この記事は「JRC蘇生ガイドライン2015」に準拠し作成されています。次回のガイドライン更新は2020年になりますが、途中で更新された場合は適時編集のご協力をお願いいたします。 |
心配蘇生法とは心臓の止まった人に対して行う一連の救助活動のことで、当記事ではCPR (CardioPulmonary Resuscitation)と表記する。
概要
基本
あなたは、10分間のブラックジャックになれるのです。 |
-
胸骨圧迫
「強く、早く、絶え間なく!」
ひたすら胸骨をリズミカルに強く早く絶え間なく押し続けるだけですが、かなりハードです!ちなみに100BPMというとこれ位の速さ。かなり速いのが分かると思います。
関連動画も参考にしてください。
- 胸骨圧迫の深さは5cm~6cmの間です。ただし、そんなの正確にできるかといえば、できないことがほとんどです。浅いと意味は全くないので極論を言うと「胸骨を折ってでも生かすか、浅すぎて死なせるか考えてみろ」ということになります。玄人でもたまにやるし、胸骨折っても治せるから恐れるなって。
- 腕を上げたときには胸の位置をしっかりと元の位置に戻します。これをちゃんとやらないと心臓を動かしきれません。また腕が跳ねて手を胸から離すこともしてはいけません。
- 人工呼吸をはさんだり、AEDを装着する際など手を離す時間がありますが、その時間は最小限にします。最大でも5秒以内であることを強く推奨します。
- 呼吸の判断に迷ったら、胸骨圧迫を最優先してください。
- 胸骨圧迫はされるとめちゃくちゃ痛いです。胸骨圧迫をしても何も反応がない場合は間違いなく緊急事態です。
なお、胸骨圧迫を行うだけでも蘇生する希望がかなり見えます。むしろこれをしておかないとブラックジャックでも治せません。
CPRを行う意義
CPRはとても市民でも行えるとても重要で大切な行為です。心停止の状態で速やかに心肺蘇生がなされなかった場合、救急車呼んだとしても生存率の低い、ほぼ死体を運ぶのをとほとんど変わりません。救急車が到着するまで平均で約7.5分かかります。むしろそれ以上かかると思ってください。心停止7分後の救命率は、何も行わなかった場合約30パーセントとなってしまいます。(生存率は心停止から1分ごとに10%下がります)。
しかしながら文章で読んでも、身体が思い通り動くとは限りません。むしろ動きません。もしこの記事に興味を抱いた方は消防庁・赤十字社・各種イベントで行っている救命講習をぜひ受講してください。時間を割く価値のある内容ですし、実際に講習を受けていただいたほうが絶対身になります。
ここで書いてある小難しいことはすべて身体で覚えられます!
また講習では必ず「救命の連鎖」という言葉を耳にするかと思います。「心停止の予防」「早期認識の通報」「一次救命処置(BLS)」「二次救命処置(ALS)と心拍再開後の集中治療」です。これらが正しく連鎖することによって傷病者の社会復帰がなされるのです。
成人の場合
- 傷病者発見
人が倒れるのを発見した、あるいは倒れている人を発見した状況です。 - 安全確認
周りの安全を確認します。CPRをする人とされる人の安全を確認し、安全でなければ安全な場所まで移動します。 - 呼びかけ(反応の確認)
両肩を軽くたたき(片方だと麻痺している場合もある)耳元で「大丈夫ですか?」と3回ほど呼びかけます。最初は小さめ、最後は大きめの声で呼びかけます。 -
人を集める
自分がリーダーになって以下を依頼します。
- 呼吸の確認(傷病者が「普段どおりの呼吸」をしているかどうかを確認します)
胸と腹部の動きがあるか確認します。呼吸の確認に10秒以上かけないようにします。 - 胸骨圧迫(と可能であれば人工呼吸)
ひたすら100BPM~120BPMで胸の真ん中を両手で5cm~6cm押してしっかり戻します。最初の胸骨圧迫は衣服をつけたままでかまいません。
人工呼吸を行う場合は胸骨圧迫30回に対し、迅速に2回行ってください。1回失敗しても1カウントとします。2回失敗すれば、人工呼吸を2回行ったものとし、胸骨圧迫をただちに再開してください。 - AED
AEDが到着したら上半身の衣服をはだけ、パッド(シール付電極)を右肩と左腰に貼って充電完了したら自分を周りの安全を確認してショックボタンを押します。 - ループ
この後は救急隊員に引き継ぐまで胸骨圧迫(と可能であれば人工呼吸のセット)を続けます。AEDの指示に従って続けてください。疲れたら次の人に交代です(AEDの心電図解析・ショックなどをはさむタイミングで交代するとスムーズです)。くどいようですが体力勝負です。疲れてくると押しが弱くなるのでどんどん交代しましょう。 - 救急隊員に引き継ぎ
救急車が到着したら救急隊員に引き継ぎます。その際AEDは傷病者につけたままにし、AEDと一緒に渡します。また消防隊員から救助に関することを聞かれますので、行ったことはすべて報告します。
小児(1歳~思春期(15歳程度)まで)の場合
基本は成人と同じですが、以下が大きく異なります。が、本当はもっと細かく違うのと人工呼吸は結構難しいので確実に講習を受けてください。
乳児(1歳未満)の場合
基本は成人と同じですが以下が大きく異なります。実際はもっと細かく違いがあります。人工呼吸はかなり難しいので講習を必ず受けてください。
死戦期呼吸(あえぎ呼吸)
呼吸の中には死戦期呼吸と言われる一見呼吸していそうですぐにでも止まってしまう呼吸、ただちに心肺蘇生を行いましょう(「普段通りの呼吸」ではありません!)。こういうような呼吸を見たら呼吸の判断にもたつくより速やかに胸骨圧迫から行います。
関連動画
だいたい100BPMの歌
100BPMの歌をいくつか覚えておくと、歌にあわせて胸骨圧迫ができます。
CPRと法的責任
「CPRを行い、救命に失敗/後遺症を残すと法的な責任を問われる恐れがある」「CPRを行うと痴漢に間違われて逮捕される恐れがある」という俗説がある。このような事例があったという報告は今のところないようだが、「半分本当で半分嘘」というのが正直なところである。
本当の部分は「恐れがある」の部分である。今のところ「訴訟を禁止する法律」は存在しないので訴訟を起こされる恐れは否定できない。アメリカの場合は「善きサマリア人の法」という法律があり「応急処置で法的な責任を問わない」とされているのだが。
嘘(もしくは可能性が非常に小さいと思われる)部分は「訴える人がいる」「訴えられた負ける」の部分である。理由は「一般人が行う救命処置にそれほどのレベルは要求されないから」である。
医者ですら「最善の処置をして逮捕された事例(福島県立大野病院事件)」や「東日本大震災後のトリアージで訴訟を起こされた事例(石巻赤十字病院)」があることを踏まえると、「俗説が嘘」とはとてもではないが言い難い。世知辛い時代になったものである。
関連商品
関連項目
- ニコニコ大百科:医学記事一覧
- 一次救命処置(BLS)
- 心肺蘇生法(CPR)
- 2
- 0pt