サイクリングからロードレースまで!魅惑の自転車漫画おすすめ8選
私たちの生活ではごく身近な乗り物である自転車。『弱虫ペダル』の人気もあって、世間ではちょっとした自転車ブームが起きており、ロードレーサーに乗る人も増加中だとか。
今回は、おすすめの自転車漫画8作品をご紹介します。サイクリングからロードレース、はたまた競輪の世界まで、今まで知らなかった自転車の魅力を発見できること間違いなしです。
王道熱血自転車漫画!オタク少年がレーサーとして目覚める『弱虫ペダル』
『弱虫ペダル』 1~57巻 渡辺航 / 秋田書店
小柄な体にメガネのオタク少年・小野田坂道が仲間と出会い、ライバルたちとの熾烈な戦いを経て、クライマー(坂を上ることを得意とする選手)として成長する姿を描く、The・王道スポ根漫画です。アニメ化・舞台化・映画化と、幅広くメディア展開され、2015年には第39回講談社漫画賞の少年部門を受賞しました。
運動が苦手な坂道ですが、毎週、千葉の自宅から秋葉原までの往復90キロをママチャリで通う中で、本人も気づかないうちに自転車乗りの素地を培っていました。同級生のオールラウンダーレーサー・今泉、「浪速のスピードマン」鳴子らとの一年生対抗ウエルカムレースを経て、本格的に自転車競技人生をスタートさせる坂道。シビアなトレーニング、インターハイのレギュラー入りを目指しての部内での争い、そして強豪校との戦いと、坂道が活躍する舞台は段階を追って大きくなっていきます。坂道や今泉たちが時に悩み、時にぶつかり、そして助け合い、個性的な対戦相手を相手に奮闘する姿が熱い! 滴る汗や息づかいをすぐそばに感じるようなレースの描写には、読みながら思わず拳に力が入ってしまいます。チームの勝利のために、時には個人の利を捨てるという、自転車レースならではの連携も見どころです。
また、細部にもネタが満載。坂道がウエルカムレースでド素人ながら山岳賞を獲った時に、コーチから着せられたジャージが、ツール・ド・フランスの山岳賞受賞者に贈られる、白地に赤の水玉模様の“マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ”であったり、自転車競技好きなら、「これこれ!」と嬉しくなってしまうエピソードも。もちろん、自転車競技に全く詳しくない人でも大丈夫! 坂道の同級生で、自転車フリークである寒咲幹が狂言回しとなり、競技のルールや自転車について、初心者でも分かるように解説してくれます。巻末には渡辺航先生の自転車コラムやイベントレポートもあり、楽しく知識を得ることができますよ。
連載開始当時は新入生だった坂道たちですが、現在はたくましく成長し、部の中核となって死闘を繰り広げています。今後の展開からも、まだまだ目が離せません!
自転車漫画の名作!レースの熱さを感じたいなら『シャカリキ!』
完結『シャカリキ!〔ワイド〕』 全7巻 曽田正人 / 小学館
買ったばかりの自転車と共に、坂の多い関西のとある街に引っ越してきた野々村輝(テル)。自転車に乗る人がほとんどいない町で、生来の負けず嫌いから坂に挑み続け、中学生になる頃にはほぼ坂を登りきる事ができるようになります。そして中学3年でライバルとなる由多比呂彦(ユタ)に出会い、高校入学後に自転車部に入部。ユタや他の部員たちと切磋琢磨し、レーサーとして成長していきます。
本作の作者は、バレエ漫画『昴』をはじめ、天才キャラを描かせたら右に出るものはいない曽田正人先生。本作の主人公・テルもまた天才であり、ライバルたちはその圧倒的な力の前に自分の非力さを実感させられます。しかし、天才とは言っても、何もせずに勝ち続けられるわけではありません。テルもまた、血のにじむような努力を重ね、勝利に執着し、レースに臨んでいるのです。
