武田信繁単語

• 1.武田信繁（安芸武田氏　1390-1465）
• 2.武田信繁（甲斐武田氏　1525-1561/10/18）
• 生涯
• 後世の評価
• 信長の野望における信繁
• 関連動画
• 関連項目
• 掲示板

「武田信繁」（たけだ・のぶしげ）とは、

1. 安芸武田家4代当主。
2. 甲斐武田家の一族。武田信玄の弟である。

1.武田信繁（安芸武田氏　1390-1465）

2代当主・武田信在の次男で、3代当主・武田信守の弟（信守の子ともいわれる）。子に武田信栄、武田信賢、武田国信、武田元綱らがいる。

安芸分郡守護として佐東郡・安南郡・山県郡を統治していた。6代将軍・足利義教に命じられて九州や大和を転戦。これらの働きを通じて、長男・武田信栄が義教に気に入られるようになる。

1440年、有力大名の勢力削減を狙っていた義教は、信栄に密命を下し、若狭・丹後を治める一色義貫を暗殺させた。この成功で信栄が若狭守護に任じられるが、その直後、急死してしまう。

これを受けて信繁は次男・武田信賢に安芸武田氏の家督を譲るとともに、信栄遺領の若狭も継がせた（2ヶ国守護というか1ヶ国半守護状態）。ただ、信賢は新しい領地である若狭の経営に携わる事が多かったので、信繁も隠居ながら代官として引き続き安芸の支配を担当している。信賢は1471年に死去し、その後は三男・武田国信が継いでいる。

上記の出来事から安芸武田氏の本拠地は若狭に移り、若狭武田氏として生まれ変わることになった。（ちなみに蝦夷松前の蠣崎氏の祖である蠣崎信広（武田信広）は、武田信賢の子を称している）

一方信繁は1447年・1457年とたびたび大内氏に攻め込まれるも、安芸国人の助けで守りきり、独立を保っている。応仁の乱勃発直前の1465年に死去し、安芸の代官は四男・武田元綱が継いだ。

その後

上述の通り、こうして安芸の所領は若狭武田氏の飛地となった。が、応仁の乱のすったもんだの中で元綱は独立を企み、若狭の本家を無視して勝手に行動し始める。そのため、元綱以降は新たな「安芸武田氏」が誕生してしまう。ややこしい。

2.武田信繁（甲斐武田氏　1525-1561/10/18）

名高き名将、武田信玄の実弟（同母弟）にして、甲斐武田軍の副将を長年務めた。武田二十四将の１人でもある。

自身もまた仁愛と知勇に溢れた名将として知られ、後世の軍記物では『典厩（てんきゅう）』とも呼ばれる。（典厩とは、馬寮の長官を務める役職の唐名で、和名で言う左馬頭・右馬頭のこと。）

兄・信玄からの信頼を得た『まことの武将』だったが、1561年（永禄４年）の第４次川中島の戦いで戦死。その死は武田家にとって大きな損失となり、同家滅亡の遠因になったとも言われる。

生涯

武田の副将として

1525年（大永５年）に、甲斐国主・武田信虎の次男として生まれる。初名は次郎。母は、兄・晴信（信玄）と同じ大井夫人で、晴信とは４歳違いだった。
次郎はその容姿と風格、そして器量と従順さを信虎に愛されたとされ、晴信を差し置いて新年の杯を１番目に受けるなど、寵愛されていた。初陣の時期は定かではないが、少なくとも信虎時代には甲斐甲府で留守居を命じられていたため、戦陣へ出る機会はなかったとされている。

父・信虎は利発で自己主張の強い信玄を疎み、彼を廃嫡して信繁を次期当主にするつもりだったと言われている。これに反発した信玄は1541年（天文１０年）に信虎を計略にかけ、今川義元の下へ追放する。この際、信繁は自身を信頼してくれている父と兄の間で板挟みとなったが、結局信玄に味方し、信虎追放に一役買った。（これらは『甲陽軍鑑』の記載に依る。）
信虎追放後、甲斐武田家の体制刷新の動きの中で、信繁は新当主となった信玄の次弟として、自然とその地位を高めていった。（信玄の家督相続時、信繁は穴山信友と共に御親類衆として、家臣団名簿に名を連ねている。）

信玄は国内体制を固めると、信虎が途上で放置していた北信濃への侵攻作戦を再開する。信繁は宿老の板垣信方と共に武田軍のツートップとなり、1542年（天文１１年）の諏訪攻めで前線の主導権を握った。また諏訪郡の平定後は信方と共に統治と鎮定に携わり、同地の民心の安定に一役買ったとされる。
また、1545年（天文１４年）には、反逆した高遠頼継を討伐。更に前後数年で、大井氏や藤沢氏といった北信濃の有力豪族を次々と下していった。
信繁は合戦の指揮だけでなく、平定した占領地の統治や民心慰撫といった内政や諸大名・豪族達との外交折衝をも担当していたとされ、軍事面・政治面共に信玄の右腕として活躍していたことが判っている。（そのため、占領地の暫定統治などを除いて、特定の居城や領地は持たなかった。）

