2024年は成長ペースがやや加速した欧州経済だが、ドイツやフランスの経済停滞が重荷となり、回復ペースは遅い。25年の欧州経済は拡大基調となるのか。特集『総予測2025』の本稿では、25年の経済成長率やかく乱要因について予測した。(第一生命経済研究所 首席エコノミスト 田中 理)
南欧諸国で堅調な景気拡大
ドイツの経済環境は厳しい
2023年を通じてほぼゼロ成長が続いたユーロ圏経済は、24年に入って成長ペースがやや加速したが、回復に力強さは見られない。日本を抜いて世界第3位の経済国となったドイツが構造不況色を強めていることに加えて、パリ五輪の特需による観光・宿泊需要が一巡したフランスの失速が目立つ。
イタリアは、コロナ危機からの経済復興に必要な財政資金を欧州連合(EU)の加盟国に提供する欧州復興基金の最大の受け取り国だ。復興基金からの資金拠出が下支え要因となっているが、輸出環境の悪化が響き、景気にブレーキがかかってきている。
経済規模で見た上位3カ国がそろって低迷する中でも、ユーロ圏が辛うじて成長軌道を維持しているのは、旅行関連を中心とした旺盛なサービス需要に支えられたスペイン、ポルトガル、ギリシャなどの南欧諸国の堅調な景気拡大と、多国籍企業が経済活動をけん引するアイルランドの高成長によるところが大きい。
ドイツの経済停滞の背景には、過去数年の高インフレ、金融引き締めの余韻による消費や投資活動の低迷などの循環要因に加えて、エネルギーや人件費の高騰による産業競争力の低下と空洞化の加速、長年の財政緊縮による投資抑制やインフラ老朽化、煩雑な行政手続き、産業の新陳代謝や技術革新の弱さなどの構造要因があり、重しとなっている。
ドイツの厳しい経済環境は当面続くとみられ、その影響は徐々に他のユーロ圏諸国にも波及する公算が大きい。
逆風が強い欧州経済だが、景気を下支えする要因もある。次ページでは欧州経済を取り巻くプラス面とマイナス面を挙げ、25年の経済成長率やかく乱要因を予測する。