後半、テルは大きな怪我をしてしまいますが、努力あってこそのテルの復活劇は感動必至です。そして、自分の力不足に打ちのめされたライバルたちもまた、自分の限界に挑み奮起していきます。
主人公のテルはクライマー、ライバルのユタはスプリンター、登りと下り、いみじくもユタが言う「水と油のよう」な2人。シリアスなシーンでも鼻水とよだれをたらしながら、限界まで突っ走るテルの姿は、ダサく、そして格好良い! 1992~1995年に連載された作品ですが、今読んでも感動すること間違いなしの名作です。
競輪の知られざる世界が分かる!『Odds』
完結『Odds』 全10巻 石渡治 / 小学館
自転車のロードレース競技で高校選手権2位をとり、将来を期待されていた辻堂麟太郎。しかし、自動車事故により母と妹は死亡、父は植物状態になってしまいます。そこで麟太郎は、父の医療費を稼ぐためにロードレースの選手となるという夢をいったん封印し、競輪の選手になって大金を稼ぐことを目標とします。
麟太郎は当初、競輪を金もうけの手段としか考えておらず、いつかはロードレースに戻るつもりでいました。しかし、競輪学校の個性的な仲間や先輩たちと研鑽を積む中で競輪の魅力に気づき、本気で競輪に取り組むことを決意します。
自転車に馴染みがないと、ロードレースと競輪の違いがあまり分からないかもしれませんが、陸上競技でのマラソンと短距離走くらいの違いがあると、作中で表現されています。つまりそれは、筋肉の使い方、鍛え方から根本的に異なるということ。麟太郎が競輪に転向するには、並々ならぬ努力が必要であることが分かるでしょう。また、麟太郎は家族とお金のために走っているので、プロになる厳しさがシビアに描かれているところも特徴です。
本作は自転車学校在学中の話ですが、『Odds +1』、『Odds GP!』という続編があり、現在は『Odds VS!』が連載中。麟太郎がプロの競輪選手として活躍する様子が描かれています。『Odds』で競輪の魅力にとりつかれた方は、是非一気読みを!
運動音痴な女子が始めるロングライド!『ろんぐらいだぁす!』
『ろんぐらいだぁす!』 1~10巻 三宅大志・LONGRIDERS / 一迅社
これといった特技もなく、運動全般が苦手な大学1年生の倉田亜美は、ある日見かけた折り畳み自転車に一目ぼれしたことをきっかけに、貯金を全ておろして自転車を購入します。その自転車で、幼なじみの新垣葵とサイクリング中、大学の先輩でロードバイクに乗る西条雛子、一之瀬弥生と出会います。
運動音痴の女の子が自転車の世界にはまっていく過程を描いているので、ロングライドする際の注意事項や、道具選びなどが分かりやすく盛り込まれており、読んでいるうちに自転車の知識が得られる作品です。自転車に興味を持ったばかりの人や、これから始めようとしている人に特におすすめ! また、すでに自転車に乗っている人には、「自分もはじめはこうだったよな」と懐かしい気持ちにさせてくれます。
少しずつ走行距離を伸ばして成長していく亜美ですが、目標は仲間5人でチームを結成し、チームで行うブルベの1つ「フレッシュ」への挑戦!「ブルベ」とは、事前に公表されているルート(通常200km~1400km)に従って走り、指定されたチェックポイントを通過してゴールを目指す、タイムや順位にはこだわらないレースのことです。
本作は、2015年4月にアニメ化が発表されました。今後描かれるであろうレースと共に、動く亜美たちが観られるのも楽しみですね。
主人公はサラリーマン!ロードレースの面白さが学べる『かもめ☆チャンス』
完結『かもめ☆チャンス』 全20巻 玉井雪雄 / 小学館
男手ひとつで幼稚園児の娘を育てている、信用金庫職員の更科二郎。娘・ふくのの失踪騒ぎで、日本に4台しかないGIANT TCR ツール・ド・フランス100周年記念モデル(定価140万円)の自転車を壊してしまった更科は、弁償のために1ヶ月後のレースに出る事になってしまいます。高校生の晶に特訓されるうちに、更科は徐々にロードレースに魅了され、秘めた才能を開花させていくのでした。
