中国でももちろんDeepSeekの話題で大盛り上がり
行政や企業が高速で導入を進めている
1月末に中国発の軽量動作の大規模言語モデル(LLM)「DeepSeek」が話題になり、米国のAI関連株が暴落する、いわゆるDeepSeekショックが起き、日本でもニュース番組などで繰り返し報道された。
それから1ヵ月ちょっとが経過した。“中国スピード”とはよく言うもので、DeepSeek R1ソリューションを企業や組織ほか、深圳などの自治体が続々と採用している。
2月までに、北京や上海、広州の著名な病院を筆頭に、地方のローカル病院まで民間・公立問わず、およそ100ヵ所の病院がDeepSeekを導入したと公式発表またはメディアで報じられている。医療機関による大規模モデルの利用が、診断と治療の効率と質の向上に大きく役立つと考えられているという。
また広東省深圳、江蘇省無錫などの行政府でも導入され、市民からの問い合わせの応答や、政策検討・文書作成などに活用されている。完全完璧なアウトプットではないので公務員を置き換えるわけではないが、それでも作業負担をだいぶ肩代わりしているという。
Githubの利用者による分析では、DeepSeek R1モデルのローカル運用を実現するには、「GeFoce RTX 4090D」搭載システムで7万元(約143万円)程度は必要とのこと。
それでもA100/H100を搭載したシステムの200万元(約4100万円)の20分の1以下の価格で実現できるとしている。
輸出規制で中国版の4090Dが用意されているが
通常の4090も4090Dも大量に流通している
ちなみにここで出てきたGeFoce RTX 4090“D”だが、米国は中国へのGeFoce RTX 4090搭載製品の販売を規制しており、その規制をクリアするために若干性能を抑えた中国向けバージョンだ。
中国の界隈では無印はフル性能なので4090満血版、D付きには4090蒸留版という別名がある。後者も規制が始まったという報道もあるが、中国ではともに簡単に入手が可能なのも現状で、どこまで実効性のある規制がされているか不透明だ。
いやいや、さらに性能のいいGeFoce RTX 5090が発売済みだろう。アキバでは発売時に近隣に迷惑をかけた客がいたと話題になったではないかと思う人もいるだろう。
中国の報道やSNS、ギーク向けの投稿が多いビリビリを見ても、GeFoce RTX 5090関連の投稿は販売情報やベンチマーク検証コンテンツばかりだ。DeepSeek R1を運用するために各所で導入されている様子はまだないようで、まだまだ入手しづらく、コスパを考えればGeFoce RTX 4090ベースで十分ということなのだろう。
いずれにしても数百万円で業務が改善するDXは、これまでに比べ圧倒的に安上がりと報じられている。だとしても、企業はもちろん、自治体でも数百万円相当のシステムを素早く導入するのだから中国スピードは実に速い。報じられている公的機関がこれだけあるのだから、民間でのニーズはそれ以上にあり、投資やリスク管理をする金融機関や研究・教育用途に導入する企業は間違いなく多いだろう。
深圳の電子街では4090の魔改造版や
DeepSeek向け独自ショップブランドPCをサポート付きで販売
そこで深圳の電子街「華強北(ファーチャンベイ)」である。中国への販売が規制されているはずの無印Geforce RTX 4090搭載製品が売られるだけでなく、魔改版Geforce RTX 4090なんてものも登場している。
これはGeforce RTX 4090の搭載メモリを標準の24GBよりも増やしたものや、安定動作を目的としてノイズ度外視で冷却機能や電気周りを強化したもの、ノートPC向けのRTX4090 Mobileをベースにしたものなどがある。ホントかウソか96GBに増やした製品もあるとも。
これらの改造されたビデオカードのほとんどは深圳から出荷されていて、華強北のいくつかの店舗では実際に一括で改造して外部に販売されていることが確認できる。
その元となるGeforce RTX 4090搭載カードは日本でも値上がりしており、以前は20万円台だったものが40万円超えするなどしている。先に秋葉原での騒動が報道されたような、日本で買って中国で売って一儲けしようとする行動が値段高騰の一因ではあろう。
魔改版・満血版・蒸留版を問わず、その価格は馬鹿にならない。パーツの相性もあるし、製品は大量の処理をする必要があり、挿したけど動きませんでした、処理させたら動かなくなりました、残念でしたでは済まない。
PC自作系のハードウェアに精通した人でないとリスキーなわけで、ここでも華強北の人々の出番となる。彼らはDeepSeek R1が安定して動作するGeforce RTX 4090製品を2枚刺したショップブランドPCを将来に渡るテクニカルサポート付きで販売している。
真っ当なところでは、レノボやファーウェイなどのメーカーから、バイドゥやJD(京東)といったクラウド事業を持つ企業、LLM開発企業、通信キャリアなど100社を超える企業が「大模型(LLM)一体機」と呼ばれるサーバー型ハードウェアを発表している。また医療、高等教育、政務、金融といった特定の業界に特化してサービスを提供する企業も大模型一体機をリリースした。
もともとLLMを活用していた企業がDeepSeek入りの安価な大模型一体機に移行しようと購入するケースと、自社のビジネスに対応できるかとりあえず導入してみようと購入いうケースのどちらもよくあるようだ。
この連載の記事
-
第213回
トピックス
日本から一番近いアフリカが中国・広州にあった デジタル中古市場の熱気がすごかった! -
第212回
トピックス
中国でも大人気のいらすとや 人気になった理由と中国流スタンプ文化 -
第211回
トピックス
日本のSNSでブレイクの「格付けミーム」は中国発 中国のコンテンツが日本で二次創作に使われる例が生まれる -
第210回
スマホ
中国で中古スマホ市場が真っ当化 中華スマホが安く買えるようになった -
第209回
トピックス
海外旅行でAIアシスタントを活用したら、見知らぬ場所にも行けて旅が楽しくなった! -
第208回
トピックス
中国のゲーマーが20数年待ち望んだ国産AAAタイトル『黒神話・悟空』の人気で勝手にビジネスを始める中国の人々 -
第207回
スマホ
折りたたみスマホが次々と登場する中国 カワイイニーズ&成金ニーズがキーワードか -
第206回
トピックス
AI時代に入り、中国独自の半導体による脱米国の可能性は少し出てきた!? -
第205回
トピックス
中国のガジェットレビューがメッチャまとも&有用になっていたのにはワケがあった -
第204回
トピックス
必死に隠して学校にスマホ持ち込み!? 中国で人気のスマホ隠蔽グッズは水筒に鏡に弁当箱 - この連載の一覧へ