だれもがスポーツを楽しめる町づくりを目指す北九州市では、地元の大学が地域のスポーツ活動を盛り上げるのにひと役買っています。参加者の高齢化が課題のウォーキングイベントは大学生17名が運営から参加。「お互いにメリットがある」という関わり方をレポートします。
高齢化が進む地元団体。若いパワーで活気を
2024年11月3日、北九州市小倉で、北九州ウオーキング協会と北九州市立大学地域創生学群のコミュニティスポーツ実習生が、共同でウォーキングイベントを開催しました。
実習学生は地域活動をとおして生涯スポーツ社会の実現を目指しており、高齢化で活気が落ちているという協会の課題に取り組むため、1年前からサポートを始めました。「若いパワーは助かる、元気が出る」と好評で、今回のイベントでは、初めて運営から担うことに。
コースの作成、当日の受付、安全管理など、いざ主体となると一筋縄にはいきません。なかでもイベントを盛り上げるために非常に重要なコース作成は最難関。名所などの見どころを経由しながら、歩きやすいように広い道で、適度にトイレ休憩が設定できるなど複数のポイントを抑える必要があります。ここはさすがに、協会のベテラン指導員がメインでつくることに。今後、少しずつコツを教えてもらうそうです。
秋晴れのなか無事出発。幅広い世代での交流も
この日は市のシンボル的な場所、小倉城がある勝山公園を10時に出発。イベント前日は警報級の大雨でハラハラしましたが、当日は朝から「暑い!」という声が聞こえるほどの秋晴れ。準備体操から少し汗ばみましたが絶好のウォーキング日和で、9歳から80代までの約70人以上の参加者と気持ちのいいスタートをきりました。
今回は公園から、市内を大きくゆったりと流れる紫川沿いを北九州市立大学に向かう約6kmのコース。みんなで話をしながら歩いていきます。川のすぐそばを通ると「魚が跳ねた」とみんなで観察する一幕も。
歩いて一時間弱、休憩がてら立ち寄ったのは1400年の歴史がある篠崎八幡神社。大蛇伝説が由来の恋愛成就と子どもの夜泣き封じのご利益があるという「蛇の枕石」が有名な神社です。ちょうど七五三詣でかわいい晴れ着を着た子どもが駆け回っており、ほっこり。境内の出店でもちを買ったり御朱印を集めたりと、世代関係なく一緒に楽しんでいました。御朱印を書いてもらうのを待っている参加者にカメラを向けると、2人とも笑顔でポーズ。「大学生の若いパワーをもらっておかなくちゃ。(笑)」と満足そうに話していました。
ウォーキング中は、長年北九州市に住んでいる参加者が大学生に「勝山公園には兵器工場があった」「昔はここにも道がとおっていた」など、なかなか知る機会がない北九州の歴史を教えてもらう様子もありました。
コースのなかには前日の大雨でぬかるんだ場所がいくつかあり、足がとられそうになる人も。すると、実習生がすかさず手を差し伸べてサポート。この2人は最後に一緒に写真を撮るほど仲よくなっていました。
「自由にスポーツを楽しんでほしい」大学生としてできること
ゴールである北九州市立大学に12時半ごろ到着。計6kmを約2半時間かけて歩くのんびりペースで、参加者のみなさんは「楽しかった」ととても満足気。この日は大学祭が行われており、その足でお祭りを楽しむ人も。ゴールに到着した後も楽しんでもらうことは今回のひとつの狙いだったため、「出店のチュロス食べに行こう」という声が聞こえると実習生もうれしそうでした。
今回のイベントのリーダーを務めた2年生の吉村勇気さんは、「序盤の歩くペースが早かったり、歩くペースによって2グループに分かれてしまうなどいくつか改善点があったものの、無事終えることができてよかった」とほっとした表情。
次の企画もすでに考えているそうで、「今回は年齢層が高めでしたが、子どもなど多様な年代をターゲットにとしたイベントも検討しています」とのこと。また、「歩くだけではなく、道中での景色やイベント、ゴールした先での楽しみなどを設けることで、スポーツとの関わり方や入り口を幅広くしていきたいですね」と話してくれました。
大学生が地域のスポーツと幅広い年代の住民の架け橋になる取り組みが徐々に進んでいる北九州市。だれもがスポーツを楽しめる「生涯スポーツ社会」の実現の日は近いかもしれません。
<取材・文/カラふる編集部>