一言で「弁護士」と言っても、専門とする分野は様々だ。現在、医療事故を専門に扱っている石黒麻利子弁護士は、子供の頃に母親が脳動脈瘤破裂で急逝したことをきっかけに脳科学者となったという。その後、弱い立場の人を守りたいと弁護士を志した、医学博士の資格をもつ弁護士だ。 石黒弁護士が司法試験の勉強をしていた頃、義父が医療事故に遭い、家族で介護を続ける中で、医療事故が本人のみならず家族の生活も崩壊させることを身をもって知ったそうだ。医療事故の専門弁護士となったのは、自身の経験を被害者救済に役立てたいとの思いからだったという。その石黒弁護士に、医療事故専門弁護士の仕事や、医療事故の実情について話を聞いた。(ライター・高橋ユキ) ●「相談の9割は医療事故ではない」 ――基本的なところからで恐縮ですが、医療事故と医療過誤はどう違うのでしょうか 「医療事故という大きな枠の中に『過失のないもの』があります。 例