最優先ではない可能性も?
ドナルド・トランプ大統領が今週水曜日の議会演説(一般教書演説)で仮想通貨に言及しなかったことが注目を集めている。投資銀行TD Cowenの分析によると、議会演説における仮想通貨の沈黙は、トランプの仮想通貨に対する戦略的アプローチを示唆する重要な出来事として解釈されている。
TD Cowenのワシントンリサーチグループ責任者であるジャレット・サイバーグ氏は、この沈黙が政治的な計算の結果である可能性を指摘した。共和党議員が今後数か月でステーブルコイン法案について民主党の支持を獲得しようとしている中、トランプ大統領の直接的な介入が交渉を複雑化する可能性があるためだ。
サイバーグ氏は、トランプが仮想通貨投資家の前では仮想通貨を称賛するものの、実際にはこれを政権の政治的優先事項とは考えていないと分析。今回の議会演説について「派手さは際立っているが、中身に乏しい」と評価し、むしろ一般教書演説よりも選挙運動集会のような様相を呈していたと指摘した。
一方、ホワイトハウスは今週金曜日に初の仮想通貨サミットを開催する予定で、トランプ大統領の仮想通貨担当責任者であるデビッド・サックス氏が主導する。マイケル・セイラー氏やブライアン・アームストロング氏といった業界のリーダーたちが参加を予定しており、米国の仮想通貨準備金に関する詳細が明らかになる可能性がある。
ハワード・ルトニック商務長官は5日夜、トランプ大統領がビットコイン(BTC)を中心とした独自の仮想通貨戦略を検討していることを明らかにした。他の仮想通貨銘柄に対しても前向きな姿勢を示しつつ、ビットコインに「特別な地位」を与える方針も示唆している。
この動きは、米国の仮想通貨政策における新たな転換点となる可能性が高く、業界関係者や投資家から大きな注目を集めている。
一般教書演説の内容は?
トランプ大統領の今回の一般教書演説は、外交よりも国内問題に焦点を当て、ウクライナ戦争や中東情勢への言及は演説の最後まで先送りされた。外交政策については、グリーンランドの獲得やパナマ運河への言及、ウクライナ戦争を「血で血を洗う消耗戦」と表現するにとどまり、具体的な国際戦略については踏み込んだ説明を避けた。
演説中、トランプ大統領はゼレンスキー大統領から重要鉱物に関する取引提案の署名準備が整ったとする書簡を受け取ったことを明らかにした。さらに、アフガニスタン撤退時の2021年の爆破事件の首謀者としてISISのメンバー、モハマド・シャリフッラー氏を拘束したことを報告した。
議会に対しては、大規模な減税と国境管理法案の通過、「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システムへの資金提供、最終的な予算均衡を求めた。前任のバイデン大統領とは異なり、野党民主党との対話や協力関係構築には消極的で、むしろ選挙運動中のように彼らを揶揄し、批判的な態度を貫いた。
演説の中で特に注目されたのは、インフレと基本的な食料品の価格高騰への言及だった。トランプ大統領は卵価格の高騰をバイデン前政権の責任と決めつけ、具体的な対策よりも政治的な修辞に終始した。エネルギー生産の増加や政府の無駄の削減を主張し、イーロン・マスク氏を連邦政府の人員と支出削減の先頭に立つ人物として紹介した。