、上記のようなイメージは誤りである。
また、発電炉を考える場合には核融合反応の連続的・効率的な維持や、中性子線の照射による炉壁材料やコイルの超電導導体などの劣化・放射化など、多くの問題が残っており、核融合炉実現のためにはこのような工学的な障壁を乗り越える必要がある。
何の原子核を反応させて何の原子核に変えるのかと言う分類と、どのような手段によって反応を起こすのかと言う分類が存在する。
私たちの身のまわりの物質は、全て「原子」でできていることはご存じの通りである。
この「原子」の中心には「原子核」があるが、2つの原子核をぶつけると勢いで1つに融合することがある。
原子核が融合するから核融合。
核融合反応が起きると膨大なエネルギーが発生する(組み合わせがある)ので、これをエネルギー源に利用しようというわけである。
実用化されている核融合技術として、水素爆弾がある。
「原子力」には大きく分けて「核融合反応」を利用するものと「核分裂反応」を利用するものがあるのだが、現在「原子力発電」として運用されているのは全て、核分裂反応を使った原子力である。
核分裂反応を利用した原子力は、テレビなんかでさんざん言われている通り燃料の燃えカスとして高レベル放射性廃棄物が出るのが欠点。原理上、核燃料を燃やす限り高レベル放射性廃棄物は発生してしまうのである。
しかし、核融合反応では燃料・材料の放射化共に高レベルには至らないように運転することが十分可能であるとされている。その上、制御不能に陥っても性質上暴走・爆発等を起こさない。あれ?核融合炉が実用化されればエネルギー問題解決じゃね?というのが世間一般の核融合に対するイメージである。
(ただし、現在最も実用化に近いD-T反応(下で紹介)では燃えた後の物質こそ無害なものの、反応中に中性子線が生成され、炉壁や建屋材料を放射化(放射性物質化)するため、高レベルではないものの核分裂炉よりも量の多い低レベル放射性廃棄物が出ることが予想されている。)
単純に、核融合反応を維持するのが技術的に非常に難しいのである。
極端な話、核燃料をテキトーに一箇所に集めれば始まってしまう(本当にテキトーに集めると爆発しちゃうけど)核分裂反応に対し、核融合反応は超高温・高圧状態を保ってやらないと反応が即座に止まってしまう(これは「暴走の危険が無い」という利点でもある)。現在、日本を含む世界中の科学者・技術者達が実用化に向けて努力しているが、商業利用できるレベルの炉が完成するのは当分先だろう、というのが実状である。
あと、一口に核融合と言っても、燃料や手法により様々な種類がある。下で紹介されているが、どれも一長一短。
熱とはすなわち原子ないし分子の運動が活発さを示す数値であり、温度が上昇すればするほど活発になる。
つまり、一定の空間に閉じ込めた原子の運動を活発にしてやればその分原子同士が衝突を起こす確率が高くなるため、これを利用して核融合反応を起こす事が可能である。
もちろん温度が上昇し運動が活発になれば膨張しようとする力が働くため、それを閉じ込めておくだけの圧力も必要である。逆に言えば、圧力によってどんどん圧縮していけばそれだけ温度が上昇する。
太陽を初めとした一般的な恒星は質量が非常に大きいため、中心部には自身の重力により強烈な圧力がかかる。その圧力により条件が揃い、核融合反応が発生している。
熱核融合を起こすためには1億℃と言った超高温が必要であるが、こんな高温ではあらゆる物質がプラズマ化してしまうため、物体による容器で閉じ込めることが出来ない(固体・液体の容器を利用すると、ある程度プラズマ温度が上がると容器が溶解・蒸発してプラズマを希釈し、温度を下げてしまうため、ある程度以上の温度に出来ない)。しかし、プラズマは導電体なため、磁場による仮想的な容器を作って閉じ込めることができる。代表的なものが環状のプラズマに沿う方向にコイルを使って磁場を発生させて閉じ込めるトカマク式で、磁場閉じ込め方式の中では構造が単純で大型化しやすいため最も研究が進んでいる。他にも螺旋状のコイルでプラズマを縛り付けるヘリカル式、湾曲構造を持った環状コイルを用いたステラレーター、向かい合わせた鏡のような磁場でプラズマを“反射”させて閉じ込めるミラー式などがある。
ちなみに、磁場閉じ込め方式の核融合炉で必要とされるのは数億℃・かつ大気の数万分の一程度のイオン密度を持ったプラズマで、密度という意味では実は一般的な感覚で言うと、「真空」に近い。
