孫の自己評価 2023年10月のとある夕方、東京湾が夕闇に包まれるころ、孫正義はソフトバンク本社内の自室にあるテーブルの上座に座っていた。ウラジーミル・プーチン大統領がクレムリンで使っているものと同じくらい、長い長い木製のテーブルだ。 小柄で、頭髪が後退した孫は、ジャケットとスラックスというカジュアルないでたちで、キャリアのどん底にあった時期を振り返っていた。ちょうど1年前、ソフトバンクグループ(以降ソフトバンクG)の決算説明会で挨拶に立ち、当分はプレゼンテーションをしないと公言したころだ。 「散々な人生ですよ」。そう訴える声には自らを哀れむトーンがにじんでいる。「ズームで通話していると、自分の顔が画面に映りますよね。それが嫌でね。醜いし、もう年だから……僕の業績ですか? 自慢できるようなことは何ひとつありません」 額面通りであれば、驚きだとしか言いようがない。当時66歳だった孫は、世界で