マリノ(Marino)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。フルネームは不明。
概要
自由惑星同盟軍の艦隊士官。第13艦隊旗艦<ヒューベリオン>艦長としての初登場以来、一貫してヤン艦隊に所属した。石黒監督版OVAでは浅黒い肌の黒色人種で、昇進して分艦隊指揮官となった後の旗艦は<ムフウエセ>。「Die Neue These」では白人の中年男性として描かれる。
「艦長としての有能さと艦隊指揮官としての有能さは、かならずしも同質ではないが、彼はその双方をかねそなえていた」と評される豪勇な性格の武人で、艦隊の先陣や伏兵指揮など、ヤンが少数の部隊でかつ強力な打撃を与えたい場合にたびたび抜擢されその信任に応えている。
いわゆる「ヤン・ファミリー」に含めるには艦隊主要部との関わりに乏しいが、しかしヤン・ウェンリーの戦いを述べるにあたっては欠かすべからざる部下の一人であった。
戦歴
マリノは、「銀河英雄伝説」の本編中において戦艦艦長から昇進して分艦隊司令官となった数少ない例である。物語上のカウンターパートにあたる帝国軍総旗艦<ブリュンヒルト>の艦長、ジークベルト・ザイドリッツは大佐から准将に昇進しているが、これは皇帝の旗艦の艦長を務めるという格式上の事情によるものであった。
<ヒューベリオン>艦長時代
原作での初登場は第一巻黎明篇・帝国領侵攻時。当時の階級は大佐。いわゆる「アムリッツァ前哨戦」においてカール・グスタフ・ケンプの攻撃を受けた際、旗艦の艦長として、敵ミサイル群の接近に対し囮を射出するように指示している。
石黒監督版OVAではやや登場が早く、イゼルローン要塞攻略作戦のため第13艦隊がハイネセンを出立するシーンが初登場。ハイネセン地表からのシャトルで乗艦したヤンら艦隊幕僚陣を出迎えている。<ヒューベリオン>の艦長席はヤンの司令卓と同一床面上、右側にあるため、その後要塞攻略戦の最中にも艦橋遠景にその姿を見ることができる。
アムリッツァ星域会戦の後、イゼルローンがガイエスブルク要塞による攻撃を受けるまでの間に准将に昇進。<ヒューベリオン>艦長の席をアサドーラ・シャルチアン中佐に譲った。OVAでは救国軍事会議のクーデター鎮圧時まで<ヒューベリオン>艦長席に座っており、その後の昇進となっている。
ヤン艦隊の分艦隊司令官として
ガイエスブルク要塞戦・第九次イゼルローン要塞攻防戦での登場は無く、次なる登場はバーミリオン会戦を待つことになる。ただし、石黒監督版OVAではヤンがイゼルローンの放棄を発表した際の会議などに分艦隊司令官のひとりとして顔が見える。
バーミリオン会戦では先陣を切って帝国軍に突入し、「大昔のペチコート」を何層にも渡って浸透突破した。また、原作では記述がないものの、戦況の大転換となったヤンの囮作戦で2000隻の囮部隊を指揮したのも石黒監督版OVAではマリノの役目になっている。この時彼は「敵を戻らせるな!」と部下を叱咤、牽引していた隕石群を切り離して帝国軍に撃ちこむと自らも突入し、同盟軍本隊を横撃せんとする帝国軍本隊の後方を厄してヤンの包囲網の一翼を担った。
バーミリオン会戦後にヤン艦隊が解体された後に何処に所属していたかは不明だが、回廊決戦で再びその姿が見えることからヤンのハイネセン脱出かエドウィン・フィッシャーらの譲渡部隊5560隻のいずれかと行動を共にし、再びヤンの指揮下に入ったものと思われる。
回廊決戦でもマリノは打撃力を必要とする伏兵部隊の指揮に当たった。特に5月6日、彼の分艦隊はヤン、メルカッツ、アッテンボローというヤン艦隊本隊が帝国軍左翼を集中攻撃して帝国軍の集中が左翼に注がれた隙を狙って帝国軍本隊を衝く役目を担う。この時彼は「生きて華麗なる皇帝を、もっとも華麗に葬ってやるぞ」と豪語すると、「雷光が避雷針に落ちかかるような勢いと速度で」帝国軍本隊に向け突撃し、一躍<ブリュンヒルト>を撃沈せしめんと進撃した。この突撃自体は戦力において圧倒的なカール・ロベルト・シュタインメッツによって阻止され、マリノ分艦隊は30分の交戦で麾下の四割を失う損害を受けたが、そこに帝国軍左側からヤン艦隊本隊が突入、<フォンケル>を撃沈させ、幕僚総監であるシュタインメッツを戦死させる結果となっている。
彼とその分艦隊は後半戦でも活躍し、ヤン艦隊の分断を試みたエルンスト・フォン・アイゼナッハの左翼に猛攻撃を仕掛けた。この時その艦隊主要部にまで突破口を開けて旗艦<ヴィーザル>にまで迫り、結果的にアイゼナッハ艦隊を撤退せざるを得ない状況に追い込むことに成功した。
その後回廊の戦いの終盤においてフィッシャー中将が戦死したため、マリノが後任としてヤン艦隊の再編と運用の責任者に任じられた。しかし、いかにマリノが有能といえど、こと艦隊運用に関するフィッシャーの才能には及ぶべくもなく、ヤンは以後少なくとも短時日の間に再戦するとして以前のような戦いが出来る自信を持てなかった。これはヤンが皇帝ラインハルトの会見申し入れを受ける理由の一つにもなった。
ヤン暗殺後の「八月の新政府」にも参加しているが、以前のような伏兵・突撃任務から艦隊運用に職務が変わったためか、登場はごく少ないものとなっている。イゼルローン軍の一員として参加したはずのワーレン艦隊戦、シヴァ星域会戦でも活躍の描写はなかったが、シヴァ星域会戦の後にユリアン・ミンツらとともにイゼルローン軍の残兵をハイネセンまで統率し、ユリアンらがラインハルトに同行してフェザーンに向かった時にも留まって残存イゼルローン軍の管理と解体に当たったことが記されている。
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