強力なレーザーで融合反応に必要な超高温・超高圧状態を作り出す方式。まず燃料となる重水素をプラスチックの球殻に詰めて凍結し、これに四方八方からレーザーを照射する。プラスチックの殻はレーザーの高熱で爆散し、その反動で燃料は中心に向けて非常に急速に圧縮(爆縮)される。その後のプロセスは点火、つまり融合反応を起こす方式によって二種類に分かれる。圧縮された燃料自体の断熱圧縮による熱で点火する方式(このプロセスはディーゼルエンジンに例えられる)を中心点火といい、圧縮された燃料の一部に圧縮用レーザーとは別の超強力かつ瞬間的なレーザーを照射して加熱、点火し(これはレシプロエンジンのスパークプラグに例えられる)連鎖反応で燃料全体を燃やしつくす方式を高速点火という。中心点火は主に米国で、高速点火は主に日本で研究されている。
レーザー核融合において必要とされる温度・密度は、一億度程度・固体密度の数百倍以上の密度であり、磁場閉じ込めと比較して桁違いに高密度である。しかし、燃料球自体は非常に小さい(mmスケール)なため、爆縮後の反作用で拡散してしまうと極端に低密度になる。
加速器などによって原子を加速してやり、原子を直接他の原子に衝突させる事で核融合反応を期待する手法。
運動エネルギーによって一時的にクーロン力を超えるという点では熱核融合と同じである。
違うのはそこに至るまでの過程だけで、自然界ではこの手の反応の仕方はあまり無い事である。
こちらは主に、エネルギーを利用するための核融合炉の研究と言うよりも、原子核そのものの研究において核融合反応を起こさせるために使われる。
正式名称を慣性静電閉じ込め核融合という。フィロ・ファーンズワースは発明者の名前。重水素の気体中に二重の球形のかご状の電極を配置し、外側を陽極、内側を陰極にして2万ボルト以上の電圧をかける。すると放電により陽極から重水素のイオン、つまり原子核が飛び出して内部に向かって加速し、陰極を通過してその中心で衝突、このとき核融合反応が発生する。核融合といっても、発生するエネルギーは投入するエネルギーより遥かに小さいためエネルギーを取り出すことはできない。しかし核融合反応は確実に起きており、反応に伴って中性子も発生する。このため簡易型中性子源として既に実用化されている。構造がきわめて単純なため小規模なものなら素人でも自作が可能で、実際中学生が製作した例がある。米国ではフュージョニアと呼ばれるアマチュア研究家の間でこの種の装置を制作するのが流行しており、専門のサイトも存在する。
核融合効率が低いため、主に中性子源として核物理研究などに用いられている。
物理学者ボグダン・マグリッチ博士によって発明された核融合方式。この方式では燃料は粒子ビームの形で加速器から反応装置に供給される。反応装置内部は特殊な磁場配置になっており、粒子ビームは磁場によって曲げられ装置の中を何度も周回するが、このとき一回の周回ごとに粒子ビームが必ず装置の中心部を通過するようになっている。これにより周回を重ねるごとに粒子ビーム同士が装置の中心部で幾重にも交差するようになり、このときに衝突核融合が発生する。この方式では加速器も含めた装置全体がコンパクトになるという利点があるが、問題が一つあり、それは発生したエネルギーを融合反応で生じた荷電粒子を減速器で受け止めることで回収することを前提としているため、反応によって荷電粒子のみを生じる後述のD-3He反応を前提としているということである。そのため発明者はヘリウム3が豊富に存在する月面での運用を前提にしているようだ。研究開発にはアメリカ空軍が絡んでいるため現在の開発状況など詳細は不明である。
これは厳密にはこれ単独で核融合を起こすための手法ではないし、また現段階ではあくまで理論上の存在である。
原子核はもとよりその中の陽子や中性子も自転(地球とかの自転と同じようなもの)をしているが、これを何らかの方法によって制御し、一定の方向に偏らせる(偏極させる)と、核融合反応が起き易くなる、と言う理論。
これを利用すれば核融合反応を起こす条件を引き下げる事が出来るのではないかと言われているが、まだ理論研究の段階である。
こちらもスピン偏極核融合と同じく、既存の核融合反応をおきやすくさせるための補助的な技術である。
文字通り、ミューオンと言う物質を触媒とするもの。
