NVIDIA(エヌビディア)とは、アメリカ合衆国の半導体メーカーである。ビデオチップ(GPU)とそれを応用した人工知能(AI)関連の製品で知られる。
1993年に台湾系アメリカ人のジェンスン・フアンらが創業。彼が現在に至るまでCEO兼社長を務めている。1990年代後半に当時の覇者、3dfxを下し、ATIテクノロジーズ(現AMD)と並ぶGPU2大メーカーの座を確固たるものとしている。
2000年代にはAMD向けチップセット「nForce」(のちにIntelにも対応)を開発し一時期高いシェアを誇ったものの、2010年に撤退した。2010年代からはARMアーキテクチャを採用したSoCに注力するようになり、スマートフォンやタブレット端末向けのTegraが一定のシェアを手にしているほか、Nintendo Switchにもカスタム版Tegraプロセッサーが搭載されている。
また、早い時期からGPUのグラフィック以外の応用--GPGPUに注力してきた会社であり、この分野ではAMDを含めた他社を圧倒的に突き放している。2012年以降の「第3次AIブーム」の波に乗って業容を急拡大したことから、「謎のAI半導体メーカー」(日経ビジネスオンライン)として、従来のPCユーザーとは違った層からも熱い注目を集めるようになった。生成 AI ソリューションでは多数のメーカーが独自チップを開発しているものの、NVIDIAのGPUが現在でも事実上の標準の座にある。2021年にはArmアーキテクチャを採用したスーパーコンピューター向けCPUのGraceを投入した。
創業~1990年代
1993年設立。1995年に、独自のライブラリーを使って3Dグラフィックを表示させる「NV1」を開発したものの、対応ソフトがセガの一部のものに限られてしまい、普及には至らなかった。そこでDirectXに対応したグラフィックチップを開発する方向にシフトする。
1997年にDirectX5対応の「RIVA 128」をSGSトムソン社と共同開発し、優れた描写速度を見せて頭角を現した。さらにその後、RIVA 128のコアを2つ搭載したRIVA TNTを経て、1999年にハードウェアT&Lにいち早く対応した「GeForce 256」を発売。これにより、一躍DirectX対応チップのトップに輝くだけでなく、当時3DゲームのスタンダードとなっていたVoodoo2を上回る性能を見せ、3dfxの独自APIからDirectXへと、3DCGゲームの流れを変えていった。
この頃までのGPU市場は群雄割拠であったが、その中にあってATIの「3D RAGE」シリーズは3D性能では抜きん出た存在ではなかったものの、充実したDVD再生支援やTV出力などの付加機能やドライバの安定性でNVIDIAの有力な対抗馬として見なされるようになっていく。
1999年の決算では売り上げが100億円を超え、NASDAQへの上場に成功した。
2000年代
2000年にATIが新たな看板製品となる「RADEON 256」を発表。従来のRAGEシリーズは3D性能でNVIDIAや3dfxの製品に見劣りしていたが、RADEONはカリスマエンジンと称するハードウェアT&Lを搭載し、名実ともにGeForceの対抗馬に成長した。「GeForce vs RADEON」の性能競争の始まりである。
2001年には3dfxが経営破綻し、その一部を買収した。 それにより、SLIなどの技術が取り込まれ、更なる性能向上を見せるようになった。
2001年にはAMDのCPUである「Athlon」向けチップセットとして「nForce」を発売、GeForceベースの高性能グラフィックチップを統合することで、AMD CPU用チップセットとして大きな売り上げを得た。2005年にはIntelにも対応した。しかし2006年にAMDがATIを買収し自社のグラフィックチップに採用したことで競合関係となり、AMD向けnForceは急激に退潮していった。さらにIntelも高性能なGPUやメモリコントローラーをCPUに内蔵するようになったため、nForceシリーズは2010年で終了。NVIDIAはチップセット市場から撤退することとなった。
2008年にARMアーキテクチャを採用したSoC「Tegra」を発売。Android採用のスマートフォン、タブレット端末のほか、Surface RTを初めとするWindows RT端末に採用された。
