ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議を始めた。会見では生産体制の最適化や車両の共通化などのシナジー効果が語られた。一方、日産の業績次第では「統合が破談になる可能性は十分にある」とSBI証券の遠藤功治シニアアナリストは指摘する。日産は工場閉鎖やリストラ策で大幅な減損・特損を計上する可能性もある。経営陣の責任が問われない中、構造改革はうまくいくのか。遠藤氏に話を聞いた。

両社の経営統合に向かう動きをどう見ていますか。

遠藤功治・SBI証券企業調査部シニアアナリスト(以下、遠藤氏):ホンダ主導による日産救済という側面が強いでしょう。記者会見でも両社長にあまり笑顔が見られませんでしたね。これから取り組むべき難題が山積しているなと改めて感じました。

 ただ私はこの統合が破談になる可能性が3割ほど残っていると考えています。というのも、経営統合の前提は日産の経営再建策、ひいては大規模なコスト削減策が順調に進むことです。

 両社は26年8月ごろまでに、新たな持ち株会社の上場を予定しているようですが、それまでに日産の業績が回復するかどうかは甚だ疑問。赤字に陥る可能性は十分にあります。

経営統合が破談となる可能性について詳しく教えてください。

遠藤氏:現在、日産には短期間での経営再建という、非常に難しい作業が求められています。日産が進める経営再建策によれば、年間生産台数のキャパシティーは500万台から400万台へと20%削減される見込みです。

遠藤 功治氏
遠藤 功治氏
SBI証券企業調査部でシニアアナリストを務める。1984年に野村證券入社。欧米系投資銀行の証券アナリストを務めたのち、現職。専門は自動車・自動車部品業界

特損は5000億円単位の可能性

 一方、発表されているリストラ策は9000人と、全従業員の7%程度にとどまる。台数のキャパシティーと同じような比率でリストラを進めるのであれば、追加で2万人ほどの人員削減があってもおかしくないわけです。地域によって異なるものの、リストラでは1人当たり1000万円以上はかかってしまう。

 また同時に、工場の閉鎖も大幅に進めなければなりません。台数を100万台減らすとなると、大体工場4つ分。数千億円の減損が必要となるでしょう。

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