ミュー粒子(ミューオン)のうち負の電荷を持ったものを重水素と三重水素にぶつけると、それぞれの原子核がミューオンとくっついて一時的に電荷が中性になったかのような状態に陥る。このため他の原子核が接近してもクーロン力が働かず、核融合反応が起き易くなると言う現象が起こる。
これを利用するとそもそも重水素と三重水素をプラズマ状態になるまで温度を上昇させてやる必要がなくなるので、トカマク型炉のような大規模で大掛かりな炉を必要としないというメリットが存在する。実際、この手法を使って行われている核融合実験では重水素と三重水素が液体の状態でも核融合反応を起こしている。
しかしながら、そもそもこの負ミューオン自体が自然界に存在するような物質ではないため、これを生成するための装置・エネルギーが必要になるという欠点を持っている。
ミューオンはくっついた水素原子が核融合反応を起こすと放出されまた別の原子核とくっつくという循環を繰り返すが、ミューオン自体が一定の時間で自然崩壊して消えてしまうため、継続的に負ミューオンを与えてやらないと反応が継続しない。
現段階の技術ではミューオン1個につき最高でも150個程度の原子核を反応させるに留まっている。ミューオンの生成のためのエネルギーを差し引いた上でエネルギーを黒字にするためにはミューオン1個あたり500回は反応を起こしてもらわないと採算が取れないが、核融合反応によって生成されるヘリウムは原子核の電荷が水素よりも大きいため、水素よりミューオンとくっつきやすく、そして一旦くっつくとミューオンをまず放出する事がないため、ミューオンによる触媒効果の「限界」を作っているという問題が存在する。
理論上のものや可能性の話を入れると非常に多くのパターンが存在するが、キリが無いのでいくつか主流のものを記述する。
Dは重水素、Tは三重水素を表す。
それぞれ水素の同位体で、重水素は原子核が陽子1個・中性子1個、三重水素は陽子1個・中性子2個で構成される。
核融合反応の中で最も反応の条件が緩く、起き易いため、現在主流として研究されている反応である。
重水素 + 三重水素 = ヘリウム4 + 中性子 + エネルギー
この反応によって放出されるエネルギーは同じ質量のウランによる核分裂反応のおよそ4.5倍、石油を燃やして得られるエネルギーの8000万倍に達する。
ここで発生する中性子は、炉壁の「ブランケット」と呼ばれる領域で受け止め、各種反応によって減速させる。この時中性子の持つエネルギーはブランケット部の熱エネルギーになり、核融合炉ではこの熱によって発電を行う。
しかし、この中性子線により炉自体を放射化してしまうと言う問題が存在する。
また、原料となる三重水素が自然界には殆ど存在しない物質であるため、核融合炉内部でリチウムと中性子を核反応(後述)させ、自己生産する必要がある。
さらに、この三重水素はこれ自体が放射性物質であり、扱いが難しいという問題もある。(三重水素の半減期はとても短い(12年)ので、核分裂によって生じた放射性廃棄物に比べて物質量当たりの放射能量は増えるが、管理期間がずっとマシではある。)
現在の核融合炉研究などに用いられる三重水素は重水炉と呼ばれる核分裂炉(冷却材の水が重水素からできた「重水」である)において、重水素と中性子の融合反応によって作られたものが主に用いられている。
将来の核融合炉では、以下のような反応で三重水素が生成されることが計画されている。
※ リチウム6:原子核が陽子3個+中性子3個で構成されるリチウム。リチウム7は中性子4個バージョン。
リチウム電池のアレ。自然界では92%以上がリチウム7として存在する。
1の反応は正のエネルギーを放出するため発電効率を上昇させ、2の反応は中性子によって次の三重水素生産の反応に連鎖する。そのためブランケット部での最適なリチウム6とリチウム7の構成割合の模索がなされている。
先述の通りDは重水素の事。重水素同士の2個を反応させる。
原始的な恒星の内部で初期に起こる反応である。
この2つの反応に付随して、生成された三重水素が先述のD-T反応を起こしたり、ヘリウム3が重水素と反応してヘリウム4と水素原子核(陽子)を精製したりする反応が僅かに起こる。
見ての通り三重水素を使わない点が最大のメリットである。
重水素は比率としては0.015%と僅かではあるが自然界に普通に存在し、そしてそもそも主な水素の存在形態である水自体が自然界に無尽蔵に近いほど存在するため、重水素もほぼ無尽蔵に得られる。
