休憩はおろか帰宅すらできない過剰労働、いわゆるデスマーチ(死の行進)を経験したことはあるだろうか? 私はある。家には帰れず、たまに帰ってもシャワーを浴びるだけで即出社。同僚は過労で次々と倒れ、遂には40歳に差し掛かった先輩が突如「俺には友達がいない」と泣き出した。もちろん上に抗議はする。しかし、管理監督者は「納期を守れ」「さっさと自分の仕事をしろ」と一点張り。さらにもっと酷いことになるのだが、それは後ほど書こう。ともかく、私はデスマーチを経験した。若い頃の苦労は買ってでもしろと言うが、あれは大嘘だ。人生屈指の嫌な思い出である。そんな記憶を、まさかハリウッド映画で思い出すことになるなんて。前置きが長くなったが、『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(2018年)は、そういう映画である。 麻薬戦争の最前線を描いた傑作『ボーダーライン』(2015年)は、FBIのケイト(エミリー・ブラント)が、鬼