昨年、最後に観たのはシネマヴェーラ渋谷で掛かっていたダグラス・サーク特集の4作品だった。『ヒトラーの狂人』『僕の彼女に何か?』『社会の柱』『エイプリル・フール』の4本で、最初の2本は渡米してダグラス・サークを名乗ってから、後半の2作はドイツ時代の作品でこのときはデレトフ・ジールクという名義だった。 映画を観るときはいつもただぼんやりと観ている。画面の中で起こるすべてを記憶しよう、などとは思わないし、なにか感想を得ようとも考えないし、ましてや上映中にメモを取るなど一度もしたことがない。ただぼんやりと観て面白かったり感動したときはうれしいがそれだけだし、退屈だったときは上映中に眠っているし、観終わったあとは忘れるだけだ。それなのにどうして観ているか、といえば、けっきょく好奇心を充したいからなのだろう。 これから始まる物語を、まったく期待せずにながめていると、映画によっては開巻まもなく派手な演出