釈迦はある日の朝、極楽[注釈 1]を散歩中に蓮池を通して下の地獄を覗き見たところ、罪人どもが苦しんでいる中にカンダタ(犍陀多)という男を見つける。カンダタは殺人や放火もした泥棒であったが、過去に一度だけ善行を成したことがあった。それは林で小さな蜘蛛を踏み殺しかけて止め、命を助けたことだった。それを思い出した釈迦は、彼を地獄から救い出してやろうと、一本の蜘蛛の糸をカンダタめがけて下ろす。 暗い地獄で天から垂れて来た蜘蛛の糸を見たカンダタは、この糸を登れば地獄から出られると考え、糸につかまって昇り始める。ところが途中で疲れてふと下を見下ろすと、数多の罪人達が自分の下から続いてくる。このままでは重みで糸が切れてしまうと思ったカンダタは、下に向かって大声で「この蜘蛛の糸は己(おれ)のものだぞ。」「お前たちは一体誰に聞いて登って来た。」「下りろ。下りろ。」と喚いた。その途端、蜘蛛の糸がカンダタの真上