あさこ、ゆうこ 『あさこ、ゆうこ』 ― 長野県 ― 語り 井上 瑤 再話 六渡 邦昭 むかし、あるところに山があって、東側と西側のふもとには小さな村があったそうな。 二つの村は、ささいな争い事が因で、もう永い間往き来をしていなかったと。 歩く者が無くなった山の道は、いつしか熊笹が生(お)い繁(しげ)って、昔、道があったことさえ分からないありさまになっておったと。 時々、道を作ろうという話が出るのだが、そのたびに、 「だども、俺ら方(ほう)が作っても、向こうが作らねえんじゃ、しょうがなかべ」 ということになって、話が消えてしまう。 両方の村人達は不便でしょうがなかったと。 そんなある年、両方の村で、とっても可愛いい女の赤ん坊が生まれたと。 東の村の子は朝方生(あさがたう)まれたのて「あさこ」 と名付けられ、 西の村の子は夕方生まれたので「ゆうこ」 と名付けられたと。 あさことゆうこはすくすく