デメリットとしては、この反応で得られるエネルギーはD-T反応のおよそ1/5程度である上に反応を開始するのに要する温度はD-T反応の10倍近くに達するため、現段階ではとても実用化には及ばない技術として考えられている(反応自体は実験的には成功しているが)。
普通の水素(軽水素)=陽子同士が直接核融合反応を起こすもの。
現在の太陽など、黎明期を脱した若い恒星の内部で主に起こっている反応である。
この反応は次の3段階に分かれて起こる。
※ ニュートリノ=1の反応において陽子が1つ中性子へと変化しているため、その副産物として放出される物質。
陽電子=通常の電子と逆の電荷を持つ電子。ニュートリノと同じく中性子変換の副産物だが、
普通の電子とくっついてすぐ消える。
この反応が上記のD-T反応やD-D反応と大きく異なる点は、複数の反応・粒子種が混在するために各反応の起こる頻度が低く、結果的に反応が進行するスピードが非常に緩やかとなる点である。
1の水素が重水素に変わる反応は、1つの反応が完了するのに平均して10億年もかかる。
軽水素は重水素よりもさらに自然界に大量に存在するため材料の入手性と言う点では申し分がなく、さらにD-D反応よりも放射線に関する危険性が少ない(と言うか、全くない)のだが、この通り反応の回転率が非常に悪いため、人間の尺度で測れる規模の融合炉では実用化は非常に困難というのが現状である。
Bはホウ素の事。原子核が陽子5個と中性子5~6個からなる原子である。
(中性子5個のものをホウ素10、6個のものをホウ素11。自然界ではおよそ8割がホウ素11)
見ての通り自然界に存在する物質だけで反応が構成されるため非常にクリーンである。
ホウ素自体も水素ほど無尽蔵には存在しないもののそれでも入手性は悪くなく、実用化されれば非常に期待ができる。
が、D-D反応と同じく反応を開始するための条件が格段に厳しく、実用化のメドが全く立っていない技術である。
こちらも放射性物質などを全く生じない反応である。
クリーンさに加えて、D-T反応の5~6倍程度と比較的条件が緩く、放出されるエネルギーが荷電粒子である陽子と言う形であるためエネルギー変換が非常に容易と言うメリットを持っている。
ここまでだといい事尽くめの夢のエネルギーに見えるが、原料であるヘリウム3が地球上に殆ど存在しないと言う大きな問題を抱えている。ヘリウム自体が現在既に枯渇が心配されている資源である上、ヘリウム3はその中の0.0001%程度である。
人工的にヘリウム3を生成する事は出来るが、主にリチウムに中性子線を当てて三重水素を精製し(D-T反応の下の方参照)、その三重水素がベータ崩壊を起こすのを待つという手法であるためかなり気が長い。
※ ベータ崩壊:ベータ崩壊とだけ言った場合、中性子が崩壊して陽子とその他に変化する現象の事。
陽子が1個増えるので水素がヘリウムに変わる。
なお三重水素におけるベータ崩壊は、12.5年かけて三重水素の全体数のうちの半分がヘリウム3に変わる程度の速度。
少し前にヘリウム3が月面に豊富に存在する事が明らかになり、主に中国とかがこれを最終目的とした月面探査計画を推し進めているが、月からヘリウム3を持って帰ってきて…と言うのは現段階では残念ながら絵空事と言っても過言ではないほど、実用レベルには遠い。
上記に列挙した各種核融合反応はいずれも、超高温・超高圧と言う条件下でのみ発生する現象である。
これに対し、室温程度の温度(特に指定が無い場合、1気圧程度の圧力下)で発生する核融合反応の事を一般的に「常温核融合(反応)」と言う。
1989年にある2人の学者(ボンズとフライシュマン)によってこの現象が確認されたと発表されたのが始まり。
それまでは完全な絵空事であり物理的にあり得ないとされていたが、発表の直前に絶対零度近くの極低温でしか起こらないと思われていた超伝導が常温近い温度でも起こる(高温超伝導)事が発見されており、世の中がこの手の「既存の物理法則を覆す現象」に対するブーム的な物が起こっていた事もあり、一時的に大きな期待を寄せられ盛んに研究されることになった。
上記の二人の学者(ボンズとフライシュマン)が提唱したような重水を電気分解することによる核融合反応は多くの追試の結果誤りであったとされている。これ以後も重水素を水素吸蔵合金に吸蔵させる手法などが提唱され研究が行われているが、すでに「眉唾」とする風潮が広まっており近年の研究は広く追試がなされず、コミュニティー内部での検証ばかりになってしまい、科学界全体としては無視されているのが現状である。
