成績「上下15%の子」の能力は本当の意味で生かされていない

 教育環境が変化する中、教育現場の思想が変わっていないことは大きな問題です。時代に合わせて教育の在り方も変化させていく必要があると思います。

 特に問題なのは、従来の日本の教育システムのままで、前述したようなアベレージ教育を続けると、通常の4教科の成績で「上位15%」と「下位15%」の子どもたちの才能や個性が十分に生かされないままになってしまうことです。

 勉強に限って見た場合でも、勉強が得意な子から不得手な子まで、40人を一つのクラスに集めて教育することは、子どもたちにとって本当に幸せなことなのでしょうか。成績上位の子が成績下位の子を知ることは社会の仕組みを学ぶ上で重要だという意見もありますが、クラスの中で、成績の上位と下位を混ぜることが、本当に社会の縮図と言えるでしょうか。

 むしろ、下位の子たちが上位の子たちのスピードについていけずに苦しんだり、かたや、上位の子たちは本当はもっと学ぶ意欲があるのに、下位の子たちの進度に合わせることで、せっかく勉強しようという意欲をそがれてしまったりする可能性もあります。

 お互いの能力を最大限に伸ばすためには、それぞれのレベルに合ったクラス分けをして、必要に応じて交流の場を設けるという方法があってもいいのではないでしょうか。

 これはなにも公的教育の場に限った話ではありません。今、大手の学校や塾では、様々な特性を持つ子どもたちを十分に見られなくなっています。それで個人塾や、個別指導学習塾には、4教科(国語、算数、理科、社会)の成績のバランスがよい子ではなく、成績に「でこぼこ」がある子が集まりやすくなっています。

 ある分野では非常に優れているが、別の分野は大の苦手というケースです。従来の4教科による評価では、このような子どもたちも4教科の平均値でランクづけされるため、各自が持つ、得意分野や才能を正しく評価されることがありません。

 上位15%の子どもたちは、「落ちこぼれ」ならぬ「浮きこぼれ」状態です。彼らは通常の授業では物足りなさを感じ、その才能を十分に伸ばすことができていません。中学受験はこのような「浮きこぼれ」を救う一つの方法として機能しているかもしれません。