「きったん」と「あーけん」がkrewData活用をディープに語る

krewData曼荼羅を見せてもらったら、業務改善や自動化のヒントが凝縮されていた

　kintoneアプリの集計・加工をノーコードで設計できるメシウスのkintoneプラグイン「krewData」。データ処理の設計図にあたるkrewDataフローは、時には「krewData曼荼羅」と呼んでもおかしくないくらい壮大な見た目になるが、実は業務改善や自動化のヒントが凝縮されている。今回はkrewDataのヘビーユーザー二人に、krewData曼荼羅について語ってもらった。

kintoneデータの集計・加工を設計する「krewData曼荼羅」とは？

　業務改善や自動化を推進するサイボウズのkintone。このkintoneに機能追加するプラグインとして幅広く利用されているのが、メシウスの「krewシリーズ」だ。「krewSheet」「krewData」「krewDashboard」の3製品のうち、今回取り上げるのは集計・加工用のkrewDataになる。

　krewDataでは、複数のkintoneアプリにまたがるデータを集計・加工することで、予実管理、在庫管理、請求管理、工数集計、外部システム連携などを実現する。具体的にはノーコードで集計設定が行なえるデータ編集フローで入力アプリを選択し、コマンドを組み合わせてデータを集計・加工し、出力アプリに渡していく。このデータ集計・加工の設計図に当るのが、今回テーマにするkrewDataフローだ。

　ときに複雑になるデータ処理を記述したこのkrewDataフローは、まるで細密画のようなビジュアルになる。「krewData曼荼羅」とも呼べる小宇宙のようなkrewDataフローを私が見たとき、当初は「すごい！」としか思わなかったが、最近は業務改善の叡智とリアルが詰まっていることに気がついた。krewData曼荼羅は、業務を棚卸しした結果の可視化であり、kintoneアプリのデータの見取り図であり、業務改善や自動化のための設計図。フローが巨大なのは理由があり、業務フローを最適化するためのヒントも詰まっているはずだ。

　krewシリーズのアクティブ契約社数は、今年1月の段階ですでに3000社を超えており、kintone関連のイベントや取材でも、このkrewData曼荼羅を見かけることが増えている。だったら、krewDataユーザーにこのkrewData曼荼羅を説明してもらえば、業務改善のノウハウやkrewDataの利活用について、よりディープダイブできるのではないか。そう思ったのが今回の企画だ。

　そんな「御社のkrewData曼荼羅、見せてもらえませんか？」というマニアックな企画に快く賛同していただいたのが、「kintoneエバンジェリスト」としても有名な「きったんさん」こと喜田 晃大さんと、日本最大級のファッションEC「ZOZOTOWN」を運営するZOZOのコーポレートエンジニアである新井 健太さんだ。さっそくお二方のkrewData曼荼羅を見てもらおう。

明細取り込みから消し込みまでをカバーする入金処理のkrewData曼荼羅

　一人目のゲストである喜田さんは八代製薬という製薬会社で10年に渡ってバックオフィスの業務改善に取り組んでおり、その中でkintoneを活用している。kintoneプラグインのkrewDataとkrewSheetは、kintoneとほぼ同時期の2020年に導入。自身が担当する経理業務を省力するためにkrewDataを利用している。

八代製薬 総務部 喜田晃大さん

　喜田さんの担当はそもそも業務自体が複雑で、基幹システムとも連携する必要がある。そのため、本来一連の業務になるネットバンクからの明細の取り込みや入金データの作成をフローとして分割。処理ごとにフローを分けることで、1つの大きなkrewData曼荼羅にならない工夫を行なっている。途中で出力結果を確認しながら別のフローにつなげることで、メンテナンスもしやすくなった。

　最初に見せてくれたkrewData曼荼羅は、販売管理で行なわれている「入金処理フロー」になる。ネットバンクの明細をkrewSheetの一覧からアプリに取り込み、明細の入金情報と取り込み先マスタと突合し、入金の消し込みを行なうという流れだ。

　まずはネットバンクからの明細の取り込みは、そのままの形式だと日付と認識できない文字列になっているので、kintoneで扱えるようにデータ形式を変換している。取引先に関しても、余計なスペースを排除したり、表記の揺れを統一している。最終的に取引先ごとの処理を定義づけた名義マスタと統合し、仕訳を行なうという。

　入金の消し込みに関しては、振り込み、電子記録債権、紙の手形、現金など複数の入金方法に少ない工数で対応できるようkrewDataで各データを生成している。同社は振り込みと電子記録債権が9割を占めているが、振り込みの場合は請求管理アプリと明細を連携し、消し込み処理を実施。紙の手形、現金などの異なる区分の支払い方法も最終的には統合され、入金された場合は販売管理ソフトにインポート、未入金の場合は売掛金として請求処理を行なっている。

製販2つの会社の経理処理を一望できるメリット

　喜田さんのkrewData曼荼羅で特徴的なのは、上下で同じようなフローが並んでいる点。ビジュアルだけを見れば、戦国時代の鶴翼の陣のように見える。これは八代製薬が製造会社と販売会社に分かれていることに由来する。そのため、入金口座は同じでも、製造会社と販売会社は別なので、明細で分けて基本的には同じフローを回して、最終的には結合している。複雑に見えるが、2つの同じような処理をつなぎあわせているだけで、処理全体を一望できるメリットがある。

　製造会社と販売会社で起こる売買の相殺処理も、入金管理、支払い管理、請求管理のアプリと連携して、売掛金と買掛金を消し込むという流れで処理されている。「もともとは別だったのですが、いっぺんに実行できたほうが便利だろうということで、長年かけて統合してきました」（喜田さん）。

　kintoneデータを販売管理ソフトに登録するためのフローも用意されている。kintoneに行として登録されている区分と金額を販売管理ソフト用に列してフィールド化。また、値がゼロだと登録できないフィールドには適切な値で埋める処理を行なう。完成したデータはkrewDataの外部連携機能を使ってCSVファイルとしてクラウドストレージに登録しておけば、販売管理ソフトからは簡単に取り込めるという。