2006年にはGPUによる汎用計算(GPGPU)APIのCUDAを発表。2007年6月には初のGPGPU専用製品であるTeslaをリリースした。競合のAPIであるOpenCLが2008年、DirectComputeの2009年に対し先駆けており、2010年代のAIブームに乗ってNVIDIAがGPUベンダーからAI半導体メーカーに脱皮する礎となった。
2010年代
2012年、GeForce 600シリーズを発表。Keplerアーキテクチャーを採用し、それまでの高消費電力のイメージを払拭し、消費電力対パフォーマンスでRADEONを打ち破ることに成功した。
2013年、GeForce 700シリーズへと移行。GPUクロックを自動上昇させるGPU BoostがVer2.0になったことで電力効率がさらに上昇し、再びAMDをリードしている。
2014年、ナンバリング(800シリーズ)を飛ばし、Maxwellアーキテクチャー採用の900シリーズを発表。ノート向けグラフィックではナンバリング通り「800M」シリーズが出ていたが、後に「900M」シリーズも登場した。
2016年、900シリーズの後継となるPascalアーキテクチャー採用の10シリーズを発表。ノート向けグラフィックは「1000M」シリーズが発表された。
2020年代
2020年9月14日にソフトバンクグループ傘下のArmの買収を発表した。Armは世界中の名だたる半導体メーカーにCPUをライセンスしているメーカーであり、米国や英国、EUの規制当局が独占への懸念を示したため、この買収は結局成立しなかった。
2021年にArmベースのCPU「Grace」を開発し、サーバー向けCPU市場に参入している。
最近(RTX3000シリーズ以降)は中途半端にVRAMと性能の異なるグラボを出しまくり、少々分かりにくくなっている。
(RTX3060ti 8GB RTX3060 12GB RTX3060 6GB etc・・・)
なんか2023年後半に中国向けにRTX4090のカスタム品をアメリカにバレないように売っていたとか
- 9600GT 128bit混在(2010)
- 9600GTの性能を下げて補助電源を不要にした「Green Edition」として販売・流通したものの中に、同じ値段でありながらROPユニット数を8基に、メモリクロックのバス幅を256bit → 128bitに削減した粗悪品が混ぜられていた。しかもパッケージ上では区別がつけられないというものだったため問題となった。なお、NVIDIAはこの件に関して公式プレスを出していなかった。
- GTX970 性能低下(2014 ~ 2015)
- GTX970が発表された後の2014年10月~11月くらいから各所で話題になったもので、「グラフィックのメモリ使用量が3.5GBを超えるとフレームレートが急激に低下する」というものである。Steam掲示板、およびGeForce.com掲示板にもその話題が飛び火しており、複数のメディアに記事が載せられ検証が行われた。
- 2015年1月24日に出たNVIDIAの公式見解によると、「GTX970は、GTX980に比べてメモリのクロスバー接続が少ないという制約があるため、メモリ管理を3.5GBで区切っている」とのこと。そのため、「3.5GB以上のメモリ使用が起きた場合、GTX980よりも大幅に性能が低下する」というのが原因とした。しかし、「GTX970とGTX980のメモリ周りの仕様は同等である」としていながら、実際には980よりも仕様スペックが低いことを隠したまま販売していた」として問題になった。
GeForce RTX 4090は1口で最大600Wまで供給が可能な『12VHPWR』と呼ばれる新しい電源コネクターが採用されている、reggie_gakil氏がRedditに投稿された写真では、8ピンから12VHPWRへ変換するケーブルと電源コネクターの両方が炎に包まれて溶けていたようだ。reggie_gakil氏によると、『レッド・デッド・リデンプション2』をプレイ中にNVIDIA GeForce RTX 4090が発火し、グラフィックカード側の電源コネクターや電源ケーブルが焼損したと報告している。