「日野町事件」といっても知る人は少ない。大津地裁が再審開始を決定し、認めない検察が大阪高裁に即時抗告している、36年前の殺人の冤罪である。濡れ衣で刑務所に入れられた男性は雪冤を果たせず他界した。純朴な市民に無念の死を遂げさせたのは裁判官である。 1984年12月29日夜、滋賀県日野町の「ホームラン酒店」の店主、池元はつさん(当時69)が行方不明になり、年明けて1月18日に町内の造成地で遺体が発見、4月末に町内の山中から壊されたからの手提げ金庫が見つかる。5万円などが奪われた。滋賀県警の捜査は難航したが3年後の1988年3月、常連客で工員の阪原弘さん(当時53)を逮捕した。当初、否認していた阪原さんは「酒代が欲しくなった。年末だから金庫にお金があると思い、池元さんを背後から襲い手で首を絞め、ひもでも締めた」と自白に転じた。 しかし当時、阪原さんは妻と共稼ぎで2千万円以上の貯金もあり、「酒代欲