現在では常温核融合(cold fusion)という名前の悪印象を避けるためか、low energy nuclear reactionなど、各反応や現象ごとに異なった名前をつけて研究が行われているようである。
また、ミューオン触媒核融合は常温で起きるため、常温核融合としてカテゴライズ出来ないわけではないが、ミューオン触媒核融合を学術的な文脈で常温核融合とすることはほぼない。むしろ、「ミューオン核融合は常温核融合とは違う」と主張されることが多く、ここからも1990年代以降「常温核融合」という言葉に付与された悪印象をうかがい知ることができる。
概要の項でも書いたとおり、既に実用化が行われている核分裂反応炉と違って「放射線を出さない」と言うイメージが多い。
しかし実際は、少なくとも現在研究の主流であるD-T反応は高速中性子を放出するため放射線は出る。ただし、中性子は十分に厚い壁により遮蔽が可能であるので、放射線の漏洩リスクは低い。
「放射性廃棄物を出さない」という言われ方をする事もあるが、これもD-T反応の項にある通り、直接的な残りカスと言う形でないだけで、放射化された廃棄物は出る。
実用融合炉では放射化しにくい材料を用いた炉設計がなされるとされる。
もちろんD-T反応で無い核融合反応、例えばpB反応やD-3He反応を使った核融合炉が実現すれば、文字通り放射能を持つ物質を全く生じないでエネルギーを取り出す事が出来るため全くの嘘ではないが、少なくとも現段階では絵空事である。
核融合反応は少なくとも地球上の自然現象ではあり得ない高温高圧が必要であり、偶発的な事故によって反応が始まると言った事が原理上あり得ない。
核分裂に比べ、現段階で明確に存在するメリットと言える。
メルトダウンとも言う。
炉心溶融についての詳細は同じく核分裂を参照。
炉心溶融には冷却機能の異常によるものと反応の暴走によるものの2つがあるが、核融合においては原理上どちらのパターンも起き得ない。
核分裂と違って反応によって生まれるエネルギーと反応を開始するために必要なエネルギーが違うため、制御を誤ったとしてもその時点で反応が停止してしまうだけであり、連鎖反応による暴走を起こす事が無い。
また何らかの理由で温度が上昇したとしても、保持するエネルギーの総量自体が低いため炉壁を溶かしきる反応は起き得ない。
そもそも核融合炉では炉心はプラズマ(電離気体)であり、”溶融”(固体から液体へ)がありえないと言ってしまっても良い。
海水からの重水素精製、リチウムでの三重水素生産はすでに実用段階だが、現状はコストが高い。核融合炉が十分に普及し、需要が拡大すれば燃料費の低下が見込まれる。
どちらにしろ、D-T反応の項にあるとおり、現在目されている核融合炉の燃料は人工的に精製しないと手に入らない。
漫画・ゲーム・アニメ等にも、何らかの動力源として核融合の概念が登場する作品が多々ある。
特によく利用されるのが宇宙船の動力源であり、また、そのための燃料としてヘリウムの塊である木星もよく登場する。
ミノフスキー粒子 … きわめて強い電荷を持ち、質量が殆ど無い粒子。一定の濃度になると電磁作用によって規則正しく整列する性質を持ち、その整列によって構成されたミノフスキー粒子の「壁」はレーダーの電波はおろか核融合のプラズマさえも遮断する。
作中の世界観では90年代から2000年代初めの時代設定だが、ウィスパードと呼ばれる本来は知るはずのない技術を知る人間のおかげで特定の分野の技術に関しては現実世界よりも飛び抜けているということになっている。
主人公たちの拠点となる強襲揚陸潜水艦「トゥアハー・デ・ダナン」のエンジンにパラジウムリアクターを利用した核融合が使われているほか、作中に登場する人型兵器『アーム・スレイブ』も第三世代以降は同じくパラジウムリアクターによる核融合を動力源としている。
詳しくは「トゥアハー・デ・ダナン」や「アーム・スレイブ」の記事などを参照のこと。
漫画・アニメ『プラネテス』では月までを生存圏とした21世紀後半の人類を描いているが、この時代のメインエネルギーは月から採掘されたヘリウム3による核融合発電である。
また、宇宙船のエンジンとしても核融合エンジンが用いられており、人類初の木星往還船のエンジンに使われているのはタンデム・ミラー式D-3He核融合エンジンとされている。
なお、木星を開発する目的はやはり次なる核融合の燃料の供給地としてである。
