エッ? 「不敬罪」って、まだあったのか! と驚いた。天皇を敬え、敬わない人間は逮捕し、投獄だ。という悪名高い法律だ。確か、日本の敗戦でなくなったはずだ。でも、本当は戦後も生きていた。原武史・吉田裕編集の『天皇・皇室辞典』(岩波書店)を読んで知った。 〈敗戦後、治安維持法など他の治安法令が廃止を命ぜられたにもかかわらず、不敬罪は直ちに廃止されたわけではなかった。同規定が刑法の中にあったので、GHQの眼を逃れたためであった。GHQの法令で治安維持法をはじめとした便利な法をことごとく失っていた取締り当局は、これ幸いとばかり、この不敬罪を戦後社会運動取締りに引っ張り出そうとした〉 そうだったのか。GHQもミスをしたのだ。1946年5月のいわゆる食糧メーデーに、不敬罪は持ち出された。メーデーで、「朕はタラフク食ってるぞ、ナンジ人民飢えて死ね。ギョメイギョジ」と書いたプラカードに対し、不敬罪が発動され