中小・零細企業の多くが後継者が見つからず事業存続の危機に立たされている。そんな中、名古屋市の町工場社長がベトナム人社員を後継者に指名した。親族経営が中心の中小・零細企業で外国人に後継を託すのは極めて異例。人手不足で外国人労働者への依存も高まる中、先駆的な事例として注目される。 「お客さんがいる限り、会社を続ける責任がある。後継のめどがついてほっとしたよ」。名古屋市西区で特殊紙の切断・加工を営む「長尾紙工」の長尾安祐社長(72)は安堵(あんど)する。 大学卒業後の1969年、父親が畳んだ会社を再興させる形で創業。6人の社員で切り盛りする。かつて受注の中心だった紙おむつ用フィルム紙はメーカーの海外生産化で激減したが、高い技術力が買われ、新たに自動車や食品業界からの注文を獲得。現在は自動車用電池やコンビニ弁当の製造工程で使われるフィルムの加工なども手掛けるようになり、業績も好調だ。