社会実情データ図録から今年になってアップされたものふたつ。
OECDの成人スキル調査
図録▽知力格差の小さい国・大きい国(OECDの成人スキル調査)
※ 国際成人力調査(PIAAC、ピアック、Programmefor the International Assessment of Adult Competences)は、経済協力開発機構(OECD)の成人のスキルを評価する世界規模の調査である。この調査はOCED各国の知識基盤社会における読解力、数的思考力、そして問題解決能力のスキルを評価し、各国国民のこれらのスキルを向上させるための情報を提供するのが主目的である。 労働力人口(16歳から65歳まで)に焦点を合わせたこの調査は、2013年10月8日にはじめて公表された。
2回目は2023年10月に公表。 (ウィキペディアから)
「ナンバー1」より「オンリー1」の考え方が好きだ。正直なところ、「ナンバー1」にはなれないので、個性豊かに「オンリー1」になれるように自分自身を大切にするというあたりが心を打つ。
それでも、成人力で、日本が世界のトップクラスだとの発表を聞くと嬉しい。ランキングといえばと上を目指したいというのも人間の性なのかもしれない。
2年前 (2023年) に公表された調査結果。ここで注目したのは、移民の影響。
すでに、1億人を超した難民。
難民の受け入れ状況が、調査結果に影響を与えている。そして未来への影響も。
日本は、島国、漢字文化圏、儒教文化圏で異質性を排除する社会。
図録の作者 本川裕統計探偵「日本のように異質性の排除で高レベルを保ったとしても将来的な展望では、長期的に見れば必ずしも有利とは限らないとの印象を持たざると得ない」という意見に賛成だ。
日本の結果を順位で見ると「読解力」と「数的思考力」は前回の世界1位が、いずれも、フィンランドに次ぐ第2位となった。「状況に変化に応じた問題解決力」はフィンランドと同順位1位だった。
1回目 (2013年) のように「世界一頭がいい」とは言えなくなったが、世界トップクラスの知力を日本人が有するという結果だったことには変わりがない。
順位の全体的特徴を見ると、日本を除いて、北欧で高く、南欧や東欧で低いという一般傾向が認められる。
読解力と数的思考力について前回との比較を順位の変化で見てみると、北欧諸国や英国、アイルランドで順位が上昇、フランス、スペイン、韓国、東欧などで順位が低下しているのが目立っている。
G7と韓国、8か国で比較
「読解力」と「数的思考力」は、6段階(高い順に、レベル5からレベル1、レベル1未満)、 「状況の変化に応じた問題解決能力」は、5段階(高い順に、レベル4からレベル1、レベル1未満)で評価されている。
・( )内の数字は非移民の場合のレベル1以下の構成比
・ 右の数値はレベル5の数値読解力
数的思考力
問題解決力
日本は、3分野いずれも、低い習熟度(レベル1以下)の割合は参加国中最少、高い習熟度(レベル4以上) の割合は参加国中第2位(第1位フィンランド)となっている。
つまり、高い知的レベルも少なくないが、むしろ、低い知的レベルが少ないのが、世界の中で目立った日本の特徴と言えよう。
最高のレベル5の構成比を確かめると、読解力では日本は2.5%とフィンランドの6.2%を大きく下回って2位である。数的思考力では日本は3.5%とフィンランドの5.3%、オランダの4.2%に次ぐ3位である。
平均得点のランキングでは日本がフィンランドに次ぐ第2位(問題解決力では同順1位)であるが、フィンランドが日本を上回っているのは、最高レベルの知力保持者が多いからであることが分かる。
レベル1以下の構成比について、移民の影響を取り除いた結果数値を調べてみると、日本が最少と言うイメージは大きく崩れる。非移民の同値は、読解力では日本は9.2%とスウェーデンの4.0%、ノルウェーの6.6%、フィンランドの6.8%、オランダの8.3%を下回る5位に過ぎない。
数的思考力でも日本は非移民のレベル1以下の構成比は5位、問題解決力でも4位であるにすぎない。
すなわち、日本の知力レベルが低い方が少なく、全体として底上げされているのは、ヨーロッパのように移民を多く受け入れていないからに過ぎないという側面が大きいのである。
移民1世より移民2世の知力はかなり上昇し、非移民のレベルにかなり近づく傾向がある(カナダやイスラエルのように移民2世の方が非移民より知力が高い場合もある)。
つまり、移民先の国で教育を受けることによって、知力レベルの同化が進んでいくのである。移民を受け入れると人口減少や少子化、高齢化を遅らせることになる。一方、こうした多様性を引き入れると確かに平均的な知力レベルは低下し、一時的には社会政策上の困難も拡大する。
しかし、日本のように異質性の排除で高レベルを保ったとしても将来的な展望では、長期的に見れば必ずしも有利とは限らないとの印象を持たざると得ない。
知力のばらつき
各国の成人間の知力のばらつき度合を変動係数(標準偏差÷平均得点)で見てみよう(下図参照)。
日本はスロバキアに次いで知力のばらつきが小さい国であることが分かる(数的思考力では最もばらつき小さい)。G7諸国の中では、2位のカナダを引き離してばらつきが小さいのが目立っている。G7諸国の中では米国の知力のばらつきが最も大きく、フランス、ドイツがこれに次いでいる。
知力のばらつきと知力の平均的な高さとの相関図
ばらつきの大きな国ほど平均的な高さが低く、逆にばらつきの小さな国ほど平均的な高さが高いという傾向が成り立っている(後者の代表が日本、前者の代表がチリ)。もっとも、フィンランドや米国、ニュージーランドのようにばらつきが大きい割には平均的な高さも確保できている場合もあれば、スロバキアやリトアニアのように格差は小さいが平均的な高さは低い場合もある。
参照原資料