娘のために、職場では我慢することも多い更科。心のどこかに鬱々としたものを抱える更科が、初めてロードバイクで走った時に感じた爽快感。流れる風景とその感情表現の描き方がリアルだと評判で、この漫画を読んで自転車を始めた人も多いとか。大学時代に山岳スキーをしていた更科は、天性のダウンヒラー。そのため、レースシーンの、特に下りの描写の爽快感は秀逸です。また、悩めるサラリーマンである更科の気持ちに自分を重ね合わせてしまう男性読者も少なくなさそうです。
本作を読んだ後は、玉井雪雄先生の自転車エッセイ漫画『じこまん』もチェックしてみてください。
ダークな作風で知られる鬼頭莫宏先生が描いた、ほのぼの自転車漫画『のりりん』
完結『のりりん』 全11巻 鬼頭莫宏 / 講談社
自動車好きで彼女なしの28歳・丸子一典(ノリ)は、ドライブが趣味。ところが、ある事件をきっかけに免許取り消しになってしまい、自転車に乗る(ポタリングする)ハメになってしまいます。最初は自転車に乗りたがらなかったノリですが、徐々に自転車の魅力にはまっていくことに……。
自転車嫌いが自転車を好きになる過程が丹念に描かれた本作。『ぼくらの』、『なるたる』など、ダークな作風を得意とする鬼頭莫宏先生が描く、爽やかな自転車漫画という点でも注目の作品です。
ロードバイクの魅力とは何か、購入から組み立て、ロングライドからレースへと、どのように自転車を進めていったらいいかが、順を追って描かれているので、これから自転車を始めたい人、もしくは始めたばかりの人にも参考になる作品です。
多くの自転車漫画で見られる「主人公が熱血キャラ」とは真逆の設定であり、スポ根要素が薄い点は、この作品の特色であり魅力にもなっています。
女子×鎌倉×自転車萌え!『南鎌倉高校女子自転車部』
『南鎌倉高校女子自転車部』 1~10巻 松本規之 / マッグガーデン
女子高生の舞春ひろみは、長崎から鎌倉に引っ越してきたばかり。慣れない自転車通学に四苦八苦している時に、秋月巴と出会い、女子自転車部に入部します。
ポタリングやロードレースなど、いろいろな自転車の楽しみ方を教えてくれて、その上、鎌倉を自転車で巡る観光案内的な面白さも堪能できる本作。作者の松本規之先生が同人誌として発行したイラスト集がきっかけで、漫画化され連載になりました。ほのぼのとした雰囲気でスポーツを楽しめる、さわやかな自転車漫画です。
2015年8月にはアニメ化が発表されました。鎌倉の情景をアニメで観られるのは楽しみですね。
アニメ映画「茄子 アンダルシアの夏」の原作はこれ!『茄子』
完結『茄子』 全3巻 黒田硫黄 / 講談社
サイクリストとしても有名な高坂希太郎さんが監督・脚本などを手がけ、2003年にアニメ映画として公開された「茄子 アンダルシアの夏」は、第56回カンヌ国際映画祭に日本アニメとして初めて出品されたことでも話題になりましたが、それは本作『茄子』の一編「アンダルシアの夏」が原作となっています。
主人公・ぺぺが参戦しているスペインの自転車ロードレース、ブエルタ・ア・エスパーニャの白熱したレースと、一見レースには無関係に見える人間模様が交差し、短編でありながら、「人生の山と谷」を味わうことのできる良作です。黒田硫黄先生のザクザクした筆致で描かれるレース描写の熱気は迫力満点。特に残り500メートルの競り合いは、『弱虫ペダル』を読んでロードレースにハマった読者にも、一度は見ていただきたい名シーンです。
最後に
人生には3つの坂があると言います。上り坂、下り坂、そして「まさか」の坂。自転車漫画には坂が多く登場しますが、その坂をどうクリアしていくか、登場人物たちは必死に考えます。自転車漫画の面白さは、人生の坂とどこかオーバーラップするところにあるのかもしれませんね。