近年は何かと「推し」「推し活」という言葉が使われる。かつてはオタク文化として「萌え」という語彙が用いられていたが、なぜ「推し」に変わったのか。文芸評論家の三宅香帆氏が、AKB48、YOASOBIの『アイドル』、「=LOVE(イコールラブ)」の『絶対アイドル辞めないで』などから、令和のアイドル像を読み解く。 ※本稿は、『Voice』(2024年12月号)の著者の連載「考察したい若者たち」より抜粋、編集したものです。 「推し」の時代、「萌え」の時代 令和最大のヒットとは何だろうか。2020年代前半に限って言えば、それはもう、これだ。 「推し」である。 思えば令和という時代とともに「推し」の時代はやってきた。それまでAKB48グループのファンに限られていた「推しメン」という語彙は、いつしか人口に膾炙し、「推し」という言葉にずらされていく。 2020年に、宇佐見りんの小説『推し、燃ゆ』(河出書房新