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“金の延べ棒”がないと諦める「背任行為」──濱口秀司氏が語る、大企業が成熟市場でやり抜く力とは?

monogoto 濱口 秀司氏インタビュー:第7回

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 日本初のイントラネット構築やUSBメモリの発明をはじめ、幅広い業種の新規事業開発やイノベーションに携わってきた濱口秀司氏。今回は前回に引き続き、日本企業におけるイノベーションの可能性や障壁について語っていただいた。厳しい言葉が続く中にも日本企業の可能性を信じる、イノベーション請負人の矜持がうかがえる。「うちの会社は無理」「自分はできない」と思う人にこそ、ぜひお読みいただきたい。

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意思決定層が持つ固定化された「常識」を破壊する

──日本企業の新規事業開発やイノベーションにとって、何が強みなのか、そして何が障壁となっているのか。濱口さんどう感じていますか。

monogoto濱口秀司氏(以下、敬称略):障壁になるのは、マインドセットの部分だと思います。それも、日本の大企業では、次長から部長ぐらいまでの意思決定層が、守りに入っているからではないでしょうか。経営層はもうこのままでは行き詰まると思っていてイノベーションに対して前のめりです。若手から中堅までの現場は、結構いろんなアイディアを抱えている。ただ、口にしない人が多いんですよね。その理由は、意思決定層がたいてい企画段階で潰しちゃうんですよ。彼らは決して自分が守りに入っているとは思っていません。自分の「常識の範囲」で考えて、「こんな企画は無理だ」と健全に思っているだけ。悪気なく新しい芽を潰しているんですよね。おそらく本人もユニークなアイディアを考えたとしても、「こんなのはありえない」と思って無意識にブレーキをかけている。

 そうなると、ボトムアップから始めるのは厳しいと思うので、社長や役員などの経営層が環境を作っていくことが大切でしょうね。いい企画を持っている人が勇気を持って企画を出せるようにするためには、実例を作っていくのが一番早いと思うんです。

 成熟した市場では製品もコモディティ化していると思われていますが、しっかり考えれば、新しい市場をつくりだせる。正直、新しい製品がリリースできないのは、「もう新しい企画なんてないだろう」と心の底で思っているからだと思いますよ。「ない」と思っているものが、できるはずがないじゃないですか。だからこそ、コモディティ化している製品ほど大きな事業機会にたどり着く可能性が残っている。実際、市場に胡座をかいているような製品や企業ほど、ひっくり返された際のダメージは大きいでしょう。

 ただし、「ない」と思っていたところに新しい製品が生まれると、「天才だから」「運が良かったから」と言う人もいます。運はともかく、イノベーションは本当に天才にしか生み出せないものでしょうか。もし、それが本当なら、「天才を見つけ出して、気持ちよく働かせて、天才が生み出したものをいかに速く形にするか」が一番の経営戦略になるでしょう。でも、違いますよね。天才を雇えないような小さな組織からもあっと驚くようなものが次々と生み出されています。

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