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はたらき方が多様化する現在、人材サービス業界の変化とは? ──パーソルグループならではの開発組織作り

 「中期経営計画2026」において、経営の方向性として「テクノロジードリブンの人材サービス企業」への進化を掲げるパーソルグループは、グループ全体でテクノロジー活用を推し進めている。同グループのパーソルホールディングス、人材紹介サービス領域の中核会社であるパーソルキャリアにはどのような開発組織があり、どのような取り組みをしているのか。パーソルホールディングスの中桐亮氏とパーソルキャリアの鹿野徹也氏が対談を行った。

はたらき方の多様化で変わる人材サービス業界

──まずは自己紹介をお願いします。

鹿野:パーソルキャリア テクノロジー本部 ITアーキテクチャ統括部 アーキテクチャ管理部でゼネラルマネジャーを務めている鹿野徹也です。

 キャリアの1社目は東京のSIerで7年間、クレジットカードサービスや保険など、汎用機を使った大規模システム開発に従事していました。その後、子どもが生まれたのを機に、地元である宮城県仙台市に戻り、Webベンチャーで事業を一から作ることを経験し、その面白さを経験したことで、「0→1」での事業開発が経験できるパーソルキャリアに入社しました。

 パーソルキャリアに入社後は、0→1でのシステム開発に従事し、現在はITアーキテクチャ機能と可視化によるプロダクト品質の安定化を主軸に、メンバーの育成、チーム作り、採用なども担当し、組織の成長に努めています。

中桐:鹿野さんは今も仙台に住んでいるんですよね。

鹿野:私は、1社目のSIerを退職してからはずっと仙台で仕事をしています。今では関東を始め、北海道や東北、中部に住みながらリモートではたらいているメンバーが多数います。はたらき方の選択肢が増えてきたことは嬉しい限りですね。

中桐:はたらき方の選択肢が多いのもパーソルグループの良さですよね。続いて私の自己紹介を。パーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部 デジタル開発部 部長の中桐亮です。

 前職は教育関係の事業会社で、主にSoRと呼ばれる基幹系システムやデータ基盤構築の責任者を務めていました。パーソルホールディングスにジョインしたのは2020年。グループ全体の共通システムを担当する情報システム部門の部門長に就任し、ERPの検討などに携わりました。

 2023年に「中期経営計画2026」の大きな柱であるCoE(Center of Excellence:パーソルホールディングスにテクノロジー人材を集約し、グループ経営目線で優先度の高い事業やサービスにデジタルリソースを集中投下することで、戦略的にDX推進していく組織)が発足し、現在はその責任者を務めています。

──人材サービス業界は今どのような状況にあるのでしょうか。

中桐:終身雇用が当たり前だった時代から、転職が当たり前となり、今では副業やフリーランス、人材派遣というはたらき方が当たり前に普及しています。将来的には、バーチャルな世界での就業も進んでいくかもしれません。このようにはたらき方は多様化しています。しかし、生産労働人口は減少しているのが現状です。

鹿野:はたらき方の多様化が進んでいるのは、おっしゃるとおりです。多様化が進む前は、転職サービス「doda」が提供する採用したい法人顧客と転職希望者をつなぐ、マッチング事業が中心でしたが、今はフリーランスとしてはたらきたい、短時間勤務が希望、好きな場所ではたらきたいなど、はたらき方の選択肢が増えてきました。そのためマッチングの難易度は高くなってきていると感じています。

 このようにはたらき方の多様化が進む中、テクノロジーを活用してマッチング精度を高めるだけでは、世の中のニーズに十分応えられないのではと感じています。そこでフリーランス・副業ではたらきたい方向けに「HiPro(ハイプロ)」や、リスキリングを支援するサービス「PERSOL MIRAIZ(パーソルミライズ)」といった新しいサービスの提供もスタートしています。その他、法人企業向けには求人情報の自動作成支援サービスや、転職希望者に向けたAIを活用した職務経歴書の自動生成サービスなど、幅広くチャレンジを続けています。

中桐:アルバイトの領域でも大きな変化が起きていて、スキマバイトの「シェアフル」では、面接や履歴書なしでアプリから仕事を選び、好きな時間にはたらけるようになっています。

 このように、特定の領域というよりは、人材サービス業界全体が過渡期にあり、将来を見据えて変革していかなければならない時期だと思います。

2社の関係性とは?より良い開発組織を作るために

パーソルホールディングス株式会社 グループデジタル変革推進本部  データソリューション部/デジタル推進部/デジタル開発部 部長 中桐 亮氏
パーソルホールディングス株式会社 グループデジタル変革推進本部 デジタル開発部 部長 中桐 亮氏

──パーソルホールディングスの開発組織と、パーソルキャリアの開発組織の共通点や違い、その関係性について教えてください。

中桐:業界の大きな変化を踏まえ、私たちパーソルグループは「テクノロジードリブンの人材サービス企業」を経営の方向性として掲げ、グループ全体で事業・サービスへのテクノロジーの実装を推進しています。そのためには、内製開発組織がとても重要です。

 パーソルホールディングスとパーソルキャリアの開発組織は、役割・組織規模・フェーズが全く異なります。パーソルホールディングスの開発組織の役割は、自社に加えてグループ会社の技術支援をすることです。IT部門は300人ほどの規模で、そのうちCoEは、デジタル企画、データサイエンティスト、エンジニア、PMやPMOなど、各職域のプロ約90名が集まった複数チームで構成されています。エンジニアが集まるデジタル開発部はまだ15人ほどで、2024年4月に立ち上げたばかり。現在は、人材派遣事業を展開しているパーソルテンプスタッフの戦略的DX推進をミッションに活動しています。

鹿野:パーソルキャリアの開発組織であるテクノロジー本部は、エンジニア、ITコンサルタント、データサイエンティストなどの職能が集まる専門集団で、大きく分けて以下4つの役割を担っています。現在は主務兼務合わせて約580名が在籍し、うちエンジニアは約230名です。

  • パーソルキャリアの主要サービスであるdoda、dodaXなどの既存プロダクトや基幹システムの開発
  • PERSOL MIRAIZやHiPro、HR forecasterなどの新規サービス開発
  • パーソルキャリア従業員向けシステム開発
  • パーソルキャリアが保有する膨大なデータの分析と活用

 パーソルキャリアが掲げるミッション「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」の実現に向けて、テクノロジーの側面から支援する組織として2019年に立ち上がりました。

中桐:デジタル開発部の立ち上げ時には、開発組織を率いる先輩として、鹿野さんにいろんなことを相談させてもらいました。

鹿野:あの時は仙台まで来ていただき、たくさん話しましたよね。

 両社の共通点を挙げるとすれば、ゼロから開発組織を立ち上げたことではないでしょうか。パーソルキャリアは、7年ほど前まで開発を外部委託するケースが多かったため、当時はほんの数名しかエンジニアがいなかったんですよ。そのため、新しく何かを始めようと思っても、それを実現できるような開発環境がありませんでした。

 そのような環境から内製開発を本気で進めたのが5年ほど前です。これまでは個人情報や企業情報などを扱うため、ネットワークが接続制限されているところからGitHubを使えるようにしました。会社貸与のPCはWindowsのみだったので、LinuxベースのMacOSが搭載されているMacBookを部門の予算で購入し、ネットワークを敷設して開発体制を整えていきました。そういったゼロからチャレンジするやり方が、パーソルホールディングスにも引き継がれていると思います。

次のページ
自分の軸をしっかり持ちながら、さまざまな領域にチャレンジできる環境

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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