ある日、突然教授から電話がかかってきた。 「君、前に留学したいって言っていたよね。ボストンの大学に行ってみない?」 「えっはい行きます行きます、よろしくお願いします」 と、電話で即答したあと、青ざめた。 僕は英語ができないし、いまさらアカデミックな生活をやる自信もない。 「行きます行きます」と言ってしまったのは、相手が教授だったのでとりあえず逆らえないというのと、半分は見栄だ。 そういうときに「大変だから、行きたくありません」と答える勇気も、「とりあえず考えさせてもらっていいですか」と保留する慎重さも、僕にはないのだ。 ああ、どうしよう、行くって言っちゃったけど、現実的にそんなの無理だろ、日本語も通じないようなラボで仕事をし、海外で生活するなんて…… と煩悶していると、母親があらわれて、「ほんと、あなたはいつもそうなんだから……ちゃんと自分のことをよく考えてから、なんでも返事しなきゃダメじ