俳優の吉沢亮さんの泥酔トラブルで「スポンサー企業の対応」が注目を集めています。アサヒビールをはじめ次々とCM起用をキャンセルする“降板ドミノ”が勃発する中、アイリスオーヤマが吉沢さんを継続起用する旨の声明を出したのです。この決断の意味を経済の視点から解説します。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
吉沢亮氏「泥酔トラブル」で降板相次ぐ
アイリスオーヤマは「継続起用」を表面
昔、こんなことがありました。夜遅く、自宅マンションのベルが鳴ったのでドアを開けたら、見知らぬ酔っ払いのおじさんが玄関に入ってきました。外見は大企業の部長風で、眼鏡の奥の眼はすわっています。
おじさんは私の顔を見るなり、「なんだ、お前は!」と不機嫌そうに怒鳴ったので、私はとっさに、「すみません」と頭を下げました。
直後におじさんは「うちじゃないのか。ちっ」と舌打ちをして出ていきました。まだ私が20歳そこそこの頃の話です。
同じマンションのエレベーターの階を押し間違えたのでしょう。ただ、もしその時そのおじさんが、むっとした顔で無言で玄関脇のお手洗いに入っていったら、さすがに私も110番に電話していたと思います。
俳優の吉沢亮さんが泥酔して、同じような事件を起こして警察沙汰になりました。大河ドラマで渋沢栄一を演じたり、映画『キングダム』シリーズで主役のひとりの政(後の始皇帝)を演じている旬な俳優さんです。
プライベートでは酒好きを自負していた吉沢さんですが、事態を重く見たスポンサー企業は次々と吉沢さんの起用をキャンセルしました。中でも痛手だったのはCMに起用していたアサヒビールでしょう。泥酔で事件はビール会社にとっては洒落になりません。
一方で、同様に吉沢亮さんを会社の顔として起用してきたアイリスオーヤマは声明を出して、引き続き吉沢さんを起用するという決断を表明しました。今回の記事では経済の観点からその意味を解説したいと思います。