野生動物を飼いならし家畜とすることは、地球上、人が住むあらゆる地域で起こった。しかし中央アジアほど長距離の圧倒的な機動力を持つ遊牧を生んだ地域はない。馬とラクダを中心とした大型動物を家畜化し、時代に合わせて様々な形で利用してきたことが、この地域の社会にどのようなインパクトを与えてきたのか。人類史上稀な民族の相克と交流を生み出してきたその生態的特徴を人類学、生態学、遺伝学、歴史学の手法を駆使して明らかにし、今後の牧畜社会の展望を人類救済の道からも探る。人間と動物の関係を動的に捉えなおす総合的な地域論。 (五十音順で掲載、* 印は編者) 新井 才二(あらい さいじ) →第1章 東京大学大学院人文社会系研究科考古学研究室助教。博士(文学)。専門は動物考古学で西アジア・中央アジア諸国をフィールドとする。 主な著作に、「西アジア・中央アジアにおける牧畜のはじまり」(菊地大樹・丸山真史編『家畜の考古学