頼長が残した日記『台記』には、うら若き貴族から家来たちまで、男性たちとの赤裸々な恋愛記録がつづられている。当時、男性同士の恋愛、「男色」自体は珍しいものではなかったが、子孫に伝え残す日記にその詳細を残しているのは珍しい。なぜ、頼長は恋愛日記を書き残したのか?そこには、ある恐るべき目的が隠されていた。平安京の夜に妖しく開く“悪の華”のキケンな顔とは? 頼長にある日、天皇を呪い殺したとの疑いがかけられる。これは、優秀な頼長を嫉妬し続けた兄・忠通と対立する貴族たちの策略だったのだが、呪いを信じる貴族たちは、大混乱。頼長は孤立を深めていく。この兄弟ゲンカは、やがて朝廷を二分する対立へと発展。保元の乱へとつながっていく。貴族の世から武士の世へ。時代の転換点に、陰謀渦巻く朝廷の中で、はかなく散っていった“悪の華”の悲劇の物語。