1551年（天文２０年）には、信濃最後の強豪として知られる村上義清の籠もる砥石城を攻め落とし、武田家による信濃支配を確立させることに成功した。（だがその前年には砥石崩れという惨敗を喫しており、武田二十四将の１人だった横田高松が戦死している。また、信玄と信繁の良き理解者だった板垣信方も、これに先立つ1548年の上田原の戦いで甘利虎泰と共に討ち死にした。）
だが、義清は更に北方へと落ち延び、越後の上杉謙信を頼る。謙信は武田家の行動を脅威に感じ、信濃へと出兵してくる。軍神と後世謳われる謙信の軍配と、精強な上杉軍の来襲に、武田軍の信濃支配は揺らいでしまう。信繁は北信濃戦線の専任指揮官として、北信濃・川中島を舞台に上杉軍と戦い続けることになる。

第四次川中島の戦い

1561年（永禄４年）、武田軍と上杉軍は川中島にて４度目の衝突を迎える。（以下の記述は、全面的に『甲陽軍鑑』の記述に則ったものになります。）

武田軍（兵力：２万人）は妻女山上に陣取り、動かない上杉軍（兵力：１万３０００）を下山させるために、『啄木鳥戦法』と呼ばれる別働隊を使った挟撃策を敢行。１万２０００の兵を別働隊として妻女山後方へと回らせ、本隊８０００は信玄の居る本陣手前に陣取った。信繁は副将として、本陣前を守る。
だが、戦巧者である謙信はこの作戦を看破。別働隊が妻女山山頂へ到達する前に下山し、素早く武田軍本陣前の千曲川へと布陣したのである。夜明けと共に、両軍は戦闘状態に入った。

信繁の守る武田軍本陣の兵は８０００。対する上杉軍は、妻女山麓に抑えとして１０００を残してきていたが、それでも１万２０００と優勢であり、まして謙信が直々に指揮をしていた。いくら勇将として知られた信繁でも、これを押し返すことは難しかった。
武田軍本陣部隊は鶴翼の陣を敷き、上杉軍の車懸りの陣に対抗するが、数的劣勢は覆しがたく、山本勘助や諸角虎定といった名将が次々と討ち死にしていった。信繁は覚悟を決め、別働隊が千曲川流域へと到達するまでの時間稼ぎと称して、自ら槍を持って死地へと出向いた。その際、彼は家臣・春日源之丞に「長老丸（信豊）の事を頼む」と言い残し、愛用の母衣を渡したという。数刻後、武田軍の別働隊がようやく到着して上杉軍の後背を突き、優勢を取り戻した。だが、そこに信繁の姿はなく、既に討たれた後だった。享年37歳。

信繁を討ったのが誰かは定かでないが、信繁の忠臣だったと伝わる山寺左五左エ門という男が、信繁の首を上杉軍から取り戻したという。兄・信玄は信繁の遺体を抱き寄せて大泣きし、信繁を慕っていた飯富昌景（後の山県昌景）もまた「惜しんでもなお惜しむべし」と、その死を悔やんだ。
信繁の遺体は、それぞれ胴を八幡原（現在の典厩寺）に、そして首を小諸城（城主は信繁の子・信豊）へと持っていき、その地で埋葬したという。

信繁の死後、武田軍の副将の座は、武田四天王の１人である内藤昌豊が引き継いだ。また、信繁の異名だった『典厩』の名も、息子の信豊に引き継がれる事になる。

後世の評価

信玄には、現在確認されているだけで８人ほどの弟が居たが、中でも特に評価が高いのがこの武田信繁である。戦場での武働きもさることながら、文人・行政官僚としての功績も多数残している。
特に名高いのが『武田信繁家訓九九箇条』の編纂である。信玄によって制定された有名な甲斐国分国法『甲州法度之次第』はこの信繁の家訓をベースにしているとされており、信繁の文書は遙か後世の江戸時代の武士や儒学者に愛読され、『まことの武将』と謳われた。

名高い名将だっただけに、川中島で戦死した事を悔やむ者は多く、一説では敵だった上杉謙信からもその死を悼まれたという。また、信繁の死を特に強く悲しんだ山県昌景は、信繁の事を内藤昌豊と共に「万事よく整え、こなす事のできる素晴らしい副将であった」と評している。
武田信玄の近習として仕えていた武藤喜兵衛昌幸（後の真田昌幸）は、信繁の武徳にあやかろうと、次男に『信繁』と名付けている。彼が、後に大坂夏の陣で勇名を馳せる真田幸村である。

また一説には、信繁の事をむざむざ死なせてしまった事で、信玄とその嫡男・義信の関係が悪化したとも伝えられている。元々、遺伝のように家中不和の種が絶えなかった武田家において、その緩衝役としての役割も果たしていたのであろう信繁を欠いたために、武田家の潜在的な不和が再燃してしまったのかもしれない。
義信は信玄によって蟄居を命じられ、幽閉され廃嫡される。新たな後継となったのが四男の武田勝頼だったが、この際に生じた家中の不和は後年に至るまで後遺症のように長く残り、信玄死後の武田家に悪影響を及ぼしていく事になる。そう考えると、信繁の死は武田家の滅亡を暗示していたとも言えよう。

信長の野望における信繁

「信長の野望」（PC）シリーズにおける武田信繁（甲斐）の能力一覧。

全てのパラメータが高く、使いどころを選ばないオールラウンダー。ただ、武田家には優秀な武将が腐るほどいるために目立たない。悪く言えば器用貧乏といった印象である。天道では、やや弱体化した。

関連動画

関連項目

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