明治時代に外界から隔離され、電力をはじめとする近代設備をほとんど持たない幻想郷にエネルギー革命を起こすため、八坂神奈子らにより核融合発電計画が実行に移された。
核融合に必要な高温を得るために彼女たちが利用したのは地底深くの旧地獄の灼熱地獄跡。そこの管理をしていた地獄鴉の霊烏路空に太陽の化身である八咫烏を融合させ、「核融合を操る程度の能力」が扱えるようにした。
しかし、力を得たお空は増長し、それが幻想郷に新しい異変を引き起こすきっかけとなるのである。
異変解決後は一応核融合を利用できるようにはなったものの、科学技術に乏しい幻想郷では核融合エネルギーでお湯を沸かしてタービンを回す行為は単なる温泉程度にしか見られていない。
上記の東方地霊殿の後日談。
地底での核融合には不完全ながら成功したものの、地底深くから電力を運ぶにはコストがかかりすぎると考えた八坂神奈子は次なる手段として地上での常温核融合にチャレンジする。
博麗霊夢が金山彦命(冶金の神様)の力を借りて作り出したパラジウム合金を使い、上記のミューオン核融合と思われる実験を行った結果、見事に成功した。
しかし、相変わらず幻想郷の住民からはお湯を沸かす技術程度にしか思われていない。
漫画『サトラレ』では考えていることが周囲に筒抜けになってしまう「サトラレ」の主人公は核融合の研究者となっている。
核融合の理論を打ち立てた主人公はエネルギー利権その他を手放したくない石油メジャーに殺され、サトラレの能力を使って同じくサトラレの実の娘に自らの理論を託した。
核融合の理論を託された娘は、その当時3歳だったため核融合の理論は理解できなかったが、ちゃんと記憶の中には残っており、成長してから理論の再構築に期待がかけられている。
題名の曲では、「核融合炉にさ飛び込んでみたいと思う 真っ青な光包まれて綺麗」というサビ部分があるが、上記の通り炉心熔融が起きない。
炉心熔融が起きない事に関して指摘があり、作者はこの曲の解説で、
という趣旨の発言をしている。
サム・ライミ版スパイダーマン2においては2000年代の時代背景で核融合発電に挑戦している。
オズコープ社の未来をかけたプロジェクト核融合発電計画はオットー・オクタビアヌス指揮のもと行われていたがデモンストレーションに失敗、オクタビアヌスは妻を失い、自らはロボットアームと融合し、ヴィラン『ドック・オク』へと変貌してしまう。
デモに失敗したオズコープ社は核融合発電計画を打ち切るが、狂気に取りつかれたドッグ・オクは計画の続行を望み、核融合に絶対欠かせない物質トリチウムを手に入れようとする。
ウェイン財閥はひそかに核融合発電の開発を進めていたが、その危険性が発覚したため計画を凍結していた。
しかし、ヴィラン『ベイン』によって核融合炉は強奪され、核爆弾に改造されてしまう。
なお、映画の中では実質的には強力な時限爆弾としてしか扱われておらず、本当に核融合炉の必要はあったのかは不明である。
人間大のロボットやサイボーグの動力源として使われる場合もある。
サイボーグ009やドラえもん、あるいは鉄腕アトムなども明確な設定としてあるわけではないが、核分裂式よりも核融合式の方がコンパクトにまとめることができると考えられるなどの理由により核融合を利用していると考察されることが多い。
明確に核融合をエネルギー源としているサイボーグとしては仮面ライダーZXなどを上げることができる。
掲示板
660 ななしのよっしん
2024/11/05(火) 00:32:21 ID: ZuB8X4NCJH
>>658
メンテの問題があるし、エネルギーとは別にクソでかいせいでレーダーを妨害するって地味なデメリットがあるんだよね
ミサイルとか戦闘機の探知が遅れるから欧州だと場所によっては拒否されるんよ
661 ななしのよっしん
2024/11/05(火) 00:39:25 ID: SzqWiUrAB/
地球外太陽光発電が夢あっていいなあと思うんだけどやっぱ打ち上げと保守コストが……
662 ななしのよっしん
2024/12/08(日) 19:38:53 ID: oWgk1kY585
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最終更新:2024/12/26(木) 15:00
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