2023年から大幅増加に転じた倒産件数は、24年には1万件規模へ。コロナ禍の融資の返済に加え、原材料や人件費の高騰が続いている。「破綻の真相」担当記者が、24年の動向と今後の見通しを紹介する。
北方 雅人(チーフプロデューサー)/ 神農将史(記者)/ 藤田太郎(記者)/ 秋山知子(記者)
神農:コロナ関連の主な支援策が終わり、2023年夏ごろからコロナ融資の返済も始まった。このことから、東京商工リサーチの調査によれば、22年に6400件ほどだった倒産件数は、23年には8600件に達し、24年は、年間では13年以来となる1万件を超えた。
24年に「破綻の真相」を取材する中で、コロナ禍後だからこそと言えるような特徴はあっただろうか。
北方:7年ぶりに破綻企業の現地取材をするようになった中で感じるのは、倒産に至る経緯はコロナ禍前後で特に変わっていないということ。それは、「環境変化に対応できない会社が倒産する」という、言葉にすると当たり前のものだ。
北浜グローバル経営(北浜グローバル経営が自己破産 補助金ビジネスへの傾倒があだに)は、いわゆる補助金ビジネスで急成長したものの、行政側の方針が変わって、自社が支援する企業の補助金採択率が急激に悪化した。採択された際の成功報酬が中心なので、業績への影響が大きかった。
北浜グローバル経営の前井宏之社長は「高度な経営判断を誤ったわけではない」と取材でコメントしている。同社に限らず、難しいかじ取りではなく、明らかに歪(いびつ)な経営状態を早期に是正しなかった結果、破綻に至った事例が多いと感じる。
植物工場のリーディングカンパニーだったスプレッド(人工光栽培レタスの旗手、スプレッドが破綻 販路・資金・技術に壁)も、もともと原価と売価の関係が健全ではない中で拡大を続けていた。その中で、光熱費や運送費の上昇に対応できなかったのが破綻の一因だ。
環境変化が引き金になって、対応できない会社が倒産するという構造は、90年代前半に私が「破綻の真相」を担当し始めたときから変わっていない。環境変化の内容こそ、その時々によって変わってくるが。
秋山:環境変化と言えば、エレキギター製造のフェルナンデス(国産ギターの雄「フェルナンデス」が経営破綻 市場の変化に追随できず)が事業停止している。国産エレキギターの雄として国内市場をけん引し、著名アーティストも愛用してきたメーカーだ。それでもなお、ギター関連市場の縮小や中古品流通の確立に伴って売り上げが減り続け、倒産に至っている。
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