哲学者の東浩紀氏の新著『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』が、世代を超えて話題を呼んでいる。 学会や文壇の常識には囚われない「知のプラットフォーム」を志し「ゲンロン」を東さんが創業したのが2010年のこと。これまでの葛藤を赤裸々につづった奮闘記は、起業家やビジネスパーソンのみならず、コロナ禍で不安を抱えながらも自分の道を切り拓こうともがく若者にも支持されている。 『ゲンロン戦記』には東さんとゲンロンが、混乱の中を戦い続けた「2010年代」が描かれている。SNSが影響力をもち、個人が自由に情報を発信できるようになったことは「アラブの春」に象徴されるような“革命”にも影響を与えた。その一方、分断やメディアビジネスにまつわる歪な構造をも生んだ負の側面もある。 「インターネットの力を信じられなくなった」と失望を語りつつ、それでもネットや出版を通じて自らが信じる哲学を試行錯誤してきた東さん。201