焼損したRTX 4090はRMA(保証返品)を行うとしており、詳細についてはまだ明らかにされていないNVIDIAは12VHPWRケーブルを曲げたり、ケーブルに過度のストレスを加えたりすると、異常な温度につながり、このような問題を引き起こす可能性があると注意喚起している。PCケースのサイドパネルを閉じるためにケーブルを何度も曲げる必要があるが、ケーブルを曲げると発火する可能性がある。さらにツイッターユーザーのVectral555氏も別のグラフィックカード(ASUS GeForce RTX 4090 TUF Gaming OC)で同じ問題が発生したことを報告している。この発火・溶融の原因は、8-pin×4→12VHPWR変換コネクタにあるとされています。
製品
- GeForceシリーズ
PC向けGPUの主力ブランド。
1999年に発売したジオメトリエンジン搭載のGPU「GeForce 256」よりこのブランド名を使用。
一部のハイエンドモデルは複数のGPUを並列で使用する「SLI」技術によって性能を高めることが可能であるが、チップセットやマザーボードの対応も必要である。最近は陰の描写や鏡の反射とかをリアルにする「レイトレーシング」を搭載している。(Ray Tracing、レイ・トレーシングである。late racingではない) - Quadroシリーズ
GeForceに、ハードな業務用途に耐える安定動作とOpenGLでのパフォーマンスを引き出すセッティングをしたもの。OpenGLでは同世代・同グレードのGeForceの十倍程度と圧倒的な速度だが、価格も相応の強気設定になっている。 - Teslaシリーズ
HPCおよびデータセンター向けGPU。GeForceを汎用計算でのパフォーマンスを引き出すセッティングをしたもの。PCIe版とNVLink版があるが、NVLink版は同社の専用システム「DGX-1」のみに搭載されている。 - nForceシリーズ
チップセットのブランド名。AMD・Intelの両プラットフォームに展開していた。
オンボードビデオを内蔵する製品ではノースブリッジに上記のGeForceシリーズの機能を取り込んでおり、比較的高いグラフィック性能が得られる。AMDプラットフォームでは一時期事実上のスタンダードであったが、AMDが買収した旧ATI系のチップセットを積極展開するようになった後は失速し、2010年始めにチップセット事業から事実上撤退した。 - Reality Synthesizer(RSX)
PS3に搭載されているGPU。DirectX9.0c世代のGeForce 7800GTX(G70)をベースに、一部機能を削除してコストを抑えたもの。 - X-GPU(X-Chip)
無印Xboxに搭載されているGPU。何気にプログラマブルシェーダやHD出力に対応している。
なお、これの開発にあたりマイクロソフトとNVIDIAの間に一悶着あったらしく、その結果、現行機Xbox360に搭載されているのはライバルのATI社が開発したGPUである。 - Tegraシリーズ
コンピュータ機器に必要なCPU・メインメモリ・GPU・I/O制御系等の機能をワンチップにまとめた、所謂SoC。CPU部分はARMアーキテクチャのものをベースとしている。
2~4コアのARMアーキテクチャCPUや1080p対応の動画エンコーダ・デコーダ等を搭載し、尚且つ「必要な回路のみ電源投入する」方法により「数年前のハイエンドPC並の性能を携帯機器に与える」ということを可能にした。
国内外のAndroidタブレット端末で多数採用例があるほか、マイクロソフト社の携帯音楽プレーヤー「ZuneHD」にも搭載されている。
このほか、カスタム版が任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」にも搭載されている。
技術
- CUDA
NVIDIA GPU専用の統合開発環境。GPUによる汎目的計算(GPGPU)のためのものである。開発言語はC言語とC++だが、PythonやJavaなどのバインディングもある。 - Cg
NVIDIAがC言語を独自に拡張した、GPUのプログラマブルシェーダーのためのシェーディング言語である。OpenGLとDirect3Dの双方に対応していた。CUDAの登場によりサポートは終了している。
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